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有名人の「分身」も実現、さらには人生1000年も可能に?バーチャルヒューマンの描く未来(後編)

以前当メディアでも紹介したバーチャルインフルエンサーは、今や一般に浸透しつつある。先日話題となった、刃物メーカー貝印株式会社の「#剃るに自由を」の広告に起用されているのもバーチャルモデルのMEME、つまり実在しないバーチャルヒューマンだ。

あるいは、実在の人物を象ったバーチャルヒューマンも存在している。今年ローンチされたホリエ・ロイド・タカフミ(以下、ホリエ・ロイド)もその一つの例で、彼はホリエモン、つまり堀江貴文のバーチャルヒューマンである。

上述のホリエ・ロイドや、当メディアでも紹介した男性のバーチャルインフルエンサー、リアム・ニクロを開発、運用しているのが株式会社1SEC(ワンセック)だ。彼らはいかにしてバーチャルヒューマン(注:バーチャルモデル、バーチャルインフルエンサーを含めた総称として本記事ではこの語を中心的に使用する)の開発を実現してきたのか?また、その戦略とビジョンはどのようなものなのか?そして、バーチャルヒューマンとは一体何なのか?今回は1SECのCEO宮地氏とCOO中村氏にお話を伺った。

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左:CEO宮地氏/右:COO中村氏

バーチャルヒューマンのアイデンティティ

――リアム・ニクロのファッションにはどのようなこだわりがあり、ファッションによってどんなことを発信しているのでしょうか?

宮地:ファッションは根本的にはストリートに寄せています。彼のファッションというか、発信していくこと全般に通ずる部分に、マイノリティのことを扱うということがあります。今後もしかするとジェンダーレスのことについても語っていくでしょうし、一方で例えば、大きなメディアが紹介する前にリアムがオーストラリアの火事だとかアマゾンで何が起きてるとかっていうのをポストで投稿しています。

そういう、民主制が具体的に届いてないところってたくさんあるじゃないですか。そういう様々な具体的な問題を代弁者として発信していければいいなとちょっと思ってまして。彼は炎上してもいいんですよ。

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バーチャルモデルが流行ってきているので、ファッションにもつなげていきたいんですけど、それは1つのアプローチの仕方にしかすぎなくて。彼が伝えたい少数派の意見を代弁しているアイデンティティをファッションにつなげる時に、ストリートっぽいなと思ったんですね。なのでストリート系の服を着用しています。

――マイノリティの声もそうですし、芸能人などの発言が炎上してしまって追い詰められるみたいなことがたくさんありますよね。それがちゃんと彼なら言えるという。

宮地:はい、彼なら代弁しやすいかなと。日本で、日本の政治や海外の政治のことなどを発言すると、綺麗事言うなよ、みたいなこと言われたりするムードがあると思うんですが、こういうことに挑戦していきたいというところもあります。

彼は温暖化のことを考えていて、そういうのも綺麗事と言われるんですけど、あえて発信し続けていきたいです。リアムのユーザーは10代が多いので、若い世代の人たちに届けられるような、彼の見た目はフェイクですけどやっていることはちゃんと本物であって、本質的なところを届けていきたいと考えながら運営してますね。

――彼にはインスタでDMを送ることができて、返信は現状1SECのスタッフさんがご対応してるということなんですが、今後フォロワーさんとリアム・ニクロやほかのバーチャルヒューマンの間で築いていきたい関係のようなものはありますか?

宮地:コミュニケーションはAIでできる部分もあるんですけど、そのキャラクターのファッションセンスだったり、キャラクターが日々何を感じて何を思ってどういう生活をしているのかというところを発信していくことが重要だと思います。

今は人がアナログでやりとりを運用していますけども、後々は色々な人とのやりとりをAIでディープラーニングしていけばある程度の幅広いコミュニケーション、そのキャラクターの特性に合わせたコミュニケーションというのが違和感なくできてくるんじゃないかなと思っています。

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――本質的なことを伝える「人型メディア」になれるのが、バーチャルヒューマンの特徴なのかなと思いました。
近年ではAI美空ひばりなども話題になりましたけれども、死んでしまった芸能人を蘇らせるみたいなことも可能であるバーチャルヒューマンには、倫理的な批判も起こりうると思うのですが、いかがでしょうか?

中村:そうですね。倫理面に関しては双方の合意によってその権利をはっきりさせる必要があるかもしれません。ビジネスとして発展性があることは確かだと思うので、そこの可能性は伸ばしていきたいです。パートナーさんの意向を叶えつつ挑戦したいと思いますし、その中でしっかり倫理観も考えてやっていかないといけないのかなと思います。

もちろんテクノロジー的には若い頃の顔を3DCGで再現して、今あるテクノロジーを合わせ、インタラクティブなコミュニケーションをするというのはもちろん可能です。例えば、若い頃を再現するバーチャルヒューマンなどは、もちろん技術的には可能ですし、話題を呼ぶことになるとも思いますね。あるいは、冠婚葬祭などの場面での、身内内のクローズドな状況でというのも可能性があるかもしれません。

宮地:そういう倫理観を含めた議論をしていかなければなりませんが、例えばペットなども可能性として考えることもできるかもしれませんね。

ユーザーのアイデンティティとバーチャルヒューマン

――ユーザーとの関係も重要になってきますよね。

宮地:死者を蘇らせることには倫理的考えていかなきゃならない問題がまだまだありますが、3DCGテクノロジーで作った自分のモデルと、自分の命、話し方から考え方を読み込んだAIがあれば、自分の分身を作って死後もデジタル上で活動して生きていけるというようなプロジェクトはありなのかなと、僕自身はちょっと思ったりしています。

人生100年じゃなく、人生1000年みたいな。その方が、議論としては面白いかもしれないですね。

――今後、一般の人でも自分のバーチャルヒューマンを持つということが可能になるかもしれませんね。そうなった時、自分という存在と3DCGのAIの存在、それらが2つ同時に存在する際に、ユーザー側がどういう心持ちで自分のデジタルな存在と共存していくことができるでしょうか?

中村:期待していることは、本来叶えられなかった夢をバーチャルヒューマンにしてもらうことだったりします。我々が取り組んできた理由としては、叶えられなかったもう一方の夢を叶えるっていうストーリーが軸にあったので、そこは取り組みどころ次第なのかなと思っています。はたまた、自分の分身が自分の代わりに働いてお金を稼いでくれる状況っていうのは、基本的には誰しもポジティブに捉えてくれている印象ですね。なので、姿形はその人とそのまま一緒なものを作ることが前提になると思うのですが。

――パラレルな軸に存在する自分に、自分のアイデンティティを投影するみたいな感じですかね。

中村:そうですね。どう考えてもリアルな体は1つしかないので、もし今ここで働いてなかったら何をしたかったとか、その時々によっても色々考えることもあると思うんです。表立ってはなかなかできないことがあったりとか、それをもう1つのアイデンティティに乗せて、バーチャルならではの発信もできるというのは捉え方としてありなんじゃないかなと思っています。自分自身が実現できなかったことなどをバーチャルヒューマンが叶えてくくれるということもあるかもしれません。

バーチャルヒューマンとファッション

――バーチャルヒューマンとファッションと親和性というものはあると思いますか?あるとしたらどこにあると思いますか?

宮地:バーチャルで自分の分身を作って、それに実際バーチャルクローズを着せるみたいなものはそこまできていますよね。そこも広がっていくでしょうし、3Dでバーチャル上で作ったファッションや、リアルに存在するものを3DCGに変換するファッションも今後もっと発展していくと思います。実際本物に触ったことないけど、CG上でかっこいいと思ってそれを数百万で買っている事例も海外ではあるんですよね。

なので、あらゆる角度でバーチャル×ファッションのような領域は可能性が出てくると思っています。バーチャルヒューマンとファッションの可能性について考えると、バーチャルヒューマンがECモデルに変わっていくんじゃないかということも考えますし、そこの分野も僕らは見据えて事業を考えています。幅広く可能性を感じるなと思ってますね。

――最後に、バーチャルヒューマンがファッションのサステナビリティを実現していく取り組みなど、御社としてのお考えもお聞きしてみたいと思います。

宮地:もちろん考えてます。サステナブルや大きく環境というところでいくと、僕らのテクノロジーで人の移動がバーチャルに置き換わって広がっていくと交通の時間などを短縮できるのかなと思います。ただ、withコロナではまだまだ長い戦いになるのかなと思ったりはしています。

僕らがやりたいのはAIとの結合のプロジェクトなんですが、例えば、オフィスの中に何十、何百人もいるようなコールセンターというような環境を僕らの技術があれば作らなくて済むようになるのかなと思ったりしています。突き詰めると、僕らはよりルーティーンなところはバーチャルに置き換えていきたくて、人はどんどんハッピーなことに趣味とか時間を当てていけばより良くなってくるのかなと思っています。

サステナブルというところに直結していないかもしれないですが、環境に優しく、そしていい世の中にするための僕らができるサポートは何かと考えると、こういった文脈が僕たちのアンサーになるのかなと思います。

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バーチャルヒューマンは一種のメディアであり、もっと言えば人型のメディアであるということが、今回の取材を通して実感したことである。私たちでは発信できないこと、実現できないことを代わりに叶えてくれる存在が彼らなのだ。例えば、冒頭で挙げたバーチャルモデルのMEMEも、自らの体を張って美の多様性を発信してくれた。そして、リアム・ニクロやホリエ・ロイドらも自らのアイデンティティを持って、今後も活動をしていくだろう。

バーチャルヒューマンがファッションの分野でさらなる発信の要を担うようになる未来も、すでに想像に易い。高度な3DCGとAIのテクノロジーが私たちの想像力を豊かにすることによって、ファッションの過剰在庫の問題にもコミットするだろう。人型のメディアとしてのバーチャルヒューマンはファッションと親和性が非常に高いだろうし、その姿形を最大限に利用することでファッションメディアの可能性が拓かれるようにも思う。

バーチャルヒューマンは「私」の希望を様々な形で託すことが出来る「私たち」の「分身」であって、彼らと共生していける未来もすぐそこに見えてきている。今後もその動向をキャッチし、考察を加えていきたい。

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