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Xenomaが示すスマートアパレルの未来、CES 2020で一般消費者向けプロダクトを発表(後編)

東大発スタートアップであるスマートアパレル企業Xenoma(ゼノマ)は、CES 2020でスマートパジャマ「e-skin Sleep & Lounge」を発表、CES 2020イノベーションアワードを受賞しました。前編では歴代のプロダクトをご紹介頂き、研究開発の裏側や、今回の一般消費者向けプロダクト展開の意図をお聞きしました。その続編として、今回もCEOの網盛一郎氏に、アパレル企業やファッションブランドとのコラボレーション、そしてXenomaが描くスマートアパレルの未来について、さらに詳しく伺いました。

ファッションブランドとのコラボレーション

ーー今回のスマートパジャマは、URBAN RESEARCHさんとのコラボレーションモデルが5月に発売予定ですね。具体的に、どういった分担で製品開発されましたか?

URBAN RESEARCHさんに関しては、僕らの株主である繊維専門商社の豊島株式会社さんにご紹介頂きました。

最初は若い女性はお肌に関心がある、お肌といえば睡眠だろう、なので良い睡眠をしたら美容にいいといったことをやりたいという、お題だけを頂きました。どんなプロダクトでも良かったのですが、やはりURBAN RESEARCHさんのショップに置いて違和感がなく、なおかつどちらかというとテクノロジーに関心のない方でも手にとって頂けるかと考えると、やはりパジャマだとなりました。

パジャマのデザインでどこまで睡眠のデータが取れるかは、その段階では未知数でした。ただ、幸いに高齢者向けのパジャマの企画は元々社内にあったので、それを若い方向けに展開し、睡眠にフォーカスしてみようとなりました。そこからはもう、生地を選ぶとか、パターンはこれでいい、デザインはこれでいいなど、通常のアパレル商社さん、もしくは縫製会社さんと全く同じプロセスでやっています。

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ーーe-skin Sleep & Loungeを発表してからは、どの層からのリアクションを一番感じてますか?

e-skin Sleep & Loungeは去年の夏の後半ぐらいから、高齢者向けの見守り用パジャマとして宣伝していました。僕らはURBAN RESEARCHさんのブランディングの部分と自分たちのブランディング部分を分けているのですが、面白いことに、それを発表するとわりとURBAN RESEARCHさんがターゲットにしている、30代から40代の女性が「高齢者と仰っていましたけど、私も欲しくなりました」っと言うんですよね。正直、若い女性が本当に買うのかは不安でしたが、割と反応が良かったと思います。

先日のCESでも、URBAN RESEARCHさんと別に展示をし、同じボードの裏で僕らはアクセシビリティチェックと言う、どちらかと言うと高齢者の生活の質を向上するという文脈で発表しました。世界的には高齢化社会は当然話題ですし、日本の企業が高齢化社会の話をするのも比較的わかりやすかったようで、今までで一番バイヤーさんから声がかかりました。

そういう意味でも、今回は比較的、マーケティングが想定通りにいったという感じはありますね。

ーーe-skin Sleep & Loungeが実際に発売され、みなさんの手に届くのは今年中でしょうか。

そうです。価格はまだ発表されていませんが、URBAN RESEARCHさんからは少なくとも5月に出ることが決まっています。

ーー楽しみにしています!ファッションブランドやアパレル企業からの反応は、始めた頃と比べて変わってきたという感覚はありますか?

そもそもなんですけれども、僕らはファッションブランドさんは、こういうの嫌いだろうなと思ってたんですよ。

実際に欧米行くと、ファッション業界の人達からは、こういったテクノロジーに対しては未だ否定的な声を多く聞きます。ファッションテックデザイナーと名を冠している人とは色々なところで会うし、最近では欧米の方がわざわざXenomaに訪れてくれますが、彼らが言うのは、ハイファッションの人たちには自分たちのやっていることを理解してもらえないと。

でも、それこそ去年であればスーツのAOKIさんとコラボレーションしたし、ANREALAGEさんともやりました。そして今年はURBAN RESEARCHさんから、とうとう量産品が出ます。思いのほか、ファッション業界の人達は限界を感じていらっしゃるんですね。このままやってていいのかと。

服としての機能が変わるわけではなく、価格はどんどん下落し、もうサステナブルな金額にはならないぐらい人件費を買い叩かないと、世界中にみなさんが期待する金額で納入できない状況が既に発生しています。価格をとにかく安くみたいなやり方は続かないとしたら、僕らはどうやって生き残ればいいんだというのは、皆さんが薄々感じているとこだと思うんですよ。

そこにセンシングであったり、IoTであったり、新しいサービスの形態を服をプラットフォームにして導入することが、僕らの出番なのかという風に考えています。騙されてなのか、納得してなのかは結果を見てみないと分かりません。しかし、それを理解された方は、そんなに違和感を持たずに受け入れてもらえますね。

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Xenomaの戦略と展望

ーー最後に、今後のXenomaの展望を聞かせてください。特に、着るデバイスはGoogle× Levi'sなど様々なプロダクトが登場しています。今後、どういった形で届けていきたいと思っていらっしゃいますか?

これも実は僕らが当初から思っていたことなのですが、ただちょっとだけ見せ方を変えています。

なぜ、そもそも全身にセンサーをつけてデータを取るのかというと、僕らは究極の予防医療を狙っています。予防医療って、痩せたら健康になるよといったものが、割と一般的な予防医療じゃないですか。一方で僕らがやりたいのは、何か起きる前にその予兆をデータで拾って予防する予防医療なので、ある意味究極のデータによる予防医療です。

ただし、これに関しても厄介なことがあります。すべての日本の製薬メーカーも困っているのが、医療という言葉は本来患者に対して与えられるサービスなので、病院に行って疾患があると言われない人は、どこの国でも医療サービスを受けられないんですね。なぜなら病人ではないから。ところが僕たちが今やろうとしているものは、その時点では健常だと思っている人に対してなんですよ。多分このビジネスは今のところ、保険ぐらいしかないんですよね。

それにも関わらず、そもそも健康な人は、あなたは脳疾患に、あるいは心筋梗塞になる可能性があるから服を着なさいって、何年後それが来るかも分からないのに、服という最も自分の自由とオリジナリティを謳歌したい表現の場であるものに、そんなことで制約を受け入れるとは考えにくい。

だから僕らは、その人たちの生活に合わせたベネフィットを提供しなければ買ってもらえないと思っています。フィットネスをしたい人が、かっこいいフィットネスの服が着たいから僕達の服を買うとか。パジャマも単純に、最近だと肌触りが良くて疲れが取れるパジャマとかありますよね。そんな感じで、ちょっとテクノロジー的にデータを見て、せっかくだったらそういうものをパジャマにすればいいよねと選んでほしい。

あるいは今だとベビー用であれば、やはり赤ちゃんの健康状態が心配だとか、どれだけ元気か見ておきたいとか、高齢者も同じだと思います。自分が見たいというのもあるかもしれないけれど、どちらかと言うと心配な人に着てもらうみたいなイメージで、ベネフィットを提供しなければならないと思っています。

そうすると服はあらゆるシーンで使われるので、基本的には僕らはそれぞれの用途に応じてどんなものでも作るつもりです。ただ39人しかいないので、全部はできません。なので、短期的にはセールスの95%は現在のプロダクトにフォーカスします。既存のものをブラッシュアップしつつ、5%ぐらいで新しいものに手を出す。

そのような形で色々な、オーダーを受けて、個別の用途に合わせて開発することを経営の指針にしています。要するに、全ての人々の服がe-skinになればいいと思っています。いや、むしろセンサーが入っていない服なんてこの世に存在するの?と思うことが、僕らにとっての普通の世界になればいいと思っています。

ーーそのなかでANREALAGEのようなデザイナーズファッションと組むのと、もっとデイリーウェアなURBAN RESEARCHとやるのは、ファッションのなかのセグメントで分けているだけで、根本の思想は共通しているのですね。

そうですね。服を届けるのはやっぱりファッションブランドの方が良いと思っています。どこの馬の骨ともわからないような僕らの服を着るよりも、自分の知っている馴染みの服の方が、ユーザーさんにとっては嬉しいじゃないですか。

なので別に僕らは、自分たちのセルフブランドをやるつもりは全くないです。雰囲気作りもファッションのうちのひとつなので。ブランドのロゴが入っているかどうかも価値になると思っているし、そういうのも含めて研究するのは僕らではなくて、やはりリテイラーであり、ブランドオーナーだと思っています。

僕らは、テクノロジーブランドとして企画して納入します。けれど、ユーザーさんに本当の意味でのファッションとしての価値を与えるのは、むしろブランドがどんどんやってくださいっていうのが僕らのスタンスですね。



テクノロジーとファッションを掛け合わせ、究極の予防医療を目指すXenoma。これまでのファッション文化の枠組みでの展開を意識しつつも、私たちにとっての服の意味や価値に大きな変化をもたらすかもしれません。


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ZOZO研究所では、ファッションに関する研究を行っております。
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