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グッチも協業、購入もできる着せ替えゲーム「Drest」

前回の記事では、ゲームコンテンツとしての着せ替え機能の進化によって、多くの人がバーチャル空間でのアバターの着せ替えを楽しんでいる現状を紹介した。そして、この潮流にはファッション業界も着目している。Louis VuittonやPRADAなどラグジュアリーブランドがゲームを活用し、世界中の若者層を惹きつけているのだ。

今回は、有名ブランドが数多く参加するバーチャルファッションゲーム「Drest(ドレスト)」を取り上げる。ファッション業界からゲームが注目されている理由、そしてバーチャルファッションの可能性をさらに掘り下げてみよう。

Drestとは

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Image Credit : Drest

Drestは、エディトリアルコンテンツを多く取り入れた高級ファッションECである「NET-A-PORTER」の元編集長で、イギリス版Haper’s Bazaarの編集者でもあったLucy Yeomans (ルーシー・ヨーマンズ)による着せ替えゲームアプリだ。ゲーム内で着用するアイテムは、実物をリアルに表現したブランド製品。現在は公式HPを公開しアプリのダウンロードもできるが、正式なリリースは2020年を予定している。

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Image Credit : Drest

ユーザーはファッション誌のスタイリストとして、アバターのコーディネートやヘアメイクを選ぶ。アバターの見た目や背景を選ぶこともでき、ミッションごとにシーズンテーマやテーマカラーなどの情報も与えられる。

そしてユーザー同士でもスタイリングを評価、高評価を得るとプレゼントを貰うことができるそうだ。また、アプリ内のアイテムは、ファッションECサイトFarfetch(ファーフェッチ)実際に購入することも可能。登場するブランドは、GUCCIPRADAStella McCartney(ステラマッカートニー)を含む約100ブランドにも及ぶ。

Drestによって、ブランド側は顧客の関心を高め、ECでの購買をより楽しいものにできる。また、ユーザーにとっては、コーディネートしたデジタルファッションの写真をSNSで共有して楽めるだろう。

なぜ、ゲームなのか?

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Image Credit : Drest

ファッション業界がゲームに着目する狙いは、若者の関心を惹き、ブランドやアイテムの認知を広めることだ。特にSNSと共に育ったミレニアル世代やZ世代は、シェアしたくなるユニークな体験を重視するため、ゲームは新しい宣伝ツールとして最適なのだろう。

また、近年のゲーム内での着せ替え機能の広まりから、アバターの服に課金する抵抗感は少なくなりつつある。Drest自体は無料で遊べるが、デザイナーアイテムは価値に応じた課金アイテムとして用意されている。バーチャルファッション、アバターへの着せ替えによる自己表現という、新しいファッションの楽しみ方がますます広まっていくだろう。

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Image Credit : Drest

さらにブランド側とっては、新しいデザインをプロトタイプとして公開し、Drestの活用でユーザーに人気な商品の傾向を把握することが可能に。需要と供給の最適化、過剰生産の抑制に活かすこともできるだろう。そしてユーザーにとっては、着せ替えを楽しみ、ゲームとして競い合いながら、トレンドやスタイリングに関する知識を得ることができる。

雑誌からwebメディア、ECからゲームへ?

着せ替えゲームの流行、アバターのファッションアイテムへの課金など、ゲームはデジタルファッションを広め、身近なものにする重要なフィールド。それゆえ、Louis VuittonやPRADAが自作のゲームを公開したり、ゲームとコラボレーションしたアイテムを販売したりと、協業が進んできた。

しかしDrestは、さらに新しい試みといえる。ゲームでありながら、様々なファッションブランドを集めてコンテンツを提供するメディアであり、また購入可能なECでもあるのだ。ゲーム内に閉じるのではなく、リアルなファッション体験と繋がり、そしてリアルな消費にも展開する。

それは、新たな服を買う場所をつくり、デジタルな服もリアルな服も同じ場所で購入できるようにするという刺激的な挑戦。ゲームはバーチャルファッションの利点を最大限に発揮でき、若者世代を惹きつける、新しいファッションの情報源や消費の場となるメディアプラットフォームとなる可能性を秘めているのだ。



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