ヴィトン×eスポーツなど、今ハイブランドがゲームに注目する理由とは?
今、PRADAやLouis Vuittonなどのハイブランドがゲームに注目しているという。
2019年9月、Louis Vuittonがeスポーツ「League of Legends」とパートナー契約を結んだ。
ハイブランドが若年層をターゲットにコレクションを作成することはよくあることだが、ゲームとパートナーを組むことは殆どなかった。どうして今、ハイブランドがゲームに注目するようになったのか。
今回は7つのブランドとその背景にある戦略を探っていく。
BURBERRY
BURBERRY(バーバリー)は2019年10月21日、モノグラムダウンコレクションの発売にあわせ、ブランド初のオンラインゲーム「B Bounce」を発表した。
Image Credit : BURBERRY
鹿をモチーフにしたキャラクターを動かし、障害物を避けながらゴールに到達するまでの時間を競う。11月3日まで期間限定で、得点に応じカスタムメイドのGIFやバーチャルのダウンジャケットを着ている自分の写真を作成してもらえる。その他、全国で1位のスコアを獲得したプレイヤーには実際のダウンジャケットがプレゼントされる。
HERMES
2018年、HERMES(エルメス)は年間テーマ「LET’S PLAY!」にちなみ、モバイルアプリ「H-pitchhh」をリリースした。
Image Credit : YouTube by HERMES
HERMESのデザインにちなみ、蹄鉄を輪投げのように投げ、ポイントを競う。ポイントがたまると他のステージでゲームできたり、HERMESの世界観を仮想体験するコンテンツを遊べたりする仕組みだ。
更にクリスマスには銀座ソニーパークで「HERMES JINGLE GAMES!(エルメス ジングルゲーム)」を期間限定で公開した。
HERMES銀座の壁を利用し、プロジェクションマッピングでゲームが体験できる他、遊び心あるグリーティングコンテンツを用意。ユーザーは、ピクセル文字や絵文字を入力し、SNSやメール等でクリスマスカードを送ることができる。受信者は、ボックスから現れたHERMESの定番バッグ「Kelly(ケリー)」をオレンジ色の雪玉で捕まえるゲームをすることで、受け取ったメッセージを読める様になる。
PRADA
Image Credit : Arena Homme+
2012年、イギリス発メンズ雑誌「Arena Homme+(アレナオムプラス)」が、人気ゲーム「FINAL FANTASY(ファイナルファンタジー)」誕生25周年を記念し、PRADAとのコラボレーション企画を12ページに渡って掲載。PRADAは春夏メンズコレクションのモデルに「FINAL FANTASY XIII-2 」のキャラクターを起用。キャラクターは、プリント柄のシャツやモダンスーツなどの新作アイテムを着用した。
Louis Vuitton
Image Credit : Louis Vuitton
FINAL FANTASYのキャラクターを起用したのはPRADAだけではない。
2016年、Louis Vuittonは春夏広告キャンペーンにおいて、「FINAL FANTASY XIII-2」のキャラクター「ライトニング」をアンバサダーに起用。ライトニングは、ゲームからインスピレーションされたアイテムを着用した。
Image Credit : Louis Vuitton
また、2019年秋冬メンズコレクションのファッションショーを題材としたオンラインゲーム「ENDLESS RUNNER(エンドレスランナー)」を今年の夏に公開。コレクションテーマである1980年代の世界観にインスパイアされたレトロな街並みの中を疾走しハイスコアを目指すゲームだ。
Image Credit : Louis Vuitton
更にLouis Vuittonは、人気オンラインゲーム「League of Legends(リーグ・オブ・レジェンド)」などを提供するアメリカのゲーム会社RIOT GAMES(ライアットゲームズ)と2年間のパートナー契約を締結。
同オンラインゲームの世界大会2019 League of Legends World Championship(リーグ・オブ・レジェンド ワールド・チャンピオンシップ)で優勝者に授与されるトロフィーを収める専用トラベルケース、アバター用の着せ替えアイテムなどを作成し、12月には店舗とECサイトでも発売される。
GUCCI
GUCCIは2018年春夏コレクションに「GUCCY(グッシー)」というラインを登場させた。デザインモチーフは、数々のヒットゲームを開発する「SEGA(セガ)」のロゴだ。80年代のビデオゲーム文化へのオマージュとしてデザインされた。
また、今年7月11日には公式アプリにゲームセクション「Gucci Arcade(グッチ アーケード)」を導入。セクション内に、2種類のゲーム「Gucci Bee(グッチ ビー)」「Gucci Ace(グッチ エイス)」を追加した。ゲームは、1970〜1980年代のビデオゲームから着想された世界観になっている。
MOSCHINO
Image Credit : MOSCHINO
2019年、MOSCHINO(モスキーノ)はライフシミュレーションゲーム「The SIMS(ザ・シムズ)」とコラボレーションしたカプセルコレクションを発表。The SIMSからインスピレーションされた遊び心あるピクセル画デザインが特徴的で、ゲームを象徴するキャラクターやモチーフも用いられた。
The SIMSは髪型、肌のトーン、洋服、家、趣味、キャリアなどのカスタマイズを通して自己表現できるライフシュミレーションゲーム。コレクションは実店舗BOUTIQUE MOSCHINOで4月14日から発売された他、The SIMS内でも、アバターがMOSCHINOとのカプセルコレクションを着ることができる。
COACH
2016年、COACH(コーチ)はアーケードゲーム「パックマン」とコラボレーションしたアイテムを発表。バッグやウォレットなどのアイテムに、パックマンのキャラクターがプリントされたポップなデザインが印象的だ。
また、2017年には「THE ARCADE(ザ・アーケード)」というキャンペーンにおいて、2種類のビデオゲーム「NEW YORK DRIVE(ニューヨークドライブ)」「RAINBOW HOCKEY(レインボーホッケー)」を導入。ゲーム終了後、クーポンが貰える仕組みだ。
若者に好かれたいハイブランドがゲームを利用
今までハイブランドがゲームとパートナーを組むことは殆どなかった。ゲームとハイブランドのイメージが結びつきずらかったからだろう。
しかしハイブランドは、現在高級市場に大きな影響を及ぼす中国の若年層を取り入れるためゲームに注目。
中国の若者にとってゲームは心の安らぎの場、中国は政治的検閲が多く社会不安やストレスがやや高いという。そのため若者は制約のない自己決定ができる場所をゲームに求めた。
また、中国の半分を占めると言われているミレニアル世代は、一人っ子政策の影響で孤独であるという。他の子どもと唯一交流できる場はゲームであり、ゲームを通してコミュニティを構築していた。
これらのことを踏まえ、ハイブランドはゲームに着目することで中国の若者を惹きつけることに成功した。
さらにハイブランドは、高級市場の消費者の中心となりつつあるミレニアル世代やZ世代が、ゲームと共に育ち、ゲームに対して非常にオープンな姿勢を持っていることに着目。そして、世界中の若年層を中心とした人々を魅了していった。
このようにハイブランドは、製品の機能やデザイン性だけではなく、ブランディングを大事にしている。ゲーム企業とコラボレーションしたり模倣したりすることでハイブランドは常に新しいイメージを作り続け、若者を中心とした消費者を惹きつけているのかもしれない。
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