渋谷パルコがオープン、ARやショールーミング店舗などテクノロジーを活用した注目の施策
2016年に一時休業していた「渋谷パルコ」が、今年11月22日(金)にリニューアルオープンする。
新生渋谷パルコのテーマは、「FASHION(ファッション)」「ART&CULTURE(アート&カルチャー)」「ENTERTAINMENT(エンターテインメント)」「FOOD(フード)」「TECHNOLOGY(テクノロジー)」の5つ。ファッションビルとして有名なパルコがどうしてテクノロジーを新しいテーマにあげたのか。そしてどう、このコンセプトを実現していくのか。今回はテクノロジーから見た新生渋谷パルコについて紹介していく。
新生「渋谷パルコ」とは?
リニューアルオープンする渋谷パルコは約192店舗のテナントが出店する予定だ。商業施設は地下1階から9階まで、10階には屋上スペースを設置。ファッションブランドは、GUCCIやMM6 Maison Margiela(エムエム6 メゾン マルジェラ)などラグジュアリー・モード・ストリート・カジュアルなど様々なカテゴリの約100ショップが集結する。
そんな渋谷パルコは以下のようなテクノロジーを活用している。
CUBE
テクノロジーの柱として展開するのは、ECを併設したオムニチャネル型の売場「CUBE」。
約130坪に11もの小型ショップを出店している。
Image Credit : PARCO
それぞれのショップのスペースは従来の売り場の約半分。そのため店舗には戦略商品や限定商品など選びぬかれたものだけを置き、店舗にない商品は店舗内に置いてあるタッチパネル式のデジタルサイネージを使ってECで購入することができる。
デジタルサイネージ内で買い物かごにいれた商品は、QRコードを携帯で読み取ると「PARCO ONLINE STORE」の買い物かごと自動で同期。店を出た後もPARCO ONLINE STOREで商品を買うことができる。
このように店舗はショールーミング店舗として、ECに誘導することで、店舗は在庫や人件費の削減ができる。顧客側も、実店舗では商品の試着、購入はECでより詳細な情報を見ながらと、実店舗とECのいいとこ取りができる。オンラインで服を買う人が増えつつも、試着をしたいユーザーは多いことを考えると、納得の施策だ。
また、パルコに期間限定店舗を設けると、商品が通常より2〜2.5倍注文が伸びるというデータもある。実店舗を持たない人気ブランドも増えていることから、こうしたショールーミング店舗はポップアップストア的にも使えるだろう。実店舗とECをシームレスに繋げるものとしてテクノロジーを使う取り組みは今後も増えていくのではないだろうか。
BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE
1階には、日本初のクラウドファンディングを活用した実験型AIショールーム店舗「BOOSTER STUDIO by CAMPFIRE(ブースタースタジオ バイ キャンプファイヤー)」が出店される。
Image Credit : PARCO
BOOSTER STUDIO by CAMPFIREでは、クラウドファンディングを行う企業CAMPFIRE(キャンプファイヤー)と共同し、あらゆるメーカーの試作段階の商品を置いてもらう。そして顧客が来た時は、了承を得た上で、店内の様子をカメラで撮影。顧客の年代や性別に加え、実際に商品を眺めていた時間や反応などをAIで解析。メーカー側からもらった出品料と引き換えに、出店メーカーにフィードバックする仕組みだ。初年度は150品の出品を見込んでいる。
AIを使って顧客の行動を分析し、マーケティングに活かす例は最近増えてきたが、まだまだ浸透していない。試作の段階から渋谷パルコのような様々な人が集まる場所で商品を紹介し、AIの質の高いフィードバックを得られることはメーカーにとってこの上ないチャンスになるだろう。
パルコは「消費者が楽しむシカケだけでなく、B to Bモデルとしても伸ばしていきたい」と語っている。
AR/VR/MR体験
Image Credit : PARCO
5階ではARやVR体験ができる場を提供。スマートフォンやAR対応のグラスを通して、仮想の3次元のクリエイティブ空間を体験できる。コンテンツ内容は2018年に実施したVRのコンテンツアワード「NEWVIEW AWARD 2018」でパルコ賞を受賞した、VR空間デザイナーDiscount氏によるインスタレーションの作品。
イメージ画像から察するに道案内など実用的な使い方を検討しているのかもしれない。新しい体験を提供できるとしてARやVRを取り入れるファッション企業は増えているが、中々客足が伸びないのが現状。次世代型店舗として位置づけられている渋谷パルコは、仮想現実をどう顧客が望むような形で提供できるか楽しみだ。
スマートレシート
Image Credit : PARCO
更にパルコは東芝テックと共同し、パルコの公式アプリ「POCKET PARCO」利用者向けに電子レシートサービスを提供する。電子レシートサービスでは、ショップで商品が販売された時に記録されるデータ、POSデータを転送し、電子レシートとして発行。顧客はレシートを管理する必要がなくなる他、パルコも複数店舗で購入した商品の明細データを統計処理することで高度な分析が可能になる。
今後パルコはアプリの利用データやお買い物履歴など、様々なデータをAIにより分析、学習。来店前、来店中、来店後など最適なタイミングで顧客の好みにマッチするショップや商品の情報を配信する新たな仕組みをリリース予定だという。
パルコでは上記で述べた以外でも、既存店舗でAmazon Echoを活用した店頭での音声案内、自走ロボットによる店内誘導、ロボットによる棚卸し作業の実施など独自のデジタル戦略を進めている。
苦戦するパルコがテクノロジーに取り組む理由
今年で50周年を迎えるパルコだが、主力のファッションテナントが伸び悩み、2020年2月期の連結決算は、純利益が前期比約25%減の28億円だった。今後は売らない店舗や電子レシートなどのテクノロジーの環境整備を進めると共に、より顧客重視の売り方にシフトして集客力の向上を目指している。
テクノロジーによって顧客の理解を進め、接客の質を向上させる。
「ショッピングセンターが持つ本来の価値の向上にデジタルを活用する」とパルコは日経 xTRENDに語っている。
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