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NOOK STREET MARKET:「あつまれ どうぶつの森」のもたらす共感コミュニティ

世界的パンデミックの影響で、世界規模での外出自粛が継続されている。アパレル業界は、2020秋冬ファッションウィークのランウェイの来場者制限やショールームの開催取りやめを皮切りに、大手百貨店の閉館、モールの閉館などを受け、売り上げが低迷している。ブランドがデジタル戦略に切り替えつつあるなかで、消費者側のファッションそしてそのコミュニティはいかに変容を迎えているのだろうか。

そんななか、ファッションでもにわかに注目されているのが、本年3月20日に発売され記録的な売れ行きを叩き出した「どうぶつの森」シリーズ8作目である「あつまれ どうぶつの森」。今回はこのゲームを主題に、ファッションの場を失った今、いかにファッションが営なまれているのか、プレイヤーのリアリティに迫る。

「あつまれ どうぶつの森」の「マイデザインPRO」機能

「あつまれ どうぶつの森」がリリースされて早1ヶ月。ゲーム内に搭載された「マイデザイン」「マイデザインPRO」*機能を活用したアイテムが日々ニュースフィードを賑わしている。ラグジュアリーのコレクションルック、日々目にするコンビニ、配送会社や出身校の制服、アニメキャラクターやアイドルのコスチュームなど幅広く再現、コードを読み取るだけでデザインの受け渡しを出来る手軽さもまた魅力だろう。

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なかでも、ラグジュアリーブランドのアイテムを中心に再現・配布しているのが、NOOK STREET MARKET(@nookstreetmarket )**である。リリースから数日後に開設され、現在1.5万人のフォロワーを有するアカウントで、連日コレクションルックを再現・公開している。当アカウントは、ニューヨークで活動する友人同士の3人、フォトグラファー兼グラフィックデザイナーのVivian Loh(ヴィヴィアン・ロー)、DJかつデザイナーの Michele Yue(ミシェル・ユン)、モデルの Fernanda Ly(フェルナンダ・リー)によって運営されており、各々の異なったスタイルから再現するデザインの幅が広いのが特徴だ。毎日プレイしていると言う彼女たちはいま何を思っているのだろうか、インタビューを行なった。

金銭的・物理的制約を超える自由なファッション

連日リモートワークさながらの忙しい日常を過ごすヴィヴィアンは、友人からの誘いでプレイし始めたと言い、休息の一環でデザイン・投稿しているという。約30-45分で1つのルックを完成させているそうで、リラックスしながらデザインできる日常が「理想でした」と語っている。

ゲームの魅力に「高価で手の届かない服や、1日の中で様々なヴァリエーションのスタイリングを実現できることの自由さ」を挙げたミシェルは、過去の投稿時に「デザイナーの服を着用できない場合は、私の島で着用しています!」とコメント。COMME des GARÇONSやSimone Rocha、ISSEY MIYAKEなどのブランドのアイテムを再現、ゲーム内の自身の部屋に飾る様子をアップしている。

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ミシェルの部屋、左からISSEY MIYAKE / Simon Rocha / Junya Watanabe / COMME des GARÇONSの再現

さらに、自身の島の中にDJ機材・仮想DJブースを作成しており、「コミュニティから、服から、島に住む他のキャラクターの服まで全てをデザインでき最後には自分が笑顔になるあり用は、私にとってのパラダイスのようです。」と自分の思うがままにデザインできる自由さを挙げている。

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ミシェルのコミュニティ、DJブース

「あつまれ どうぶつの森」という「パラダイス」

環境から全てを自分好みに作り変える自由のある「パラダイス」の所在は、NOOK STREET MARKETのメンバーにとってもゲームを継続する要因のひとつにもなっているという。

「ゲームのコンテンツである、魚を釣る・花を植える・DIYで家具をつくるといった事は一見、字面だけ並べるととても平凡でプリミティブな印象を与えます。しかし、なぜかとてもそれらが無性に楽しく、気づけばプレイ時間は2000時間を超えています」というフェルナンダのコメントは、社会的動向の反動とも考えうるような安定したコミュニティの所在を求めているようにも見受けられる。

それは「世界規模の問題の渦中で、お互いに共感・愛情を持つ共同の努力が求められていると感じている」とコメントや、頻繁に島の住人たちが彼女のデザインした服を着用し、彼女のアバターと写真を撮っている様子からも伺える。

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お揃いのCHANEL風ルックのフェルナンダのアバターと島の住人

ヴァーチャル・コミュニティと新たな交友関係

実際の彼女たちのコミュニティの変化、そのリアリティについて問うと、「外出がままならないなかで、ゲーム上で友人の島を訪問することは、ゲームの内外を問わず、常に会話のきっかけを創ってくれています。(ヴィヴィアン)」といい、物理的な制約を受け止めながらもリアルな友人関係の普遍さを前向きに答えてくれた。

「友人の島を訪問できることは、新たな交友関係を築き上げてくれているように考えています。友人が自分の島をどのように開拓しているのかを見ることで、ゲームの進み具合を時に称え、時に笑い合う機会を創出してくれています。実際に友人と椅子取りゲームをゲーム内で行ったのですが、これまでとは異なった形でコミュニケーションを行い、物理的に会えていないくても各々が家の中でも変わらぬ楽しい時間を過ごせています。(ミシェル)」

また、フォロワーが毎日増えつづけて彼女たちのデザインへの注目度が上がるなか、島への訪問者とのゲーム内での新たな関係性について問うと、「多くの異なるソーシャルサークル(これまで交わることのなかった人々)と共通の関心を持って、釣りをする・花に水をやるといった同じようなことに取り組む体験はとてもエキサイティングです。ゲームを通じて新たな会話を生むことができる、プレースホルダーとしてゲームが機能して居るように感じています。(フェルナンダ)」と、見ず知らずの人々と新たなコミュニティを形成していく過程で、彼女たちの言うところの「共感」や「信用できるコミュニケーション」が実現される心地よさを感じているようだ。

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OFFHOURSのアイテムを再現

NOOK STREET MARKETのリアリティには、「あつまれ どうぶつの森」がもたらしたファッションの自由さ、ゲームを介した新たなコミュニティの出現の重要性を感じさせられる。

ヴァーチャル上でのみ所有できる服。時間的制約から出来なかったデザインするという行為。外出規制が続く時勢的要因と相まって売り上げが好調な「あつまれ どうぶつの森」は、プレイする誰もが手軽にファッション・デザインを楽しむことができ、デザインするという行為の制約を超える。定型のモジュール化されたパターンを自由にデザインするという構造は、マスカスタマイゼーションの実現に向けたヒントとして捉えることもできうるだろう。そして、ゲームを介して生まれる新たな「共感」ヴァーチャル・コミュニティの所在が、ポスト・コロナの世界でいかにファッション文化を象っていくのだろうか。今後も追っていきたい。

*「マイデザインPRO」の機能
ゲーム内の機能である「マイデザインPRO」は、タンクトップ・はんそでTシャツ・パーカー・そでなしワンピース・つばつきキャップなどをはじめとする、トップス6種・ワンピース6種・帽子3種の全15種のあモジュール化された型紙を自由にデザインできる機能である。自分のゲーム内のアバターだけでなく、島の住人に譲渡し着用してもらえ、さらにQRコードを介して、他のプレイヤーが制作したデザインや過去作の「どうぶつの森」で作成したデザインを読み込むことができる。

**今回特集したNOOK STREET MARKETは毎日ダウンロードできるコードがinstagram及びtwitterに記載があるのでぜひダウンロードしてみてほしい。

Text by Hanako Hirata


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