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【特集】高まるEC需要に対応:クリーンでリッチなデータ構造を可能にするGlisten

新型コロナウィルス感染拡大により緊急事態宣言が発令、外出自粛が求められたことを受け、オンラインショップを筆頭に「巣ごもり需要」が急増。高まった非接触志向から衣服や日用品を始めとする消費行動がオンラインに移行した。高まるECの需要を受け、販売効率を上げるために、より効果的に消費者の需要に的確に商品をマッチングさせる検索効果は重要であろう。

例えば、衣服を購入する時、思った通りのアイテムが検索結果に出てこない葛藤を感じたことはないだろうか。特定のアイテム名で探すことが困難な場合、着用用途・場所が決まっていて購入しようとする場合など、ブランドの固定のウェイブサイトに飛んで探すのは少々骨が折れる。ユーザー側におけるこの葛藤は、オンラインストア管理側のアイテムのタグ付けが手動で行われていることに起因する。

そこで、「Glisten(グリステン)」では本来手動かつテキストベースで行われてきたタグ付けを、コンピュータービジョンを用いて写真一枚から自動でタグを生成するAPIを提供している。創業間もないGlistenは既に創業者のうち、Sarah Wooders(サラ・ウッダーズ)氏にインタビューを行った。

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共同創業者のSarah Wooders(写真左)、Alice Deng(写真右)

消費者側の体験に着想

ウッダーズ氏は、彼女自身が元より通販で衣料品を多く購入していたことから、その使いにくさとアイテムの見つけにくさに問題意識を持っていたという。

「一度Vネックシャツを探していて、『Vネック』と打ち込んだところ2点のアイテムがヒットしました。しかしウェブサイトを網羅してみると他に『Vネック』で該当すべきはずのアイテムが20点以上見つかったのです。」

Glistenのサービスの軸は、ウッダーズ氏が米MITで博士課程のリサーチプロジェクトとして開始。当時彼女はコンピューターサイエンスを専攻に、画像の最適化やデータ構造の研究を行っていた。「Pinterestのような画像検索が技術的には主流ですが、欲しいアイテムが明確に『Vネック長袖の青色のトップス』などとわかっている時に、画像ではなく検索エンジンに打ち込むことで商品を探すでしょう」と、ユーザー目線での体験が発端となり、コンピュータービジョンを用いて解決することを構想しだしたという。

リッチな情報を画像から抜き出すAPIシステム

ウッダーズ氏自身がユーザーとして利用するうちにオンラインストアに並ぶ画像や商品情報の構造形式に疑問を持ったそうだ。「商品写真が全ての情報を有しており、画像から『半袖・vネック・シャツ・白』といった情報は見てとることができ、自明でしょう。」と話すGlistenでは、実際に商品情報を商品画像から抽出するシステムを構築している。

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(テキストベースのタグ付けの例)

Glistenが提供するAPIは、商品のタグ付けを手助けする。商品画像1枚から、自動的にかつ詳細に振り分けられたタグ付けを行い、逐一選択する必要をなくしている。例えば(挿入写真参照)、同じアイテムでも本来のタグでは、「Women(女性)、clothing(服)、sleeve(袖がある)、neck(首が見える)、maroon()、red(赤)」と言ったように曖昧かつ条件性が少ない。

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(Glistenの提供するシステム)

一方でGlistenはよりアイテムの詳細を分類してレスポンス。ネックラインや袖の長さの判定、トップスというカテゴリから、サブカテゴリとしてセーターを指定。さらにそのアイテムがフォーマル・カジュアルなど、どういった機会に着用するかを示してくれる。つまり、Glistenの提供するAPIでは、アイテムの型・ディテール・色・カテゴリ・カジュアル/フォーマルと言った多くの分類ジャンルに、詳細かつ自動でタグ付けを実行。利用企業は画像のURLをペーストするだけで、短時間かつ正確なタグのレスポンスを受け、オンラインストアに即反映できるというのだ。

「画像がすでにリッチなデータ量を持ち合わせているのに、手作業で行うと時間がかかってしまいます。私たちのシステムでは、画像が本来有するクリーンでリッチなデータから必要情報を抜き出すことが可能になります。」と語るウッダーズ氏は、技術実装にあたり、まず全ての画像に自動的にタグ付けが行えるよう、大量なモデルをトレーニングした。そして商用化発展を考え、一貫したタグ付けを可能にすべくAPIを販売している。

より良いデータの扱い方を実現するAPI

現在はAPIを提供しているGlistenだが、プロジェクト開始時は自力で検索用ウェブサイトを試作していたという。商品画像が並んだウェブサイト上で検索ボックスに詳細に情報を打ち込むと、該当アイテムが検索結果として現れる。検索構造をサイトの中で網羅し、オンラインストアを運営している小売業者向けに展開する予定だったという。

しかし、システムの商用化を考えるうちに、より有益に使用できる可能性のある対象として、データを構造化し分析することに関心のある企業向けに展開することを決めたという。

「ウェブサイト検索を構築するeコマーステクノロジー企業では、大体データサイエンスチームやエンジニアリングが強く、データの構造化に興味関心があり、さらにその発展を実践しているでしょう。例えばレコメンドを中心に行う企業であれば、様々なソースから何千もの顧客データを保有していれば、分析にあたって、そのデータをいかにラベル付けを行い整合させる方法は必要になってきます。」

同じアイテムが異なる小売業者間で全く違う説明されていても、製品をを自動的に分類できるAPIはデータの構造化を行い、より扱いやすい良いデータとして使用することが可能になる。そして結果として、企業は顧客の購買行動の分析・最適なレコメンデーションを打ち出すことができるのだ。

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「IDや商品名だけで商品が管理されている事実は、その商品の断片的な情報しか得ておらず、商品のデータが活用されていないと言えます。実際、人々がマニュアルで分類を行っていることは、現在の技術進歩を持って代替していくことが重要だと考えています。」

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現在、Glistenでは高まるオンライン需要を受け、最もeコマースの動きが盛んなフード業界や日用品(consumer packaged goods)を主軸とした開発を実践している。「オフラインからオンラインへの動きが盛んな今だからこそ、写真を1枚アップロードするだけで自動でタグ付けが可能な私たちのAPIは、オンラインへの移行を速やかに行う手助けになるでしょう。」と抱負を語った。

アパレルのオンラインストア検索結果を高めるべく開発されたGlistenのAPIは、同様のシステムを応用し、現在日用品にシフトすることで巣ごもり需要に応えることを狙っている。新型コロナウィルスへの不安は未だ大きく、従来の買い物スタイルからの変化が求められるいま、オンラインショップを通じていかに需要と効率的な供給のマッチングが行えるかは鍵となるだろう。GlistenのAPIはエンドユーザーが直に体験できるわけではないが、近いうちにオンラインショップで検索結果が導きやすくなった体感を得ることができるだろう。

text by Hanako Hirata

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