ZOZO「GREENBACK TEE」、デジタル時代のファッションに新たな楽しさを提案
いまだ自粛生活が続く5月22日、ZOZOTOWNに「STAY HOMEの今だからこそ、おうちファッションは、デジタルによって進化する」というコンセプトの新アイテム、「GREENBACK TEE」の特設サイトが公開された。
オンライン会議ツールZoomの「バーチャル背景」機能を応用し、様々なグラフィックをTシャツに投影することができるというものだ。バーチャル空間でグラフィックイメージを身に纏うという斬新なアイデアの裏には、いかなる着想や想いがあったのか。開発の中心人物である、株式会社ZOZOテクノロジーズのクリエイティブディレクター、大久保真登さんに話を伺った。
GREENBACK TEEは「“今”だからこそのファッション」
ーー今回のGREENBACK TEE、開発や着想の経緯を教えてください。
新型コロナウィルスによる自粛生活になってからも、社内ではずっと「(こういう状況下でも)なにかZOZOらしいことやりたいね」と話をしていました。そこで、1人がGREENBACKを使ったTシャツのアイディアを出してくれました。これを見た瞬間、すごく腑に落ちました。自粛の影響で家から出られず、人とも会えず、そういう中でも、ファッションをいうカルチャーはどう楽しんで、どう遊べるかという想像をめぐらせてきたので、これはまさに「“今”ならではのファッション」だと思いました。
ーーやはり、自粛生活でも楽しめるコンテンツの発信は考えていたんですね。
そうですね。コロナ対策での生活や日々ビデオ会議ツールを使うなかで、面白いことないかなとずっと考えていて、そのときにGREENBACK TEEのアイディアが出たので、これは自分も試してみたい!と思い、3分後には緑色のTシャツをカートに入れてました。同時に、これがイーコマースにおけるシズル感だなとも思いました。そのときは正直、企画についてはまだ半信半疑で。でも、シンプルに自分も買いたい、着てみたい、届くまでを心待ちにする商品。これはちゃんとやればすごく面白いはずだと強く思っていました。
単発的なヒットを狙うものではなく、業界へのZOZOの意思
ーー最初に半信半疑だったというのは、どうしてでしょうか?
ちゃんと企画としてやらないとスベりそうだなと思いました。本気でやってもネタだと思われたら寂しいですし。でも、仕組みはアナログなことだけど、ファッションってちょっとしたアイディアで価値を変えられるよねという思いで企画化に進みました。
そこで悩んだのが、商品化するまでのフローと、これは「誰かが違う意味を持たせて先に始める前にやらないといけない」というところです。GREENBACK TEEの可能性をZOZOが示すということには、とても意味があると思い、これはすぐにやらなきゃいけないなと思いました。
ーーあえて聞きますが、“ZOZOが出す意味”というのは?
ZOZOはどんな時も、ファッションを楽しむことをあきらめない。ファッション好きが集まる企業として、「ファッション業界を盛り上げたい」という想いが核にあります。今、アパレル業界は大きな影響を受けていて、それぞれの工夫でなんとかこの苦境を乗り越えようと戦っていますが、それでも決して明るい状況とは言えないと思います。
でも本来は「ファッション」って、こういう状況下に対してもポジティブに向き合う力のあるものだと思うんですよね。「こんな時に何を言ってるんだ」と言われるかもしれませんが、今こそファッションを楽しんで、ファッションのもつパワーを広めていきたいと思いました。
ブランドを身に纏い、共有するという楽しさ
ーー「GREENBACK TEEがファッションだ」という部分、もう少し詳しく教えてください。
コロナ禍の状況下で、なにかZOZOがブランドさんを盛り上げる取り組みはできないかなと思っていました。直接的な支援もそうですが、もっとファッションブランドやファッション業界全体を明るく盛り上げるようなことができないかなと。
そこで考えてたコピーの骨子が「全身グリーンバックカラーのファッションランウェイ」。ブランドさんを盛り上げたいと考えた時に、ブランドのグラフィックを纏う楽しさを盛り上げていきたいと思いました。今のファッションはシンプルでモノトーンなものが主流ですよね。もちろんそれも良いのですが、いわゆるストリート黄金時代のような、ファッショングラフィックによってブランド性を全面に押し出すようなスタイルも、ファッションのひとつの大切な楽しみ方だと思うんです。
そう思った時に、GREENBACK TEEだったらモノトーンよりもド派手なグラフィックを全面に出す方が面白い。普段はシンプルな黒Tシャツを好む人でも、バーチャルな世界ではブランドを自由に身に纏うことを楽しんでくれるかなと思いました。GREENBACK TEEを活用したファッションランウェイだって可能になるかもしれないし、ユーザーさん次第で楽しみ方は無限大です。
ーーなるほど。バーチャルな世界で、ブランドを楽しむファッションのあり方を広めるというのは面白いですね。
GREENBACK TEEはコミュニケーションツールであるZoomのなかで完結するものなので、相手に見せることを前提としています。服を誰かに見せたくなる気持ちって、ファッションの楽しさの本質にあるものではないでしょうか。ブランド性の高い服を纏って、それを誰かにみせる、「This is Fashion」だと思いました。そしてユーザーさんがブランドさんのロゴやグラフィックを楽しんで纏って、積極的に共有して広めていってくれることは、ブランドさんにとっても重要なPRにもなるのではないかなと。
まずはきっかけ作り、1週間でのクイックな企画プロセス
ーーなるほど、今回はZOZOフィルターだけでしたがブランドさんにも声をかけたのでしょうか?
ブランドさんに実際に協力頂くのは、この状況下で難しい部分もあって。今回はいかにクイックにやるかというところがポイントだったので、まずはZOZOが始めて、それに賛同してくれるブランドさんが徐々に参加してくれる構図になればいいかなと。なので今回はZOZOフィルターとフリー素材だけでやりましたが、展望としてはブランドさんと一緒にこの「GREENBACK TEE」を使ってファッションを盛り上げたいという想いがあります。
ーーそれでは、今後は色々なブランドのフィルターが売られていくのでしょうか?
売っていくというよりは、シェアしていくという概念の方が近いかもしれません。
ーー企画はどれくらいの期間だったのでしょうか?
1週間くらいですね。構想が決まってから担当者にすぐ話し、部署も越えて何人もの人が関わりましたね。仕上がったので良いものの、実現するまでは「これは響くのかな」と不安もありました。みんなの共感がないと突き進めないものでした。企画を実行する上では、「共感」というものがとても重要だと思います。
「ファッションらしさ」という思想や、ZOZOとしてやる意味というのがクリアだったからこそ、みんなが動けたんだと思います。
ーーxR界隈で話題になっていたようですが、こんな風に使って欲しいという希望はありますか?
アーティストの方々にも楽しんで欲しいですね。また音楽とは相性が良いかなと思います。観戦観劇の演出などにも使えそうだなと。
ーー自粛生活が明けたあとで、リアルな街でも着て欲しいですか?
もちろん着て欲しいですが、残念ながら今はオンライン会議上でしか効果がないので。ただ、人は人のアイディアを面白くしてくる。これを見た人が自分ならこう思うと、勝手に面白いものが作られていく自然発生が後々起きるかなと思っています。じわりじわり、拡がっていくんじゃないかなと。
ーー今後の拡がりも楽しみですね。ありがとうございました。
タイミングとして、今しか、むしろ今だからできる企画を出せてよかったなと思っています。ありがとうございました。
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どの時代においても、ファッションは時代と共に歩み、進化し、社会をエンパワーメントしてきた。苦境にあっても、毎日を楽しむために必要なのがファッションであり、そこでの想像と工夫が新しい文化をつくる。
今回のコロナ禍は決して喜ばしいものではないが、バーチャルという新しいファッションの表現の場の普及を促した。このバーチャルファッションは、TPOなどリアルの世界の様々な制約を解き放つ一方で、ツールやプラットフォームの制約もあった。
今回のGREENBACK TEEも、昨今のシンプルなリアルクローズとはまた異なる、インパクトのある表現のファッションを楽しむことを可能にするアイテム。そして何よりも、ビデオ会議という急速に日常生活のコミュニケーションインフラになったツールを利用することで、バーチャルファッションを身近なものにしているのが印象的だ。
バーチャルでのコミュニケーションの比率が飛躍的に高まる私たちの生活、コミュニケーションにはファッションが伴う。こういったバーチャル空間における新しいファッションの楽しみ方の提案が増えていくことは、街のなかでのファッションにも何かしらの影響を与えていくかもしれない。
大久保真登
株式会社ZOZOテクノロジーズ サービスデザイン部 部長
クリエイティブディレクター
2007年にZOZO(当時の㈱スタートトゥデイ)に入社後、デザイナーとしてZOZOTOWNのUXUIや広告プロモーションを行う。
2013年には同社が運営するのファッションコーディネートアプリ「WEAR」のクリエイティブディレクターとして事業立ち上げを行い、その後も計測ツールZOZOSUITやZOZOMATなどのUXUI設計やコンセプトなどのディレクションを担当。ZOZOグル―プのブランディングを支える。朝ジム朝ウナ派。
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