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機械学習を応用して産業のシステムを再考 EVA Enginesの提案するモデル探しの最適化とは

EVA Engines(エヴァ・エンジン)は、モデルでありエンジニアでもあるCÉLINE DELAUGÈRE (セリーヌ・ドゥルジェ)氏とエンジニアのDAVID ZERAH(ダビ・ゼハ)氏によって2019年に共同創業されたフランス発のスタートアップ企業である。EVA Enginesの技術は、機械学習を応用した、ブランドが求めるモデルを検索するプラットフォームを提供する「EVA SEARCH(エバ・サーチ)」と、2020年9月にローンチされた「EVA GENERATE(エヴァ・ジェネレート)」の2つがある。

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当社の取り組みはファッション・テックのスタートアップとして現在注目されており、その注目度は、今年度のLVMH Innovation Award(LVMHイノベーションアワード)のファイナリストとして選出、加えて2020年度LVMHのLa Maison des Startups(ラ・メゾン・デ・スタートアップ)のアクセラレーターに選出されているだけではなく、フランストップのエンジニアリングスクールEcole polytechnique(エコール・ポリテクニック)のアクセラレーターも努めていることからも伺えるだろう。今回、EVA Enginesの創業者のうちの1人である、セリーヌ・ドゥルジェ氏にインタビューを行った。

現場での学びを技術提案へ モデル探しの最適化を探る

共同創業者のうちの1人である、セリーヌ・ドゥルジェ氏は、EVA Enginesでエンジニア業を営む傍ら、学生時代から所属している大手モデルエージェンシーIMGでモデル業も行っている人物だ。これまでモデルとして、大手ブランドや雑誌のモデルを務め、中にはコム・デ・ギャルソンのランウェイや、エルメスの広告、日本ではフィガロ・ジャポンのモデルを務めた背景を持ちつつ、学生時代には深層学習を先行した背景から、サービスの構想を考えてきたという。

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hermesのモデルを努めたセリーヌ・ドゥルジェ氏

モデルとして現場に足を踏み入れるうちに、ファッション産業のデジタル化への展開の遅れや、産業における環境負荷といった問題を深刻に受け止めるようになり、デジタル環境と実空間への橋渡しとして、専攻していた機械学習の知見をファッションに応用することを考え始めた事がきっかけとなり、起業に至っている。

EVA Enginesのサービスは、主に対ブランドの顔認識アルゴリズムに基づくモデルの検索を可能にするもので、ブランド側のモデル探しの手間を探す事に役立てられる。通常のモデル探しは、ブランド側が複数のモデルエージェンシーに直接連絡をとり、希望するモデルの要望を伝えたのちに、エージェンシー側が該当するモデルを探すという流れで事が運ぶ。

しかし、「ブランドにとって希望するモデルをピンポイントで見つけることはとても大変で時間のかかる事です。モデルとして現場に携わるうちに、どうにかしてモデル探しがより簡単で最適化された手法はないか、考えてきました。」と語るEVA Enginesの技術はこうだ。ブランドが起用したい雰囲気の顔写真をアップロードし、希望するパラメーターに応じて検索をかけることでどのエージェンシーもしくはモデル個人を起用するか具体的に構想する事ができるようになるというのだ。

顔認識アルゴリズムを用いたモデル検索プラットフォーム「EVA SEARCH」

EVA Engines公式には、サービスのデモの無料トライアルが用意されており、サービスの外観が伺える。標準バージョンのモデル探しの流れは以下のようである。

1. 希望するモデルの雰囲気が伝わる顔写真があればアップロード。
2. モデルを探す先を「Instagram」、「Models.com」、「Agencies」から決定する。
インスタグラムから所属関係なく探す場合は、「Instagram」を選択。プロのモデルのみを探す場合は、「Models.com」を選択、プロでかつエージェンシーに所属している場合は、「Agencies」を選択する。
3. (2.で「Instagram」を選択した場合のみ)フィルタリングを選択。
探しているモデルのインスタグラムのフォロワー数や性別、現在地といった情報を入力。
4. 検索ボタンを押す。

デモの様子

このような簡単な流れを踏むことで、希望するモデルの写真が一覧でき、モデルのエージェンシーのページや、インスタグラムのページのリンクと一緒に、検索結果として表示される。リンクを飛べば、モデルの詳細を閲覧できるため、モデルの性格や趣味嗜好をブランド側が事前に把握することも可能だ。

さらに表示された♡ボタンを押せば、ブランド側はモデルのウィッシュリストを作成することもできる。そして、モデルのウィッシュリストを作成し、リストに基づいてエージェンシーに連絡を取り、指名するモデルのブッキングを頼むことで、ブランド側もエージェンシー側も連絡の回数や手間を軽減できる。

当サービスはブランドに向けてサブスクリプションを通じて提供されており、ブランドは希望するフィルタリング要素を契約の段階で相談することも可能だ。これにより、各ブランドが希望するモデルのパラメーター毎に、顔認証アルゴリズムに属性を追加し、フィルタリング要素がカスタマイズされた状態でサービスを使用することができる。

プロのモデルEVA SEARCH 実装までの道のり

「検索結果に表示されるモデルに多様性を設けられるように心がけています。」というコメントに込められた通り、モデルの検索結果はエージェンシー所属のプロモデルだけでなく、インスタグラム上のオープンアカウントの個人も含まれている、というのが当サービスの魅力だろう。

デフォルトのフィルタリング要素としても含まれている通り、インスタグラムからもモデルを検索することが可能であり、主に希望するモデルの顔の属性、フォロワー数、および、モデルの現在地から一般人モデルを起用する事も可能だ。これを活用すれば、モデルエージェンシーはオンライン上にて新規モデルのスカウティングも可能だ。

これらの検索の裏側を支える機械学習は、顔認証アルゴリズムをより精細にするためにと開発された、独自のデータセットが鍵だという。まず公開されているデータセットで一連のアルゴリズムを学習したのち、パートナー企業と協働のもと独自に開発されたデータセットを用い二段階の学習を行うことで、顔の属性の詳細な分類が可能となっているそうだ。

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EVA SEARCHの検索結果の様子

機械学習を用いて産業廃棄量を削減 新たな取り組み「EVA GENERATE」

「ファッション産業における環境負荷に迅速に取り組まねばいけないと考えています。そのために、機械学習を始めとする技術を用いて、負荷を軽減できうるよう考えてきました。」と語ったドゥルジェ氏率いるEVA Enginesでは、2020年9月に新たな取り組みとしてEVA GENERATEをローンチしている。これは、ブランドでのデザインフローの初期に毎度描かれるテクニカル・ドローイングが、AIによってリアリスティックな写真として生成されるという技術だ。

こちらの技術は目下開発中のため、今回のインタビューでのその詳細について伺うことはできなかったものの、「この技術を用いることで、サンプル・メイキングの必要資材の使用量を削減、さらにはコレクションや雑誌の撮影といったコストの削減も望めるでしょう。」とその今後の展開を示唆するコメントをいただいた。

EVA GENERATEの外観

「ファッション産業は、現在デジタルを始めとするトランスフォーメーションが必要だと言えます。私たちのビジョンや活動は、機械学習を応用して、これ(トランスフォーメーション)を実現することであり、それによりブランドや産業そのものの未来を助けていくことです。」と語ったドゥルジェ氏。

これまで、そして、これからのEVA Enginesでの取り組みは、モデル業を営んできたドゥルジェ氏が現場で得た知見と経験を元に築き上げられ、外部から技術提供を行うことでより産業そのものを活発にそして滑らかに「トランスフォーメーション」させていくだろう。

text by Hanako Hirata

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