トミー・ヒルフィガー、3Dデザインとバーチャルインフルエンサー積極採用で世界最大のファッションテック企業へ
Tommy Hilfiger(トミー・ヒルフィガー)が、全てのデザインプロセスをデジタル化しようとしている。
VRでのファッションショー開催やスマートウォッチ発売など、最新テクノロジーの導入に積極的な姿勢を示していたTommy Hilfiger。今後どのような構想を抱いているのか、過去の取り組みと合わせて紹介していこう。
すべての設計プロセスを3Dデザインへ
Tommy Hilfigerは、アムステルダム本社のすべてのグローバルデザインチームで、3Dデザインを導入すると発表。パターン作成、サンプル作成、ショールーム展示といったすべての製作プロセスを3Dデザインで行うとのこと。
2020年秋シーズンまでにメンズドレスシャツは100%、3Dデザインで作成される。そして2022年春シーズンには、すべてを3Dデザインで制作した初のコレクションを発表する予定だ。
また、コレクションでアイテムを着用するのは、人間のモデルではなく仮想アバター。Tommy Hilfigerは、以前からバーチャルインフルエンサーnoonoouriを起用したPR活動を行っているが、今後は自社でもアバター作成を行う予定だという。
このデジタル化計画の実現のため、デザイン業務のデジタル化に特化したSTITCHという技術インキュベーターも設立。現在はデザイナー、パタンナー、マーチャンダイザーなどに3Dデザインのトレーニングを行なっている。
3Dデザインを推進する理由とは?
Tommy Hilfigerが3Dデザインの導入を進める目的は、時間、費用、資源の無駄の削減だ。従来の生産工程ではパターンは手描き、サンプルを必ず作成するが、不要になると処分されてしまう。また商品をオンライン上で紹介するためには、1アイテムずつの撮影が必要であった。
3Dデザインの活用は、こういったすべての無駄を削減し、商品が市場にでるまでの工程をスピードアップできる。CEOのDaniel Griederは、以下のように語っている。
「テクノロジーはコレクションデザインの基本的なツールになっており、販売までの時間を大幅に短縮し、従来の商品画像と完全に置き換わる可能性がある。(中略)従来にデザイン、提示されてきたデザインとほとんど見分けがつかない。これが未来だ。」
IBMやファッションスクールとの協同
Image Credit : IBM
こうした取り組みに先駆けて、Tommy Hilfigerは2018年にIBMとニューヨーク州ファッション工科大学(FIT)Infor Design and Technology Lab(DTech Lab)とコラボレーションを行なっていた。それが「Reimagine Retail」プロジェクトだ。DTech Labは、ERPソフトウェア企業のInforとファッション工科大学が官民提携し、デザインとテクノロジーでファッション業界の問題を解決するために作られた研究所だ。さらにIBMとの提携によって、FITの学生はファッションのデータを学習したIBMのAIを活用できる。
そして最初の試みが、Tommy Hilfigerが協力した「Reimagine Retail」プロジェクトであった。そしてTommy Hilfigerの約1万5,000の商品画像、約60万のランウェイ画像、約10万のプリントやパターンなどをAIに学習させた。DTech Labのエグゼクティブ・ディレクターMichael Ferraroは、機械学習によって人間では消費も理解できなかったTommy Hilfigerの配色やシルエット、プリントについての見識を得て、学生はトレンドとブランドの「DNA」と結び付けた新しいデザインコンセプトを作成できたと評価している。
さらなる未来図
Image Credit : PVH
今後のTommy Hilfigerでは、以下の3つの活用法を構想している。1つめは、AR技術を使用した店舗でのバーチャル試着。2つめは、オンライン上でのアイテムのカスタマイズ。3つめは、オンライン上でのアバター着せ替え用のデジタル服の販売だ。CEOのDaniel Griederは、AIを搭載したデジタルモデルが次の革命となると述べている。
ブランドの親会社であるPVHは今後さらに、 Calvin KleinやGeoffrey Been(ジェフリー・ビーン)などグループ傘下にないブランドにも、システムのライセンス提供を検討している。
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