顔認証で接客を変える、ファッション企業の活用例と可能性
現在、顔認証はスマートフォンのロック解除や空港の入国審査など、日常的な場面での活用が進んでいる。そして小売店舗でも、顧客が来店すると店内にあるカメラで顔認証を行い、顧客ごとに接客を変える試みが増えている。
今回は顔認証機能を店舗に導入している3つの事例と、顔認証機能がブランドや顧客に与える影響について検討する。
Burberry
Image Credit : Burberry
Burberry(バーバリー)では、オンラインと実店舗の両方のデータを利用し、顧客ごとにリコメンドする商品を変えている。顧客が店内を歩くと、店側がオンライン購入履歴とソーシャルメディアのアクティビティ情報にアクセス。それをもとに、次の購入候補となる商品を提案する。例えば顧客が最近あるコートを購入したとしたら、そのコートの他の購入者から人気があるハンドバックを勧めるという感じだ。アメリカの調査会社SumAllの調査によると、1度店舗で購入したことがある顧客が再購入する確率は27%で、3回目の購入がある場合は4回目の購入確率は54%になるという。このシステムはリピート客を増やし、長期顧客の獲得に繋げられると考えられている。
Walmart
Image Credit : Walmart
Walmart(ウォールマート)は2012年に、顧客のサービスへの不満の有無を確認するために顔認証機能を活用し始めた。レジ横に付けたカメラで顧客の表情を読み取り、不満な顔をしている顧客を検知すると、レジスタッフに状況を改善するように通知する仕組みだ。これはクレーム発生前に顧客の不満に気づき、サービスの問題にタイムリーかつ適切な方法で対応することに役立っている。
Ruti
Image Credit : Ruti
アメリカ発イスラエルファッションブランドRutiは、顔認証技術を使い、高度にパーソナライズされた体験を提供している。来店時に顧客の顔を撮影し、CRM(Customer Relationship Management)システムに画像をアップロード、AIが一瞬でリピート顧客を発見し、基本情報やおすすめ商品などを店員に送信する。またシステムは購買履歴や試着履歴をもとに、継続的に更新される。さらに、このように収集された顧客情報はデータベース化され、次期の在庫数やデザインにフィードバックしているという。実際にRutiの売上の75%は、リピート客だそうだ。
顔認証の活用が解決する課題とは
顔認証機能の導入により、ブランド側は顧客の好みや購買傾向、オンライン上での購買履歴と瞬時に照合し、パーソナライズされた最適な顧客体験を提供できる。また、このような優れた体験の提供はブランドロイヤルティの向上へと繋がり、顧客との長期的な関係性の構築を可能にする。
また、十分な顧客サービスの提供には人件費の負担が大きいが、顔認証機能の活用は適切なタイミングで適切な人材を配置することを支援できる。人件費を抑えて、リッチなサービスを提供できるのだ。
OMO(Online Merges with Offline)の施策として、店舗とECの世界を繋ぐ鍵となりそうな顔認証。背景にある技術は、撮影した写真から目、口、鼻を認証して解析する方法から、IRカメラ、近接センサーを使用して3Dで立体的にスキャンする方法まで様々だ。今後の研究の進展によって、顔認証技術が実店舗の新たな未来を築いていくかもしれない。
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