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採寸からアバター作成までをスマートフォンで完結  「3DLOOK」の提案するデジタル・パスポートとは

年々アパレル産業でも拡大しつつある3Dスキャン技術と機械学習を応用した人の手いらずの正確な採寸技術は、国内でもVIRTUSIZEを始め、最近では下着ブランドWacoalの店頭での採寸技術「smart&try」を始め、より身近な存在として浸透している。なかでも、今回紹介する「3DLOOK(3Dルック)」の技術は、ユーザーが正面・横向きの全身写真2枚をスマートフォンで撮影・アップロードするだけで、正確な採寸やフィットのレコメンデーションを受けられるだけではなく、自分の等身大の3Dアバターデータの作成までを可能にするというのだ。今回、3DLOOKのビジネス・デベロップメント部門のリーダーであるAnastasia Kryloca(アナスタージャ・クリロカ)氏とPR担当のNadya Movchan(ナディア・モフチャン)氏に、サービスを可能とする技術背景及びサービス仕様や、今後の展望について伺った。

スマートフォンユーザーに向けたデジタルパスポートの提案

3DLOOKは、2016年にVadim Rogovskiy(ヴァディム・ロゴスキー)氏、Alex Arapov(アレックス・アラポフ)氏、Ivan Makeev(イヴァン・マキーヴァ)氏、Whiteney Cathcart(ワイトニー・キャスカート)氏らによって設立された米シリコンバレー発の3Dボディスキャンの企業である。モバイル製品の開発に長けたメンバーの存在から、スマートフォンユーザーに向けたデジタル・パスポートを作成するという実装アイデアが生まれ、現在のサービス創設に至っている。

3DLOOKの主なサービス仕様は、ユーザーが全身写真をアップロードすることで全身の採寸が行われ、eコマースを提供する企業が顧客の身体データを閲覧できるというものだ。当サービスを支えているコア技術は、特許を取得しているコンピュータビジョン、ニューラルネットワーク、3D統計モデリングデータの複雑な組み合わせによって構成されており、顧客がスマートフォンで撮影した写真から、ユーザーの体にランドマークが設定され、約30秒の処理が行われると各ユーザーに合わせた3Dモデルデータ生成までのプロセスを作り上げている。このデータから、3DLOOKの提案する「Size and Fit Reoomendation(サイズとフィットのレコメンデーション)」が導き出され、各企業の抱える顧客のサイズデータや体型データといったデータの取得、生産するにあたって最適かつ正確なサイズ予測と決定を促すことができるのだ。

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写真2枚で採寸完了へ 3DLOOKのサービス仕様

実際のエンドユーザーの向けの仕様としては、サインインをした上で、身長を入力、そして各々がスマートフォンを利用して撮影した正面・側面の全身写真2枚をアップロードすることで採寸が完了するという仕組みだ。採寸をできるだけ精細にすべく、タイトフィットな服を着用することが必要とされているが、クリロカ氏によるとボディスーツ等は必要ではなく、「例えば女性であればヨガパンツやレギンス、スキニージーンズなど」で代用できるという。

撮影の手順は至って簡単であり、全身が映る一定の距離を確保しスマートフォンを固定した上で、ボイスコマンドの指示に従い2枚撮影するという仕組みだ。これにより、撮影者が周囲にいない場合でもスムーズにサービスを利用できる。そして、3DLOOKではプライバシーへの懸念から、撮影された写真は採寸完了と共に削除、測定データと作成されたアバターのみが保存される仕組みとしているため、写真の転用の心配もない。

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撮影時の様子

採寸が完了すると、ユーザーは各々の採寸データをもとに、eコマースにて衣服を注文する際に希望するサイズ感やフィット感の目安やレコメンドを得ることができるのは勿論、各種フィットネスアプリとの連携ができるようになる。さらに、採寸データをもとに、各々の3Dアバターが作成されているため、ゲーム上でのパーソナルアバター作成時にも使用できる。

実際に計測し作成されたアバターから、提携しているeコマースのウェブ上にて、バーチャル試着ができ、サイズやフィットの確認も行える。これにより、店舗で試着・購入する時間や機会がない場合は、ウェブ上での試着が行え、店舗にサービス実機が配置されている場合は、設置された「Virtual Try On Mirrors(バーチャル・トライ・オン・ミラーズ)」を通して時短かつ簡単に試着が可能となる。

特定の顧客グループを想定した商品開発を可能に

実際にリテールが、3DLOOKのサービスを導入する際は、ダッシュボードに記載された「In-site code」をコピ&ペーストすることによって希望するページにAPIを挿入することができる。過去の導入事例では、製品全てのページに採寸ボタン「GET MEASURED」を挿入している場合や、ショッピングページのはじめに導入しているケースが見受けられたという。

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提携リテールが閲覧できるダッシュボード

3DLOOKのAPIを利用する場合のインターフェイスの見え方としては、デフォルトで「GET MEASURED」のボタンが追加される特徴がある。さらに、顧客が自身のサイズを閲覧可の場合は「Customer Measurements」を各自へ公開、不可の場合は「”Thank you”」ページへリダイレクトされるといった仕様の調整も行われている。母体となるウェブの仕様は、リテールに任せられているため、コードをカスタマイズしてボタンやリダイレクト先のページの変更も可能である。

リテール向けのダッシュボードでは、上記の手順に則って入力されたユーザーの採寸データと3Dアバターデータがワンセットで保管されているため、スーツを始めとするカスタム・テイラーのように採寸の精細さと専門家の眼が必要となる部門でも、採寸から見えてこない体格情報などをまとめて確認できるという利点があるという。さらに、リテール側が定量的なデータが収集できれば、顧客の詳細なサイズ情報にアクセスが可能となり、様々な顧客の身体データに合わせた商品企画を打ち出すことが可能となるだろう。

3DLOOKは10月にサービスの新たなフィーチャーとして、「body shape analytics(ボディ・シェイプ・アナリティクス)」という新機能を追加している。オフィシャルリリースによるとこの新機能は、各リテールに登録された顧客の体型データを適切に分析を促すというもので、企業は「顧客ベースの測定データと体型データの両方の分析の受け取り」が行える。これにより、企業はターゲットとする顧客グループの特定ができ、それに応じて適切な製品企画や在庫管理、流通の最適化を図ることが可能となるという。

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「body shape analytics(ボディ・シェイプ・アナリティクス)」
のインターフェイス

最後に、今後のビジョンとしてモフチャン氏は、「ボディデータの市場を創出し、その標準となるモバイルボディスキャニングの技術と、3Dモデル生成技術を提供し続け、結果として消費者が各々のデジタルパスポートやアバターデータにアクセスできる仕組みを築きあげることです。」と語ってくれた。拡大するボディスキャニング需要を受け、消費者に向けて簡易化が進む一方で、企業に向けてはより精細なデータを提供し、結果としてサプライチェーン全体における最適化を望む3DLOOKの提案は、現段階で3Dアバターを共通言語としゲームへの親和性も見据えていることから、今後のバーチャル・ドレッシングの展開に向けてもペースメーカーとして大きくリードしていくだろう。

text by Hanako Hirata

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