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【特集】高まるデジタルショールームの需要:卸売注文管理の一元化でバックオフィスを支えるSKMMP

SKMMP(スキンプ)は、B2B向けスマートショールームのプラットフォームを提供する、ダブリン発のスタートアップだ。2019年12月、約1200の企業からFashion Tech MillanのStartup Bootcampに選ばれ、数々の投資家から支援を得てサービスは拡大し続けている。2020年秋冬コレクションでは、新型コロナウイルス 感染症(COVID-19)への懸念から世界中でショールームの開放が困難な現状を受け、急速に需要が増えている。今回CEOを務めるAileen Carneville(アイリーン・カーネヴィル)氏にサービスの概要を伺った。

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長年のラグジュアリーでの経験がもたらす問題意識

カーネヴィル氏は、北アイルランドのアルスター大学で芸術・デザインの学位を修めた後、視覚文化の修士号を取得。そして、アートギャラリーへの就職を望んだものの、当時ヨーロッパのファッションシーンの中心であったロンドンでPRに就く。当時のロンドンは、日本を始め世界各国からセントラル・セイント・マーチンズを目指す学生が多く、業界内はその卒業生が多く集う人種のるつぼであり、刺激を受けたそうだ。PRとして働くうちに、知人の紹介からJohn Rocha(ジョン・ロッシャ)の元でインターンシップを始め、その後12年間彼のスタジオでセールス及びPRを勤めた。

2012年ジョン・ロッシャの元から離れ、「自分でビジネスを始めることを目標としてきた」夢をかなえるべく、自身にあったテクノロジーへの情熱を開花させた。そしてダブリンに戻り、デジタルメディアテクノロジーとコンテンツ作成の学位を取得、スタートアップとして走り出した。

「ジョン・ロッシャの元に居た時に、彼に同伴しパリやロンドンで培った経験が今のサービスを支えています。ファッション産業が、沢山の人の手を介して成立している産業であることをこれまでの経歴を通して実感してきました。だからこそ、生産プロセスに関与する才能溢れた人々の努力をむしろ有効活用する重要性を感じています。」 業界内に多才な人々が集まる事実を長年の経験から体感し、支えたいと語る彼女は、ショールームにおける非効率性を解消すべく、2015年SKMMPを起業した。

SKMMPが実現するデジタルショールーム

SKMMPはB2B向けデジタルショールームを提供している。ショールームのアナログなワークフローの非効率性を、デジタルショールームを実装する事で解決するサービスだ。

顧客のブランドは、卸売のためのデジタル戦略が無く、「アナログな手法で既に完成しているプロセスを、『ペンを置いて全てデジタルにしましょう』という決断はなかなか実現が難しいものです。」と導入への敷居の高さを感じていたという。しかし昨シーズンのように、COVID-19の影響で主にアジアからのバイイングが減少した現実は、急速なデジタル化を業界に要し、産業の打撃とは裏腹にSKMMPの需要が300%超えと急激に拡大することとなった。

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左から:音声AIの導入されたトーテム / デジタルショールームPC版インターフェース / app版インターフェース(iPhone / iPad)

卸売効率化に向けたインターフェース構築

「ランウェイ終了後のショールームは、バイヤー向けの主にコミュニケーションの場として成立している」とカーネヴィル氏は語る。最初の30〜40分は主にコミュニケーションに用いられ、バイイング完了までにバイヤー毎に約2時間を要する。さらに営業時間終了後、スタッフは毎日オーダーシートをまとめ上げるために、約2時間残業している。

そこでSKMMPが提供するデジタルソリューションの強みは、物理的なショールームと連携して機能するよう、バイヤーがリモートでも注文を完了できるプラットフォームを構築している点にある。デジタルショールームは、コレクションのデジタルカタログとして機能し、ルックブック・ランウェイの写真・ラインシート・価格表・製造場所に関する情報が網羅できる。

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実際にプラットフォームを導入したブランドでは、オーダーまでの所要時間が70%削減され、約20分でオーダー完了に至るという。「コミュニケーションの場」であるショールームの役割を兼ね揃えるべく、ブランドスタッフとバイヤーが会話をできるようチャット機能も設けられている。

「卸売注文管理における非効率的なプロセスを、バイヤーにもブランドスタッフにも効率的に構築できているのは、卸売をただデジタルで一元化するのではなく、それを可能にするチームの強さがあります。チームには、私のように業界の中から、バイヤーのニーズやブランドスタッフの大変さを熟知しているメンバーがいます。そしてそれらの問題意識を、技術実装を持って実現することのできる技術者がいることが、私たちの強みとも言えるでしょう。」

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スマートショールーム実現に向けて

同社は現在、デジタルショールームに音声AIの機能を加えたスマートショールームの開発を進めている。
「ランウェイ終了後は、誰もアイテム名などを気にせず全て番号で商品を語ります。型番から、ファブリック・カラー・注文数と言った注文内容は、すでに形式化されて管理されているため、音声AIとも相性がよいと言えます。音声AIを用いて、注文全体を音声コマンドとして簡単に入力するサービスを展開するべく目下開発中です。」

現在試験運用中のβ版は、トーテムポールの様な大判スクリーンを実際のショールームに配置する形式をとる。カーネヴィル氏は、「実際に運用するまでに、多様な機能を追加したい気持ちは山々ですが、サービス導入に向けてブランドもバイヤーもすぐに使いこなすことのできる安心感がサービスに求められていると考えています。」と今後の発展可能性を示唆しており、物理的なショールームとデジタルショールーム双方のニーズに答える形で柔軟に対応できる形式をブランド毎に提案していくという。

ファッションテックの可能性

「テクノロジーとファッションは全く異なるセクターとして捉えられています。しかし、業界が抱えているが、明示されない問題について、業界の中から指摘、現行のワークフローの問題をデジタルソリューションを持って具体的に示すことがファッションテックに置いて重要な役割だと言えます。」と語ったカーネヴィル氏は、本年6月から始まるメンズコレクションに向け、すでに次の手を打つ準備をしているという。

COVID-19の影響により、2020年秋冬コレクションではランウェイ、ショールーム、ルック撮影の中止だけでなく、40%のオーダーがキャンセルされブランドは大打撃を負った。シーズン毎に状況が変化する産業の動向に添うように、SKMMPでは次に、リモートでもよりコンテンツを豊富にするべくFabricantの様なデジタルファッション企業と連携したサービス展開も視野に入れて動き始めている。


長年の経験から得た問題意識を元にに的確な解決策を提案する事で、包括的に転回するコストを抑え、効率の良いフローを実現するSKMMP。デジタル化が遅いと評される産業構造を、必要性を持ってテクノロジーが代替していくことは、ファッションテックを押し進める上で重要なヒントとも言えるだろう。


Text by Hanako Hirata

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