アリババ、データを元に作った服をファッションウィークで発表
ファッションウィークで発表された服は、AIによってトレンド予測したデータを元に生み出された。
アリババグループのECサイトTmallは、2019年9月にニューヨーク、ミラノ、パリのファッションウィークで、新人中国デザイナーのコレクションを発表する「Tmall China Cool」というイベントを行った。イベントの目的は優れた中国デザイナーを世界に発信すること。既にニューヨークやミラノファッションウィークなどでコレクションを発表しているSHUSHU/TONG(シュシュ/トング)、YIRANTIAN(イランティエン)、PEACEBIRD(ピースバード)、eifini(エイフィニ)などがコレクションを発表した。
アリババはコレクションを発表するデザイナーに今後3〜6ヶ月にわたる中国消費者のトレンドをAIで予測した「トレンド予測」を提供したという。そしてそれを元にデザイナーはコレクションを作成した。
Image Credit : YouTube from Alibaba Group
売上をあげるアリババのトレンド予測とは?
今回アリババが提供したトレンド予測とは、3〜6ヶ月先の中国消費者の好みをAIを使用し予測したもの。2019年の春に行われた上海ファッションウィークで、アリババがトレンド予測プロジェクトを行うことを発表。ファッション業界にトレンドを紹介したり、それを元に商品を作ることを支援しようという考えだ。
今回のプロジェクトでは、アリババは、自社のプラットフォームやTmallから収集したデータと業界レポート、SNSのデータなどをAIに学習させ、2020年春夏に中国の消費者が共感すると思われる20のファッショントレンドを特定した。
例えば、フェミニンな色や形への回帰、機能性が高いハイテクウェア、ゆったりとしたクロップドトップス(短い丈のシャツ)などがトレンドしてあげられた。
今まで中国ではスポーツウェアやトレーニングウェアにモードなアイテムを組み合わせたストリートスタイルが大流行していたが、今は機能性が高いハイテクウェアへの転換が始まっているという。また中国の伝統にも強い関心が寄せられており、中国固有のものをデザインに取り込むことが斬新でモダンだと考えられているそうだ。
eifiniはトレンド予測をもとに色やシルエットを選択したと語っている。今回のトレンド予測は、多くのデザイナーに活用された様だ。
トレンド予測をファッションアイテムのデザインに取り入れるのは、中国の大手スポーツメーカーLI-NING(リーニン)の成功を後追いしたものであるという。LI-NINGは2018年アリババのプラットフォームを活用し、ストリートウェアと中国の要素をミックスすることでブランドイメージを革新。その結果、売上は前年比18%上昇し、過去最大の売上高を得た。
アリババの北アメリカの担当者は以下のようにNikkei Asian Review.に語っている。
「We used big data to help these designers hone in on a few trends and have their collections built around these trends.Based on what our consumers are wanting to buy, are looking for, are searching, we can help these designers create collections that appeal to a very big group.
(ビッグデータを活用し、デザイナー達がいくつかのトレンドに注目して、コレクションを作成できるようにしました。消費者が購入したいもの、求めているものに基づいて、デザイナー達が多くの人たちに魅力的に思ってもらえるようなコレクションをつくるのを支援します。)」
ライブ配信で中国デザイナーを支援
更にアリババはYIRANTIANやSHUSHU/TONGが国内外で人気を獲得するために、Tmall内でランウェイをライブ配信。その際、「See Now Buy Now」形式をとり、ランウェイで発表された商品がTmall内ですぐに買えるようにした。
またイベント専用のランディングページで、ファッションウィークで発表された新製品とコンテンツを紹介し、テクノロジー企業が国のファッションデザイナーの成長を、デザイン作成から販売まで支援することとなった。
アクティブユーザー6億人超えのデータ
この様に、中国ファッションをテクノロジーを活用して世界に発信しようと奮闘しているアリババ、その強みは技術力、そしてデータの多さだろう。
技術に関しては、言語だけではなく、ファッションにおいて重要な画像解析で高い技術力を保有している。データの多さに関しても、2019年6月の決算書によると、年間アクティブユーザー数は、約6億7400万人を突破。それだけの人々のショッピングデータが取れることになる。
またMcKinseyの調査によると、2019年高級品の市場規模が大きい国はアメリカから中国に変わった。このことから、中国人のトレンドが高級ブランドのコレクションにどれだけ重要かが実感できるだろう。
買い手としても売り手としてもファッション業界への影響力を拡大してきた中国。その裏には、データ、技術力をもったテクノロジー企業の存在があるのかもしれない。
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