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ファッション業界はDX化に対応できるのか?バーチャルアパレルの可能性とは?

近頃、各分野でのDX(デジタルトランスフォーメーション)化が肌で感じられるようになった。それは、皮肉なことに新型コロナウイルスの流行によって急激に進んでいるのかもしれないが、そもそもDX推進は近年の各ビジネス領域での課題であった。

経済産業省が公開している「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン(DX 推進ガイドライン)Ver.1.0(平成30年12月)」によると、「デジタル技術を活用してビジネスをどのように変革するかについての経営戦略や経営者による強いコミットメント、それを実行する上でのマインドセットの変革を含めた企業組織内の仕組みや体制の構築等が不可欠」とされている。

ファッション業界も例外ではなく、新しい生活様式を求められる状況下、DXを推進することによってビジネスを変革することが必要とされている。

今年10月、MARK STYLER株式会社が展開するファッションブランド、jouetie(ジュエティ)は、CG技術を活用したバーチャルアパレルを展開する株式会社GOOD VIBES ONLYと協業を開始した。CGの特性を生かした非現実的なビジュアルを制作するなど、新たな取り組みが消費者を楽しませてくれている。

ジュエティ2

ファッション業界はこのままDX化の波を乗りこなせるのか?まだまだ実感を伴ってこの潮流を飲み込めていない人もいるかもしれない。そこで、今回は前述したjouetieのバーチャルアパレル化を協業で実現した株式会社GOOD VIBES ONLYの代表取締役社長、野田貴司さんにお話を伺い、バーチャルアパレルの現在と未来について考えてみた。

バーチャルアパレルの第一線を走る、株式会社GOOD VIBES ONLY

サービスの背景には、野田さんの前職でのD2Cアパレルブランド立ち上げからその成長までを見届けてきた経験がある。元アパレルショップ店員を起用し、当時はまだInstagramなどのSNSがメインストリームではなかったなか、模索しながらの挑戦をしていたという。

「売上規模としてはゼロから数十億規模までにブランドは成長したのですが、売上が大きくなればなるほど、ブランドのバリュエーション(価値)が下がるという事態が発生しました。ブランドの売上を生むために在庫がどんどん積み上がっていき、在庫リスクがどんどん増えていったのです。ある意味本末転倒というか、なにか仕組みを根底から変えないといけないと強く思い今の会社を始めました。」

その後、野田さんは2018年に株式会社GOOD VIBES ONLYを設立、自社ブランドでDX化に向けたテストを繰り返し、2020年から試験導入を開始したそう。会社としてはシステム開発に向けた研究開発を行っており、8割がマーケティング出身と新卒1年目の若いメンバーで構成されたD2C事業部と、CG業界出身のクリエイターやAI領域で活躍していたエンジニアがいるDX事業部という体制で事業を行っているという。アパレル出身のメンバーはほとんどいないそうだ。

しかし、そんな体制で多様な領域を包括し事業を自社で一貫して行っていることが、強みになっているようだ。

「今回の(jouetieとの)協業含め、自社で一貫して行っております。3Dサービスによる生産課題の解決など、最近フォーカスされてきており、導入事例も増えております。その中で弊社ではこの技術を生産課題の解決以外に、マーケティングや、プロモーション、クリエイティブの領域でも応用を行い、且つイベントや施策、企画提案なども同時に行いますので、導入ブランド様のクリエイティブの幅を広げブランド様が他社ブランド様と差別化できる提案をできることが、我々が差別化できている強みだと考えてます。」

ジュエティ4人への合成

過去の写真素材からバーチャルアイテムを合成できる。
(ブランド:jouetie、モデル:AMIAYA)

jouetieとの協業も、企画、生産、PRまでの全体設計からディレクションを行う役割を担っている。今後の展開についても、企画から3Dサンプル、AI受注予測、生産まですべてをデジタル上で確認できるプラットフォームの開発に向けて動いているそうだ。

バーチャルアパレルに対する反応

しかしながら、導入前には受け入れてもらえるのかを懸念してもいたそう。アパレル業界の人は実物を見ての判断が大きいと思っていたからだ。だが、実際は数多くのブランド、OEM、ODM業界、3Dスキャン等の会社から多数の問い合わせがきているそう。

「今回のようにリリースとして出させて頂いていないブランド様からも型数を広げたい、社内の他ブランドでも導入したいなど、評判としては比較的良い感触だと感じております。」

消費者からの反応も上々だ。「自社ブランドでもバーチャルアパレルは売上の基盤となりつつあり、売上構成比も上位を占めております。導入事例を増やしていくことで全く違和感なく受け入れられていくと思います。」

自社ブランドEC画像1

自社ブランドも展開している

さらに、導入する会社としてもメリットは大きいようで、例えば月次売上予算進捗を下回り、急な企画差し込み対応にも、数日でSNS訴求から販売まで行う事が可能になる。今までは数週間、数ヶ月かかってしまうところを、大幅に短縮できることが今後多くの会社やブランドにとって有益なものになるだろう。

自社人への合成

こちらも人へのバーチャルアイテムの合成

ファッションのDX化とサステナビリティ

このように、バーチャルアパレルを取り入れることは、会社やブランドにとって大きな利益になっている。今後のバーチャルアパレルの成長可能性を鑑みると、現時点で導入に踏み切る決断をしてもいいのかもしれない。

また、DX化に伴い廃棄品が減らせる可能性が高いことから考えると、その導入は環境問題への対応になることも予想される。野田さんはサステナビリティについて以下のように語ってくれた。

「アパレル業界は常に最新のトレンドを追いかけ、それを世の中にアウトプットしていきます。つまり、トレンドに敏感だからこそ、環境問題(トレンド)、アパレル業界全体の課題に目を向けないことはそもそもおかしいと考えており、当たり前に取り組むべき事です。そして大量破棄を続けるブランドの存在価値は皆無だと考えております。難しいことは考えず、アパレル業界全体が今できることに取り組むべきだと考えます。」

世界で2番目の環境汚染産業であるファッション業界にとって、この問題は深刻に捉えなくてはならないものだ。バーチャルアパレルはその点、環境問題への応答として、非常に有効な手段の一つであると思われる。環境問題がトレンドになっているという現代は、それがDX推進の説得材料のひとつにもなるりうるし、消費者が商品を選ぶひとつの指針にもなりうる。未来の世代に自信を持ってバトンを渡すためにも、今現在生きているわたしたちが道標を作るべきではないだろうか。

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