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世界初!3Dプリントxファッションxコミュニティを掛け合わせた新サービスに注目(前編)

2019年10月、世界初の3Dプリントファッション・オンラインプラットフォームSeptem(セプテム)(以下「Septem」)がスタートし、ファッションテック業界で注目を浴びている。同サービスについて、運営会社のFRev Co.,Ltd.代表取締役社長の井出亜貴子氏に話を伺った。

【プロフィール】
井出亜貴子
東京大学卒業。ライターやファッションモデル、フリーの翻訳者などを経て、2019年2月FRev Co.,Ltd.を設立。

ーさっそくですが、「Septem」を作ったきっかけを教えてください。

弊社を立ち上げる前にブロックチェーン関連の翻訳の仕事をしていたこともあり、「ブロックチェーンで何か事業を」と考えたのですが、自身の中で落としどころが見つからなくて、一度ゼロベースで「自分が何が好きだったか」を考えました。

そこで、小さい頃からオタクだったファッションを思いついたのですが、デザインがしたい等というわけではなく…。

そんな時に大学時代の友人が3Dプリンターを買ったという話を聞いたんです。その時に、2000年代くらいの構築的な激しいシルエットのものを、3Dプリンターで作れるんじゃないかなと思ったのがきっかけです。

ダイエット不要。ファッションからサイズを解き放つ!

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ー3Dプリンター×ファッションの可能性を感じたわけですね?

はい、「3Dプリント ファッション」とかで検索してみるといろいろ出てきて面白いなぁと感じましたし、斬新なデザインのものもあったので、これをどうにかしようと思ったのが着想です。

また、調べていくうちに造形美やカスタマイズ性など、いろいろな利点があることに気づいて、特に私の中ではカスタマイズ性が刺さりました。サイズはもちろん、色や素材など、自分に必ずフィットしたものがあるのは非常にいいなと思ったんです。サイズのせいでファッションをあきらめている人ってかなり多いと思いますし、私も大学時代にファッションに合わせてダイエットをして、身体もメンタルも壊れてしまったことがありました。なので痩せすぎとか、ある一定の美の基準にはめるようなファッションはやりたくないなという想いもあったんです。

それから、3Dプリンターを使用してもやはり少しの廃棄は出ますが、一般的な生産よりは廃棄が少ないですし、現実的にまだ難しい問題ですが、リサイクルすればさらに廃棄も少なくなるのではと考えています。たとえば「Septem」でアクセサリーを購入したがもう使わないという場合でも、それを何かしらにコンバージョンできるような可能性があるなと思います。

ーここで簡単に「Septem」の仕組みを教えていただけますか?

「Septem」は、世界の3Dプリンターデザイナーとファッション通を結ぶ、CtoCオンラインプラットフォームになります。3Dプリント可能なデザインデータを持つデザイナーなら誰でも登録でき、購入者は気に入ったデザインから色や素材、サイズをセレクトし、オンデマンドで商品をオーダーできます。オーダー成立後は、デザインデータを日本国内の3Dプリンターに送付し、日本国内で商品を3Dプリント、そしてそれを購入者が受け取る、というシステムです。

世界で活躍する著名デザイナーが登録

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Image Credit : FRev Co.,Ltd.

ー「Septem」に登録されているデザイナーには、どんな方がいらっしゃるんでしょうか?

今は5人のデザイナーが登録しています。スウェーデンを拠点に活動する建築家・Stefania Dinea、オーストラリアを拠点に活動するインダストリアルデザイナー・Marta Cherednik(写真上はMarta Cherednikの作品)のほか、レッド・ドット・デザイン賞の受賞歴もあるスポーツxファッションxテクノロジーをコンセプトに活動するEdward Harberなど世界で活躍するデザイナーがラインナップしています。ユニセックスなデザインも取り揃え、おしゃれに敏感な人々へ新しい世界観を魅せています。

アジアの方はまだ少ないんですが、今後は登録デザイナーを増やしていく予定です。

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Image Credit : FRev Co.,Ltd.

スウェーデンの建築家Stefania Dineaが手がけるブランド「Dinea Design」。ポップカルチャーや建築、幾何学的なファッションからのインスピレーションを大切にしている。Luna Head Band (写真上)は日本のアニメ「セーラームーン」からインスパイアされたデザインだという。

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Image Credit : FRev Co.,Ltd.

ミラノを拠点に活動するプロダクトデザイナーAlberto Ghirardello(写真左)。興奮や驚き、皮肉や共感などを染み込ませ、ほんの一瞬でも感動を与えるデザインが特徴的で、かたち、機能、感情の3つを柱にデザインされたプロダクト。VIRUS Ring (写真右)は「ウィルスが繁殖する様子」を表現したユニークなデザイン。

「世界中に3Dプリンターを設置したい」

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ー完全に受注生産で配送するということですね。送り先は国内のみなのでしょうか。

はい、完全受注生産で現状は国内のみの配送ですが、今年の春からは国際配送をはじめます。

ー当初の構想だった「世界中どこでもプリントできる」というのは技術的に難しいのでしょうか。

越境ECをやるとなると、どうしても関税や送料がかかってきます。データを配送先の国に送ってプリントすれば、関税や送料が安く済みます。手軽に手早く手に入ることも魅力のひとつだったんですが、3Dプリンター自体が小さな国にないことが多いんですね。

「Septem」のサイトに韓国の方からのアクセスが多かったので、先日韓国に3Dプリンターとファッションの視察に行ったんですが、韓国ではプリンターサービスはまだ前衛的というか、ちょっと偏った意見かもしれないですが、一般的ではないようです。

韓国は最新のものに対するキャッチは早いので、何年も前から3Dプリンターサービスが出来ては無くなりを繰り返しているようで、安定供給できない可能性があると。また、国によって使える素材の種類が少ないことなども課題だと考えています。

そういった課題もふまえて、一回クッション的に今春から国際配送をやります。段階的に可能そうな国にはプリンターを設置していく予定で、最終的には「弊社の3Dプリンターなら何でもできますよ」という風にできたらいいなと思います。


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ZOZO研究所では、ファッションに関する研究を行っております。
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