見出し画像

ZOZOMAT「6万回・5000時間以上かけて開発」された、その秘話を公開!(前編)

「誰もがネットで靴を買える時代に」との想いから開発されたZOZOMAT。ZOZOMATを使いミリ単位であなたの足を3D計測し、あなたにおすすめのサイズを提案する。その開発の裏には、さまざまな苦労や工夫が隠されています。今回は、株式会社ZOZO想像戦略室の計測プロジェクト・家田敢に開発秘話を聞きました。

家田敢 / 株式会社ZOZO 想像戦略室 計測プロジェクト
前職では某スポーツブランドにて競技用シューズのデザインを担当。2019年にZOZOに入社。入社後すぐ、ZOZOMATのプロジェクトに加わり、現在はプロジェクト自体を牽引しながら、計量部門にてサービス改善や、データ収集する毎日を過ごす。

ZOZOSUITの開発段階からZOZOMATの構想もあった

――ZOZOMATの開発がスタートした時期はいつだったのでしょうか?

ZOZOMATの開発はZOZOSUIT(※2017年11月に発表。現在は配布終了)と並行していたので、開発期間は2~3年ほどになります。当初はシューズのPB(プライベートブランド)を立ち上げる計画もあり、足の計測も同時に行っていました。

――ZOZOMATの配送スタートが2020年2月なので、約3年かかっていますが……。

私がZOZOに入社し、このプロジェクトに参加した時期には、現在のZOZOMATとは異なる柄のマット型のプロトタイプはすでに完成していました。話によるとマット型の前にはZOZOSUITと同じように着用するソックス型もあったとか……。

――ZOZOMATはどういったチーム編成で開発されていったのでしょうか?その中で家田さんの役割は?

前職ではシューズのデザインを手掛けていたので、人よりも少し靴に詳しいことが評価されて、ZOZO入社後、すぐにこのプロジェクトに参画することになりました。本プロジェクトのトップである取締役兼COO伊藤(正裕)のもと、少人数でスタートし、最終的に全社的なプロジェクトとなっていきました。自分は市場調査、計測方法の決定、基礎的なデータ収集から始まり、現在は、アルゴリズムやシステムを構築するチームや、ブランド営業チームなどの優秀なメンバーと連携しながら、サービス設計や学習データ収集などをしています。

画像1

ZOZOMATは靴の内寸を測って、フィッティングしているわけではない!?

使い方は簡単だ。足型のグリーンの部分に片足ずつ置き、ZOZOTOWNアプリを起動。アナウンスにしたがって、円を描くように採寸する。

――プロジェクトを手掛けて一番大変だったことはどういった部分ですか?

ZOZOMATで足型を3D計測すると、自分の足型と相性度の高いシューズと「おすすめサイズ」が出てくるのですが、そのサイズを出すところが一番大変でしたね。一般的に考えると「おすすめサイズ」を出すにはまず足型の計測をして、シューズの内寸を測って、その足のサイズと内寸の差をみて、「おすすめサイズ」を検出すると考えると思います。

ただ、サイズ感の良いシューズと足との関係性は、押さえるべきところと、余裕があるところのバランスが必要です。単に「内寸を3次元で重ね合わせた、形状に隙間がない状態」が良いサイズ感とは言えません。足を計測して推奨サイズをだすサ―ビスが、難しい理由の一つです。

だからこそZOZOMATでは、内寸を測らなくてもサイズ感の良いシューズをおすすめする方法を探らなければならなかったんです。それを見つけるまでにかなり時間もかかったし、苦労しました(笑)。

――計測した内寸と足型のサイズ感は必ずしも一致するわけではないんですね……。

そうなんです。そもそも、シューズの元型となるLASTは、例えば「ターゲットとなる足よりわざと狭い箇所をつくってフィットさせる」など様々に計算されて作られるので、そもそも、足の形状と内寸は一致しません。
また、素材によっても伸びが変わるので、どの状態での内寸を測るのが正しいかも、靴毎に異なります。単純にニット素材、革素材でもその伸び方は違いますよね。

また、グローバルブランドでも製造誤差は1~2mmでてきます。足自体も日によって数ミリ変化します。製造誤差が2mmで足が2mmの変化だとすれば、4mm差がでます。それに加えて3Dの足計測でたった1mmでも誤差が出たら、計5mm、要するに1サイズ分のズレが出てしまうのです。

そうすると製造誤差の壁を内寸計測を用いた手法では超えるのは難しいんですよ。だから、内寸を測らない方法を見つけるまでに本当に苦労しました。もちろん内寸計測の実験は重ねましたけど、どの方法で何度やっても精度が上がらないので、内寸を測らない方法を採用したのです。

――どれぐらいのデータを採ったのですか?

ZOZOMATのスタート前にテストしたのはのべ6万回以上、5000時間のデータを計測し、ZOZOMATでとった足形と比較しながらアルゴリズムをチューニングしていきました。もちろんZOZOMATのサービスがスタートし、利用者は増えているのでデータも蓄積され、計測精度もかなり上がっていくと思います。(2020年4月末時点でZOZOMATは119万人に配布、計測者数は93万人に到達)

――2020年2月にZOZOMATのサービスがスタートしましたが、ユーザーに使ってもらうために、工夫した部分はありますか?

足型を計測するアプリは他社でも開発されていて、その傾向は主に2パターンとなっています。ひとつは簡単に足型が測れるけど精度が悪いもの、もうひとつは、精度の高い高価なレーザースキャナを使い計測できるけれど、来店の手間がかかるもの。だから我々に求められるのは高性能で精度が高く、かつユーザーが自宅で簡単に使えるアプリにしなければいけないという部分が、まず大前提としてありました。

はじめは、上からかざすだけのように簡単な計測方法にしたかったのですが、何度も実験を重ねた結果、計測精度を保つためには360°1周して計測する方法が良いという結論に至りました。そこで、ZOZOMATを円状のデザインにして、計測方法を直観的でわかりやすくしたことがひとつポイントです。

あとは計測後に、ユーザーが相性度を確認するときの表現方法も工夫し、現在のようにパーセンテージ表記で、色を分けてわかりやすくしました。また、どんなシューズをユーザーに勧めるかを決めるのにもひと工夫がありました。実は、皆さんが知っているような有名な定番シューズも色々な種類があり、細かい仕様が異なるので、それらを正しいデータとして扱うのにも苦労しましたね。ZOZOMATのサービスを作るうえで、今までユーザーが意識していなかった表現の細かい部分を整えるのに注力したことも工夫した部分ではありますね。

ーーありがとうございました。

後半ではさらに詳しく、ZOZOMATのことを深掘りしていきます。
お楽しみに!

スクリーンショット 2020-05-08 19.45.00

TEXT by YASUYUKI USHIJIMA

ーーー

ZOZOテクノロジーズでは、ファッションとテクノロジーに関する事業・研究を行っております。【ZOZOテクノロジーズ】【ZOZO研究所