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中国アパレル界で頭角を現すITベンチャー企業「MUシステム」。アルゴリズムで消費ニーズに対応する

ますます厳しさを増す中国のアパレル業界。その中で頭角を現してきたのが2009年に設立の中国発アパレルITコンサルティングベンチャー「MUシステム」だ。その「MUシステム」が投資ラウンドのシリーズAにおいて5千万元(7.6億円)の調達に成功。主に運営メンバーの拡大及び、アパレルクラウド工場関連の開発及び技術開発に当てるようだ。

ITコンサルティング企業がアパレル界に参入

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「MUシステム」はアパレル企業向けにITコンサルティングを行うベンチャー企業である。2009年に上海を本拠地に設立。当初は経営コンサルティング及びソフトサービスをアパレル企業に提供していたが、徐々にサービスを拡大し、現在はアパレルITコンサルティング企業となった。

主な業務はアパレル企業のクラウドにおけるサプライチェーンの管理システム、製造実行システム(MES)、服装標準工数時間(GST)、ERP(企業資源計画)システムなどで、既に累計200以上のアパレル企業との取引実績を持っている。

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アディダス、ナイキがトップを牽引、3位海澜之家、4位ユニクロ。中国のアパレル業界における競争の激しさ

2019年、中国のアパレル業界の経済規模は2兆元(30兆円)を超える。中国の二大アパレル上場企業(いずれも香港における上場)は、福建省晋江市に本社を置くスポーツウェアメーカー「安踏(あんとう)」と寧波に本社を置く衣料品メーカー「申洲国际(しんしゅうこくさい)」だが、この2社を合わせてもアパレル売上市場全体の15%程度。残り85%を、他アパレル各社がしのぎを削っている。

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引用:https://baijiahao.baidu.com/s?id=1640368047569033039&wfr=spider&for=pc

市場シェアをブランド別で見た場合、首位並列のアディダスとナイキがそれぞれ市場全体の2%。3位はシェア1.1%の中国本土ブランド「海澜之家」(日本名:ハイランジージャー)、4位は日系ブランド「ユニクロ」で、そのシェアは1%程度中国のアパレル業界における競争は熾烈で、古くからある企業の中には競争に対応できずに淘汰されるも多く、AI、ビックデータなどのテクノロジーを使っての競争も一段激化している。

中国においても若者世代では個性化が進み、昔のような大量生産は現在の個性多様化の流れには時代遅れである。個性、文化の多様化において、リアルタイムにお客様のファッションニーズ(必要性)とウォンツ(欲求)を満たす必要がある。そのため生産における柔軟性が不可欠になってきた。

たとえば、今、中国の若者たちの間で限定グッズがブームを起こしていて、スニーカーフィーバー(限定のスニーカーを購入して、元値の倍以上の価格で転売)が起こっている。元値より数倍高くても、そのグッズを手に入れたい。つまり、他人とは違うものを持ちたいという自己承認欲求の表れであり、それは大量生産では満たすことが出来ない。若者たちは、アパレル企業に向けて「個性化」への新たな対応を求めているのだ。

1週間で設計から納品までを可能にするアルゴリズムで、消費者ニーズに素早く、柔軟に答える

「MUシステム」はこのリアルタイムに変化する消費者のニーズに答えるため、ITを駆使しソリューションを提供している。

「MUシステム」の強みは、創業10年間で培われた経験とアパレル業界についてのデータの保有である。複雑な衣料製造の工程も含め、アパレルのサプライチェーンの各工程で提携企業の強みを把握し、例えば、服の注文を受けると、工程ごとに最適な工場に製造を委託、極めて高度な再分業化により、生産効率をさらにアップさせるのだ。

そのため、「MUシステム」は2019年から新たなサービス(クラウド工場)を提供し始めた。アパレル企業から注文を受けると、「MUシステム」が連携を取っている工場に注文を最善に振り分けて生産させる。その結果、ひとつの服装設計から納品までわずか1週間で可能になった。これまではトップ企業でも、服装の設計から納品は21日かかるのが通常であったという

一つの服を完成させるには、様々な工程を経る必要がある。「MUシステム」はアルゴリズムを通して服の生産工程を118工程に分類。またタグをつけることで、同じ工程の服を統合し、工場に依頼する

「MUシステム」の創業者、罗建军(日本名:ラ ケンクン)はこのように話す。「商品によって生産工程を変えることは、生産効率を下げることになり、また、それに対応できる人材を育てるにも多大なるコストがかかる。そこで、一つの工場において製品生産ラインを絞って生産効率を上げることを考えた。実際、生産効率は約2倍に上がっている」

さらに、「MUシステム」は元コンサルティング専門の企業でもあることから、アパレル企業社内の生産性向上にも力を入れている。アパレル企業では設計、素材の購買、生産、物流は40近くのプロセスを経る。また社内でも10個近く部署が協力する必要がある。「MUシステム」はこの設計から販売までのプロセスを一つの総合ソリューションとして提供することで、企業の効率を2割から3割ぐらいアップさせるという。

今回のクラウド工場という新しい業務の発展のため、「MUシステム」はアパレル企業の業務軽量化のためのSAASの開発も並行して行っている。SAASは今後工場及びアパレル企業に提供する予定で、さらなるのサプライチェーンの効率化を図り、服の生産サイクルを1週間から5日、6日まで圧縮するのが目標だ。

「B2Bビジネスにおける根本はやはり製品」と前述の罗建军は言う。「いくら営業が新規の顧客を開拓しても、提供する製品がその需要に追い付けなければ、何の意味もない。それならマタイ効果(中国のビジネスでは、マタイ効果は強いところを活かして、更に強くなるという意味を指す)を発揮し、各社が持つ長所を伸ばすほうが賢明だ」

「MUシステム」が直面するふたつの壁

しかし、「MUシステム」には2つ大きな壁がある。

ひとつめは、工場において単一の行程に特化した場合、アパレル企業から多くの発注が無ければ、多くの収益が望めないということ。

ふたつめは、もし「MUシステム」の規模が拡大したら、今の生産サイクルを7日に維持できるかどうかが問題視されている。

そのため、アパレル企業から大量注文を獲得し、その発注に応えるためには、マーケティングに注力することは不可欠である。いくら優れた商品を作り出したとしても、それを売る方法を知らなければ、ビジネスの拡大にはつながらない。マクドナルドより美味しいハンバーガーをつくれる主婦はたくさんいるが、マクドナルドと同じように稼ぐのが難しいのと同じこと。その違いは単に売る方法知っているかどうか、である。そこで「MUシステム」は今年に入りマーケティングに長けた人物を副社長として迎え入れた。今後、どう発展していくかに各方面から注目が集まっている。

文・ 叶 志強 編集・安田光絵


参考
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1659743313961230813&wfr=spider&for=pc


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