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ブロックチェーンを活用したクリエイティブプラットフォーム「Pocket collection」

ファッション業界では3Dによるクリエーションが一般化し始めた。制作段階ではファッション専用の3Dモデルソフト「CLO(クロ)」や3D衣装作成ソフト「Marvelous Designer(マーベラスデザイナー)」などが活用されており、クリエーションに新たな可能性をもたらしている。

株式会社PocketRDは、ブロックチェーンを活用し、3D技術を活用したアートワーク等、CG創作物全般の大量保存、二次創作、二次流通、販売が可能となるWEBサイトPocket collectionを発表。現在はβ版の運用だが、今後は個人を含めた利用が期待されている。

このクリエイティブプラットフォームはファッション業界での活用も期待できる。以前当メディアで紹介した「The Fabriant(ザ・ファブリカント)」もブロックチェーンでドレスを9500ドルで販売するなど、ファッションと3D、そしてブロックチェーンは今注目すべきトピックだ。今回は株式会社PocketRDの籾倉宏哉氏に「Pocket collection」に加え、同社が開発した完全自動でアバターが作成できる「MY AVATAR」についてお話を伺った。

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株式会社pocketRD 代表取締役 籾倉宏哉氏

3DCGデータのクリエイティブプラットフォーム「Pocket collection」

「Pocket collection」では、世界中のアーティストの3Dデータの権利をブロックチェーン技術で保護し、不正利用摘発の検知の仕組みも用意されている。二次創作、二次流通においても権利を管理し、利益分配を行え、多くのクリエイターによりブラッシュアップされることで、クリエイティブの価値をさらに高めることが可能なプラットフォームが構築されているそうだ。このエコシステムの提供により、機械やAIには真似の出来ない人間だけができる創造、クリエイティブが生まれることが期待できるという。

主要機能としては、多くのクリエイターの創作活動における中心的なプラットフォームとなれるように、大容量ストレージ機能によるポートフォリオ掲載機能、プロジェクトマネジメント機能によるグループによる制作活動、マーケットプレイス機能による購入・販売も可能にし、その創作活動を全面的な支援が可能になっている。

ブロックチェーンで創作物の著作権を守る

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「Pocket collection」ではブロックチェーンが活用されているが、そこに着目するに至ったのはどういう背景があったのだろうか?

「3D技術を事業の主軸に置いたとき、3Dの創作物を生み出すことのできるクリエイターの存在は欠かせないものです。彼らの創作活動を支援できるようなサービスをと社内検討を行っている中、創作物の権利が曖昧になっているという課題に着目しました。時間と労力をかけて生み出した創作物が簡単にコピーされてしまう現状を解決したい、そこで権利をどう守っていくかということでブロックチェーンによる権利の分散管理を機能として開発しました。」

創作物の権利保護という課題を解決するためにブロックチェーンが活用されているが、クリエイティブ分野のどのような革新が可能になるのだろうか?

「世の中に3Dのマーケットプレイスは多々ありますが、創作物の権利を守れるサービスは『Pocket collection』だけとなっています。クリエイターが自身の作った創作物を自分の作品と登録し、権利を保護する、その創作物を使用する人は創作者の権利を守る。そんな当たり前のことが、今まではできていませんでした。作った人、使用する人が基本的なことを守り、ルールを守ることが当たり前になると、今までは作品の不正利用を恐れて出さなかった人たちも出すようになり、市場が活発化し、機械や AI には真似の出来ない人間だけができる創造、クリエイティブがより多く生まれることが期待できると考えています。」

「Pocket collection」は世界中のクリエイターの3Dデータの権利をブロックチェーン技術で保護し、不正利用摘発の検知の仕組みも用意してあるという。2次創作、2次流通においても権利を管理し、利益分配を行え、多くのクリエイターによりブラッシュアップされることで、クリエイティブの価値をさらに高めることが可能なプラットフォームとなっている。

個々人の身体を拡張する「MY AVATAR」

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クリエティブ分野における3DCGの創作物の権利をブロックチェーンで守るサービスに加え、同社では「MY AVATAR」という3D撮影技術の開発を行っている。「Pocket collection」との相互関連の仕組みは現在開発が検討されているとのことだが、「MY AVATAR」は撮影から採寸、編集、加工、保存、エクスポートまで一続きでアバターの生成が可能となっている。こちらの開発についてもお話を伺った。

「人体アバターをゼロから作成するのには膨大な時間とコストがかかります。今まで撮影から編集可能で可動式の3Dアバターがノンストップで、しかも短時間で生成できるというワークフローは存在していなかったので、挑戦して3年間で開発を行いました。今後も様々な業界のニーズに対して、お役立ちできるようブラッシュアップしていくつもりです。」

生成できるアバターは以下の5種類となっており、活用の場面に合わせて選ぶことができる。

1)自動生成されアバター5種

プレビューアバター
ボディサイズの採寸も可能。アパレル、フィットネス、スポーツ業界などで活用可能。
インスタントアバター
自動でリギング。骨組みが入ったアバターをエクスポートし、ゲームやメタバース空間を楽しむことが可能。
エディタブルアバター
アバターの編集が可能。プリ機のように、目の大きさを変えたり、メイクの変更ができる。自分らしさを活かしたキャラクターへの変更機能も搭載予定。
ネイキッドアバター
センサーで取得したボディサイズを反映。バーチャルフィッティングでの活用も可能。
ボブルヘッドアバター
頭の大きい二頭身のアバター。ミニゲームや世界観への没入感を担保できる。

このようにエンタメ性の高さから「プリクラ機」のような汎用化も想像できる「MY AVATAR」だが、街中でいつでも誰でもアバターを作成することができるような未来はあるのだろうか?

「必ずそういう未来が訪れると私たちは考えております。個人のアイデンティティである『その人らしさ』は残しつつもプリクラ機のように簡単に撮影し、なりたい自分へと編集・加工し、様々なシーンで活用することにより今までのサービスがより充実し、便利になると思います。ひとりひとりが持つ自分の3DアバターはOnline merges with offlineにおいて極めて重要と考えます。」

「MY AVATAR」で生成される3Dアバターはセンサーカメラによって身体のサイズを取得でき、3DCGで作成した洋服のモデルがあればバーチャルファッションも可能になるとのこと。ファッション業界での活用が期待できるうえ、誰もがアバターを通して身体を拡張しアイデンティティを再考するチャンスを得るだろう。

3Dデータと身体の新たな出会い

上述のように、3Dにかかわる多様な事業展開をしている株式会社PocketRDだが、事業参入の経緯には日本における3D事業の課題ならびに著作権保護意識の希薄さにあったという。

「弊社はビジネスマッチングを生業とするリトライブ社からスピンアウトしたベンチャーになります。リトライブ社で新規事業を模索する中、3Dアセットの枯渇の課題並びに容易に入手できる3Dアバターのソリューションを持つ純日本発の企業がない、こういった市場環境を踏まえ創業しました。
創業時の事業計画を構築する際、米国並びに欧州の3Dにまつわるベンチャー企業を歴訪しました。その際、全世界的に技術革新についてまだまだ可能性があること並びに著作権を行使・保護することに関する意識が低いことが散見され、日本人が持つ『ちゃんとやる』という国民性にも着目し、事業をスタートしました。」

最後に、3D業界の潮流とこの業界に求められていることについてお話を伺った。

「5G、6Gの通信環境が整備される中、各種コンテンツのリッチ化は容易に想像ができ、コンテンツの制作活動のスピードの引き上げは業界に対しての大きな課題だと考えております。直接的にすべてが3Dに繋がるわけではなりませんが、昨今の映像制作並びにゲーム、フィットネス、ファッションの業界全てにおいて3Dの技術は切っても切れない存在になることを踏まえ、多種多様な企業が自社の技術ノウハウを活かし、3D技術にまつわる技術革新やサービスの導入を検討予定している現状があると考えております。
また、3D技術を活かした上でのサービス設計はボーダーラインを超えて世界中の人がその技術やサービスに触れることが重要なキーファクターと考えており、日本がこのパラダイムシフトの中で失われた20年を取り戻すには多言語対応前提のビジネスモデルの構築が必要だと思います。」

ブロックチェーンを活用した権利保護やアバターの生成は、ファッション業界との親和性が多大にあるものに感じた。冒頭で言及した「CLO」や「Marvelous Designer」で生成したデータも著作権が保護されたプラットフォームで二次利用ができたり、3Dで作成した服を自分のアバターに着せたり、また楽しみの一つとしてミラーワールドでファッション体験を完結させることも可能かもしれない。前述したようにこれら2つのサービスの相互関連は検討中とのことだが、3DCGデータとアバターのように拡張された身体との絡まり合いは身体観を変容させ、ファッション業界にも影響を及ぼすかもしれない。

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