【特集】サイジングテクノロジー「Fit Analytics」が問う、これからのEC戦略
年間約1億人以上の消費者が利用している「Fit Finder (フィット・ファインダー)」。当サービスを提供しているのは、ベルリン・シカゴにオフィスを構える「Fit Analytics (フィット・アナリティクス)」だ。現在、当サービスはASOS、 The NorthFace、 Vans、Tommy Hilfiger、ZARA、さらに日本ではUniqloといったグルーバルアパレル企業に取り入れられている。当社は他にも、「Fit Connect (フィット・コネクト)」、 「Fit Source (フィット・ソース)」、 「Fit Intelligence (フィット・インテリジェンス)」といったサービスも展開しており、まさに着用感とサイジングテクノロジーのグローバルリーダーとも言えるだろう。 今回、4月にFit AnalyticsがリリースしたCOVID-19状況下における、「The Impact on Grobal Buyer Behaior(グローバルな購買行動への影響)」のレポートを中心に、当社のコミュニケーション・マネージャーであるNicole Yazolino(ニコール・ヤゾリーノ)に今年度初頭の消費者からバイヤーに至るまでの行動変化の観測結果を伺った。
オムニチャネル対応サイズアドバイザー「Fit Finder」
ECで洋服を購入するとき、サイズ表だけではなかなかそのアイテムのフィット感を掴めない、と感じたことはないだろうか。モデル着用写真では納得が行っていたのに、実際に商品が手元に届き着用してみると、全く異なって見え、場合によっては返品できない、といったケースもあるだろう。Fit Analytics社の提供する「Fit Finder」は、まさにECでの購入時のサイズやフィット感といった悩みを購入時に解消してくれるサービスだ。
Fit Analyticsのサイジングプラットフォームは、世界最大規模の衣料品のデータとそのフィット情報、さらに1,200億ドルを超えるグローバルな売上高を組み合わせ開発されている。顧客の入力されたデータから、さらにその返品情報までをもデータソースとして扱うため、最終的に顧客であるアパレルブランドの利益を向上させる。この膨大とも言える情報を機械学習を適用して実装しているため、消費者からマーケティング、アパレルブランド、さらに製造までのライフサイクル全てを改善する革新的なソリューションであると言えるだろう。
身長・体重・体型タイプを打ち込む
まず買い物客は購入時に、身長・体重・年齢情報に加え、自分の体型のタイプを選択。そこからフィットする推奨アイテムサイズが提示される。さらに同様条件での返品率も提示される仕様となっている。これにより、Fit Analytics側は、毎月10億件を超えるサイジングの推奨事項を買い物客に提供すると共に、各ユーザーのサイズや購入情報・返品情報を収集、事業拡大に伴い1500万以上のアイテムと17,000のブランドのサイズ情報のカバーを可能にしているという。
さらに、レコメンド事項は各ユーザーにパーソナライズされた一つ一つの製品レベルで機能するため、同じボディタイプや好みというカテゴリ分けから他の顧客が購入し返品せず保持し続けたアイテムと買い物客の情報を照らし合わせている。
レコメンドされたサイズ情報(左: Desktop仕様 / 右: スマートフォン仕様)
このサイジングプラットフォームは、顧客となるブランドは瞬時のeコマースの売り上げ向上や改善に取り組むことができ、長期的な戦略顧客の獲得にも繋がり、中長期における顧客の収益の向上を可能にしているという。
さらにFit Finderは現在、実店舗にも取り入れられている。ブラジルのブランドAmaroでは、店舗内に設置されたデバイスでFit Finderの使用が可能になっており、店頭での試着も可能だ。注文したアイテムは、買い物客の自宅やオフィスなどに直接配送される仕組みになっている。これにより、決済は、eコマースショップを通じて行われる一方で、店頭ならではのディスプレイや環境設計に始まり、ユーザーエクスペリエンスを確保する試みも行われているという。
Fit Finder店舗内使用イメージ
世界的パンデミック状況下における購買行動変遷をどうみるか
本年4月、Fit Analytics社は2020年四半期のグローバルなアパレルeコマースビジネスの変動をレポート「The Impact on Grobal Buyer Behaior(グローバルな購買行動への影響)」にまとめ、ウェブにてリリースを行っている。 全体的な消費行動の変遷から、小売業者の影響そしてそこからの予測に至るまでをまとめたとしている。
2020年4月にリリースされた「The Impact on Global Buyer Behaior」
レポートから明らかになったのは、「実店舗のシェアが高く、eコマースの開発が進んでいないブランドはサバイバルモードにあり、企業の節約に重点を置くために、新しいテクノロジーの実装を後回しにしている」点だったという。さらにレポートでは以下のように記されている。
「オンラインプレゼンスの高いオンラインショップと小売業者は、この時期を利用しeコマースオペレーションを強化を行っています。サイジングソリューションやその他新技術の検討など、変化する市場環境の需要を満たす新しい方法の検討です。一方で、オムニチャネル小売業者は、実店舗の閉鎖により大きな打撃を受けましたが、オンライン需要は誰も予想していなかったペースで加速しており、実店舗とオンラインショップと言った相対するビジネスインパクトを一度に調整する必要があり、非常に困難な側面を見せています。」
オムニチャネル展開を行う小売業者が直面している、実店舗の売り上げ減少・オンライン市場の拡大という問題は、利益の流動性への不安視から新たな大規模な投資を躊躇させる。しかし、このような状況下だからこそ、「企業はオフラインからオンラインに市場シェアを拡大し、新しい標準に適応する必要があることを今まで以上に理解している」と言い、市場競争の変化が加速しているとしている。レポートではこのように続けられている。
「COVID-19以前は、予測された業界コンセンサスにより、実店舗からオンラインへの進化に5〜10年のタイムラインが設定されていました。しかし、 COVID-19とその後の消費者行動による経済の急速な変化は、10年をほんの数ヶ月に短縮したと観測できます。」
週毎の購買価格の変動 2019-2020年初頭比較
消費者の購買行動とサイズ展開のゆくえ
パンデミック状況下において、経済の低下は消費者の行動を変化させたという。さらに「消費者は自分のお金をより選択し、購入の決定を行うためにより多くの時間を費やしており、正しい選択をしていることを確信する必要がある」とのことだ。実際に、マルチ・サイズ購入率は、昨年度と比較し15%の減少を見せたといい、より顧客が慎重に購入品選択を行っていることが明らかになったという。しかし、Fit Finderは、多少の購入数の減少があったものの、昨年の同時期に比べユーザーエンゲージメントが増加したという。
この状況をYazolino氏は、「消費者がより慎重になっているいまだからこそ、顧客が満足する着用感・正しいサイズの商品を提供する技術が求められているでしょう。さらに、今回のパンデミック状況下では、多くのウェブストアが返品ポリシーを以前と比べ緩和したこともあり、購買体験の全体を通じて慎重な消費者を安心させる仕組みを確保する試みの重要性が強調されているように感じています。」と考察しているという。
サイズ・サンプリングの変動 / マルチ・サイズ オーダーは昨年に比べ15%減少
より慎重になった顧客の購買行動のエンゲージメントを高めるために、プラスサイズやスモールサイズへの対応をいかに行うべきか伺うと、「単純にプラスサイズ展開の事業を拡大するだけでは根本的な解決にはなっていない」と返ってきた。さらに「体型の違いや、体重の増加・減少に伴って、買い物客の体型がどのように変化しているのかを明らかにし、それに従い衣服の仕様を調整することが有効」だと考えているようだ。
実際にFit Finderを通じて収集されたデータは、買い物客の体型やサイズをリアルタイムで観測し、改善するフィードバックループを形成している。つまり、他の全てと同様に、様々なサイジングの買い物客もまた、オンラインショッピングの頻度が増加傾向にあるため、即効性のある対応が可能であるとしている。よって、サイズ観測が可能になり、これにより企業側も需要のあるサイズに応じたアイテム仕様を事業拡大を行うことなく効率的に行えるようになるというのだ。
Fit Finderの実践例で重要なことは、「企業も消費者も同様に無駄遣いが少ないプロセスが必要であると言えます。つまり、生産から物流までのプロセス全体が、より正確かつ効率的で、買い物客のニーズを中心に設計されされる」ことなのだという。消費者のサイズを元に、求められる商品を提供するだけでなく、高い満足度とエンゲージメントを可能にするためには、生産側も収集された消費者の体型データを元にそれに瞬時に対応できる生産プロセスを確保する必要がある。
Yazolino氏は近年の状況に関して展望を以下のように述べている。「COVID-19のロックダウンという状況から買い物客はオンラインショッピングに依存することに慣れました。同時に、小売業者は在庫管理やストックの管理に始まり流通までのオペレーションをシームレスに行い、消費者により質の高いユーザーエクスペリエンスを提供することが求められています。将来的により多くの人々オンラインで買い物を行うようになることが考えられるため、実店舗に代替する確実性がオンラインショップには求められています。」
世界的パンデミック状況下で、増加したeコマース利用。衣料品に始まり、日用品や消耗品まで全てのオンライン需要が増加傾向にあることは言うまでもない。この状況下において、より顧客に安心感をもたらすサービス提供はいかに可能になるだろうか。Fit Finderの機械学習アルゴリズムに基づいたレコメンド情報に加えられた、「他の顧客の満足度や返品率」の指標が、より満足度の高いアイテム購買起因に至る満足度に繋がっているとは言えないだろうか。より満足度の高く、質の高いサービスを提供するための要因の所在を明らかにしていくことは、拡大したオンライン市場の付加価値を高めることに繋がるだろう。
** 実際の返品率減少・エンゲージメント増加のサクセスストーリー事例
Footlocker EU: https://www.fitanalytics.com/success-story-footlocker-eu
Ridestore: https://www.fitanalytics.com/success-story-ridestore
Amaro: https://www.fitanalytics.com/success-story-amaro
** 6/15現在 フォローアップレポート https://blog.fitanalytics.com/covid-19-follow-up/
text by Hanako Hirata
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