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リアルタイムの3DCG合成技術によるバーチャルファッションショー「Tokyo Virtual Runway Live」

コロナ禍によってイベント開催が中止になるなかで、ファッション業界でも大きな課題となったのがファッションショーや展示会の開催だ。ショーの中止や延期が発表されるなかで、別の形での開催を模索する動きもある。

そのひとつの事例となったのが、6月27日に行われたTokyo Virtual Runway Live。「ABEMA PPV(アベマ ペイパービュー)」にて、フル3DCGで製作されたステージをモデルが歩く、バーチャル空間でのファッションショーだ。このファッションショーはどのような経緯のもと行われ、どのような技術によって実現したのだろうか。運営の株式会社OEN(サイバーエージェント子会社)で代表取締役を務める藤井琢倫さんにお話を伺った。

藤井_宣材写真

株式会社OEN代表取締役
藤井琢倫さん

コロナをきっかけにオンラインイベントの実現へ

ーーまずは今回のTokyo Virtual Runway Live開催の経緯を教えてください

当初はガールズアワード様が、「GirlsAward 2020 SPRING/SUMMER」の開催を予定されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受けて開催延期が決定しまして。そのとき、社内でガールズアワード様のプロデューサーと繋がりのある社員がおりまして、「イベントの出演者を起用したオンラインでできる企画はないか」というご相談を頂き、新しく4月に設立した株式会社OEN(オーイーエヌ)というエンターテインメント産業における収益化のデジタルシフト支援を専門に行う弊社より、3DCG技術を用いたファッションショー&ライブパフォーマンスを提案させていただきました。

その後、先方に実際にサイバーエージェントが保有するカムロ坂スタジオに来ていただき、リアルタイムに人物と3DCG背景を合成し撮影する技術と、フル3DCGのクオリティの高さを実感していただいて、是非やろうという話になりました。

ーーバーチャルランウェイという形式のアイディアというのは、コロナの状況下で生まれたものですか?それとも元々お持ちの技術で、何かイベントをやろうという動きがあったのでしょうか?

元々構想していたわけではありません。コロナの感染拡大後に、サイバーエージェント子会社でCGクリエイティブ制作をしている株式会社CyberHuman Productionsがフル3DCGをリアルタイムで合成するという技術を持っていたことが分かったので、その技術を先方に実際に見ていただきました。そこで、「ショーのフォーマットとして、バーチャルランウェイは面白いね」とアイディアが生まれ、実現に至りました。

ーーリアルで開催が難しくなる状況で、それでもファッションショーを行おうと思った理由についてお聞かせください。

サイバーエージェントとしても、エンターテインメント業界が新型コロナウイルスの感染拡大の影響でダメージを受けている中で、インターネット上で収益を得られるように全面的に業界を支援していこうという意向から、株式会社OENを立ち上げています。

アパレル業界も同様に影響を受けているなかで、我々が今できることをやろうという考えと、ファッションと音楽の力で世の中を少しでも明るく照らしたいという想いが、ガールズアワード様とABEMAに共通してあり、お互いの想いがマッチして開催が実現したのだと思います。

ーーでは、ガールズアワード様とはどのような役割分担で進められたのでしょうか?

ガールズアワード様が演出や制作、イベント運営を全て担ってくださり、株式会社OENでは全体進行、株式会社CyberHuman Productionsがランウェイのデザインと3DCG化に当日のリアルタイムCG合成、ABEMAではそれを実際に配信する上での技術的な部分や宣伝広報を担うといった、まさにチーム総力戦でした。

フル3DCGをリアルタイムで合成する最新技術

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ーーこのプロジェクトに活用されている技術の強みや特徴を具体的に教えてください。

カメラにセットアップしているトラッキングシステムとソフトウェアの両方がポイントになる点です。トルコで開発された技術ですが、グループ会社のCyberHuman Productionsが日本で一番最初にこの技術を導入しました。システム自体も日本に数台しかなく、このシステムを使えるエンジニアも日本にまだ数名しかいないという点でも、かなり特殊な領域かなと思います。

リアルタイムで人と3DCGを合成するというのが一番難しいところです。この技術を使うと、奥行のある演出ができたり、金属のような鏡面への人物の映り込みまで再現することができるので、かなり没入感のある、CGの世界に入り込んだような演出をすることが可能になります。普通のカメラだと、上から貼ったような形になってしまい、リアルタイムでCGと合成しようとすると背景が動かないんですよ。背景はずっと同じということになると、カメラを移動させたとしても人だけ角度が変わったりするので、上にノペっと乗っているような映像になってしまいます。

ーー今回の技術自体は今回のファッションショーの前にも、社内で活用した事例はあったのでしょうか。

リアルタイムCG合成の技術自体は元々、海外でニュース番組やeスポーツのイベントなどの制作場面でつかわれていて、サイバーエージェントでは広告事業のクリエイティブコンテンツの制作で活用していました。サイバーエージェントで実際にエンターテインメントコンテンツで大々的に使ったのは初めてです。

ーー見ていた視聴者さんのリアクションはどうでしたか?

「これは生なのか?」とか、「本当はどんなところでやってるんだ?」みたいなコメントが多かったですね。CGの中でファッションショーをしているという光景をみなさん観たことがなかったので、「不思議。どうやってやってるんだろう」という意見が多かったように思います。あとは、「すごい」という声もコメントもたくさんいただき、ポジティブな驚きは提供できたかなとは思ってます。

ーー出演されたモデルさんは、グリーンバックの空間の中を歩いているんですよね。モデルさんの反応はどうでしたか?

グリーンバックの中を歩いている自分が実はこういう風に映っているんだというのを、会場でリアルタイムに、モニターの返し映像で見られる状態だったんですよ。リハーサルを含めて、出演してくださっているモデルさんやアーティストさんはかなり驚いてましたね。

ーー初めての体験だったのでしょうか。それともミュージックビデオなどで慣れてらっしゃるのですかね?

通常のCG撮影は、あとからCG合成するため、グリーンバックの前で演技をしている時は合成している画を見ることができません。実際にリアルタイムで自分とCGが合成されて、こういう画になっているんだというモニター返しはなかなか見る機会がないと思うんですよ。なので、すごく驚いていたというか、楽しんでましたね。

3DCG空間ならではの演出を

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ーーバーチャルファッションショーというフォーマットの利点として考えている部分と、今後の課題として挙がっている部分があれば、教えていただければと思います。

利点はやはり、リアルイベントでは実現できない、表現できないものを3DCG空間では自由に表現できることだと思っています。弊社としては、今回大きな話題にしていただいた結果を受けて、次回も実施できればいいなと思っています。

ーー今後は同様のファッションショーや他のコンテンツで展開される予定はありますか?

今年の7月に、高品質CGで製作された特別なバーチャルステージ「ABEMAアリーナ」がオープンしました。今後もリアルのライブでは実現できないような、CGならではの演出を用いた音楽ライブや格闘技のイベントなどにチャレンジしてみたいと思います。

ーーありがとうございました。

Tokyo Virtual Runway Live公式サイト
株式会社OEN公式サイト

色々な形式で模索が続くバーチャルファッションショー。サイバーエージェントのフル3DCGをリアルタイムで合成するという技術は、従来のファッションショーの形式を再現可能にすると同時に、CGならではの演出を加えることができるという点で、今後も幅広く活用されていきそうだ。

そしてファッションショーだけではなく、様々なメディアイベントで活用されていくことで、さらに技術も進化していくことだろう。技術の進化によって、表現したい世界観を、より自由な形で提供することができる。リアルイベントの代替ではなく、「積極的にバーチャルでファッションショーを行う」という選択肢もあるのかもしれない。

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