見出し画像

H&MのGlobal Change Award、循環型ファッションを目指す

2019年4月3日、ストックホルムで非営利財団H&M Foundationが主催する「第4回 Global Change Award」の受賞式が行われた。
Global Change Awardとは、廃棄物ゼロの循環型ファッション業界を目指したイノベーション・コンペティション。ファッション業界のノーベル賞とも呼ばれ、受賞式では182カ国6640のエントリーの中から5チームが選ばれた。

受賞したチームは以下の通り。

・Loop Scoop
全ての衣服にクローズド・ループの循環型デザインを実現させるデジタルシステム。
開発チーム:circular.fashion(ドイツ)

・Sane membrane
アウトドアウェア用の鉱物ベースの生分解性メンブレン素材。
開発チーム:dimpora(スイス)

・Sustainable Sting
雑草イラクサを活用したサステイナブルな繊維素材。これによってケニアの農家の生活水準を向上させる。
開発チーム:Green Nettle Textile(ケニア)

・Clothes that Grow
宇宙工学と、折り紙の折りたたみ技術にインスパイアされ、子供の成長に応じて大きくなる服。
開発チーム:Petit Pli(イギリス)

・Lab Leather
完全植物性の代替レザー。
開発チーム:Le Qara(ペルー)

その中から今回は3つのチームを紹介する。

Loop Scoop(ドイツ)

Global Change Awardで優勝したのはドイツのcircular.fashion。
リサイクルに出される衣服は全体の1%にすぎないことに着目し、衣服に関する生産工程のすべてを循環させるデジタルシステムを開発した。衣服にcircular.IDというQRコードがついており、それをスマホで読み取ることで、デザイン制作から原料調達、製造までに至るまでで自分の服がどれくらい環境に負荷をかけているか最適なリサイクル方法などを知ることができる。

Image Credit : circular.fashion

Clothes that Grow(イギリス)

子どもが生後2年間で服のサイズが7段階も大きくなることに着目したPetit Pliは子どもの成長に合わせてサイズが変わる衣服を提案。
宇宙工学と折り紙からヒントを得て、縦横どちらの方向にも拡大できるようにプリーツ生地で衣服を生産している。衣服は防水加工が施されているほか、耐久性にも優れており軽量なため活発な子どもの動きにもフィット。できるだけ長く洋服を着用できるようなアイディアがつまっている。リサイクルも可能で、生後3ヶ月から3歳まで着用することが可能だ。

Image Credit : YouTube by H&M Foundation

Lab Leather(ペルー)

従来のレザー製品毎年何百万という数の動物の命を奪うほか、皮を加工するために多くの有毒物質や重金属を使用し、大量の水を廃棄している。
動物保護と環境保全というファッション業界において重大な2つの問題に対し、Le Qaraはペルーの花や果物から生産する完全な植物性の代替レザーを提案した。ステラマッカートニーのようにビーガンレザーを使用しているブランドは数多くあるが、Le QaraのLab Leatherはあらゆるレザーの色や質感を表現できるため、本格的なレザーの代替として注目されている。100%生分解性でもあるため、リサイクルが可能なだけでなく、衣服を処分後は堆肥としても再利用可能だ。

Image Credit : Le Qara

このアワードの目的は、環境に負荷の少ない革新的なアイディアを通じて、地球の天然資源を保護し、ファッションにおける循環を達成することにある。
今回選ばれた5チームも、イノベーションを活用して循環性を高め、地球に優しいファッションを目指しているという点が共通している。

アワードにエントリーした参加者たちの45%が「資金調達」を最大の課題と答えていることを受けて、今年より初めてクラウドファンディングのプラットフォーム「Indiegogo」と連携。これにより、一般の人々も受賞アイディアに対して支援を行うことが可能となった。

この賞をきっかけに受賞者のビジネスが加速することはもちろん、資金調達やイノベーションの研究開発を通して、ファッション業界全体が循環型ファッションへと大きく近づいていくだろう。


ーーー
ZOZO研究所では、ファッションに関する研究を行っております。
ZOZO研究所に関してはこちら