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女子高生による女子高生のためのレンタルサービス、Z世代「Nadie」の挑戦(前編)

現役女子中高生による、女子中高生のための会社──昨今のファッションビジネスにおいてZ世代の動向が注目されているが、そのZ世代が創業したのが株式会社Nadie

Nadieは高校2年生3人が2019年9月に創業し、今年2月に女子中高生向けファッションレンタルサービス「放課後マネキン」をローンチ。原宿でのポップアップ開催を経て、8月からはオンラインでサービスを開始する。

同世代向けのサービスを展開するNadieとはどんな企業なのか。Nadie代表取締役の古城栞さん、取締役の白井花さんのお2人にインタビューを実施、起業とサービス考案の経緯、ポップアップでの反響から女子中高生の現在までを聞いていく。現役女子高生2人のインタビューを通して、Z世代向けビジネスにおけるSNSの重要性があらためてあきらかになった。

着たい服を自由に着られる環境を作りたい

──まずは、起業の経緯をお聞かせください。

古城栞・Nadie代表取締役(以下、古城):Nadieを立ち上げたきっかけは、2018年に開講された京都大学主催の高校生向け体験学習プロジェクト「ミライを創る講座」です。このプロジェクトの中で、創業メンバー3人で考案したサービスが最優秀賞をいただきました。せっかくならこのサービスを実現したいと考え、京都大学とアイエント株式会社にサポートをお願いして2019年9月に起業しました。

──なぜファッションをテーマにしたのですか?

古城:「ミライを創る講座」は身近な課題からこれまでにないサービスの立案を目指すプロジェクトで、私たちは「個性」をテーマにしました。私たちが普段着ている制服には、個性を押し殺す没個性の象徴のようなイメージがあると思います。その制服を脱ぎ捨てて、自分の着たい服を自由に着られる環境を作りたいと話し合った結果、ファッションをテーマにすることになりました。

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──Nadieが展開する「放課後マネキン」とは、どういうサービスなのですか?

古城:「放課後マネキン」は女子中高生向けのファッションレンタルサービスです。1点1日300円から貸し出していて、今年2月には原宿に3週間限定のポップアップショップをオープンしました。そこでの経験を踏まえて、8月からはオンラインでサービスを開始します。

──どのような経緯でこのサービスを思いついたんですか?

白井花・Nadie取締役(以下、白井):中高生には、お小遣いなどの制約でおしゃれを自由に楽しめない状況があると思います。私自身もファッションが制限されてることに不満を感じていたので、もっと安くおしゃれを楽しめるようになればいいのではないか、同じことを思っている中高生も多いのではないかと考え、このサービスを思いつきました。

女子中高生のリアルなファッション事情

──なぜレンタルサービスを選んだのですか?

白井:中高生は、いま既にある服が着たいけれどお金がないから手が届かないだけであって、別にいまない服が着たい訳じゃないんですよね。いまある服をもっと気軽に着られるようにしたいという思いが強かったので、作るよりもレンタルという方向性で考えました。

ファッションレンタルサービスはすでにいくつかはあると思いますが、そのほとんどが大人向けのものばかりです。取り扱っている商品のテイストも私達が着たいものとは少し異なり、料金も月額数千円近くかかるため学生には払えません。他社のリサーチをした上で、女子中高生限定の低価格のファッションレンタルサービスを始めました。

──新型コロナウイルス以後、中高生のファッションとの関わり方や認識の変化などはありましたか?

白井:平日は制服を着ているので、中高生が私服を着られるのは休日だけですが、外に出られる回数自体が減ったことによって、私服を着られる機会がさらに限らるようになってしまいました。これからは、外に出られる休日がいままでよりも特別なものになると思うんです。その少ない日のために高い服を買うのも大変なので、レンタルの需要が出てくるんじゃないかなと感じています。

──シェアリングエコノミーなどに対して、いまの中高生の皆さんはどういう印象を持たれているのですか?

古城:シェアリングエコノミー自体に馴染みがあるというわけではないと思います。サービスを開始する前に女子中高生約750人にアンケートを取りましたが、やはり人と共有するのは抵抗があると答えた人が一定数いました。取り扱いアイテムの清潔さを気にする子も多かったので、そのあたりは気をつけています。

口コミの拡散力 200フォロワーからの挑戦

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──ポップアップストアの反響はいかがでしたか?

白井:実際に利用してくれた方からは、「こんなサービスほしかった」「友達同士で遊びに出かけた体験が新鮮で、もっと色んな服を着たいと思った」などの声をたくさんいただき、とても嬉しかったですね。

──イベント情報はどのように拡散したのですか?

古城:いま思うと無謀だったのですが、ポップアップ開催当初のInstagramのフォロワーは200弱程度だったんです。少しでも認知してもらうために、サービスを利用していただいた方には、推奨というかたちでNadieのアカウントをタグ付けしてシェアしてもらいました。来てくれた友達もInstagramに投稿してくれたので、その友達に、さらにその友達にと情報がじわじわ広がっていきましたね。

白井:おかげで、目標にしていた1000フォロワーをポップアップ期間中に達成しました。その時は2人で泣きましたね(笑)。

──口コミによる拡散力が大きかったんですね。

白井:中高生は毎日少なくとも2〜3時間はSNSを見ています。その中でも、ただの広告だと見逃してしまうかもしれませんが、同年代の友達が紹介しているなら自分も行ってみようと思う子は多いと思います。

古城:友達の投稿にタグ付けされているアカウントを見る人は多いはずです。Nadieのアカウントがタグ付けされた投稿から知ってくれた人も多いですし、それを見てDMをくれた人もいました。Nadieでも、タグ付けをしてくれた人を週1回ストーリーで紹介したりしています。タグ付けは認知拡大のために重要な要素だと考えています。

女子中高生一番人気は韓国ファッション

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──「放課後マネキン」ではどのようなアイテムを取り揃えていたのですか?

白井:ポップアップでは、ストリート系ブランドからガーリー系ブランドまで幅広く取り扱っていました。一番人気だったのは韓国系ブランドですね。韓国ブランドなどは買った時に画像のイメージと違かったりと失敗しやすいリスクがあるため、「放課後マネキン」を通して気軽に着てもらえたらいいなと思っています。

──「放課後マネキン」で用意するアイテムはどのように調達しているのですか?

白井:ブランドごとにオンラインで営業しています。各サイトの問い合わせフォームから毎週100件ほど依頼を出していて、返事をくれた企業やブランドとお付き合いさせていただいてます。

──取り扱いアイテムの選定基準は何ですか?

古城:まずは自分たちが着たいと思えるものから人気が出そうなものを選んで、取引先のブランドと調整して決定しています。価格帯に関しては、基本的に1000〜8000円の価格帯のアイテムを揃えています。メンバー自身が着たいとなったアイテムを中心に選んでいるので、女子中高生が好きそうなテイストになっていると思いますね。

──具体的にどのようなブランドを扱っていましたか?

白井:ポップアップでは、韓国ファッションサイトの「MERONGSHOP(メロンショップ)」さんが特に協力してくださりました。店舗に遊びに来ていただいたり、Instagramに投稿してくださったりと、すごい良くしていただいたのでありがたかったですね。

サイトづくりから発送まで全部やります

──オンラインサービスを開始するにあたって意識していることはありますか?

古城:ポップアップストアは毎日オープンしていたのですが、やはり、リアル空間だと住んでいる場所などの位置関係にユーザーは制限されてしまいます。また、平日は基本的に学校があるため、見込みよりも平日の集客率はだいぶ少なくなってしまいました。他県からも利用したいという声があったので、オンラインにしようと思いました。

──取り扱いアイテムはポップアップと同じものを揃えるのですか?

古城:オンラインでは、ポップアップで人気だった韓国ブランドに絞ってアイテムを選びました。韓国レディースファッション通販サイトの「KeatC(ケット・シー)」さん、ストリートファッション通販サイトの「ALBEDO(アルベド)」さん、韓国発ストリートブランド「miro amurette(ミロ アミュレット)」さんなどにご協力いただいています。

──これからオンラインでサービスを展開されるということですが、WEBページの開発などはどのように対応されているのですか?

白井:いまのサイトのほとんどは私が作っています。サイト作りも全て中高生で完結したいと考えているので、今後はプログラミングなどを得意とするメンバーに入ってきてほしいですね。

──発送や物流はどのように対応しているのですか?

白井:今回は下北沢に倉庫を借りて、手作業で頑張ろうと思ってます。今後さらに中高生ボランティアを募集する予定です。

古城:トライアンドエラーを繰り返しながらやっていこうと考えているので、今回は様子見もかねて自分たちだけでサイトづくりから発送まで全部やってみようと思います。

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Nadieの事業は、女子中高生ならではの目線と気づきから生まれている。ビジネスにおいて、ターゲットを具体的に想像することが重要であると頻繁に語られているが、提供者自身がターゲットそのもののような存在であれば、想像以上に具体的なサービスを実装できるだろう。Nadieはその強みを遺憾無く発揮している。SNSを制するものがZ世代を制すると言っても過言ではないのかもしれない。

そんな代表の2人も来年高校卒業を控えている。女子中高生ではなくなる2人は今後をどのように考えているのだろうか?後編では2人の進退含め、女子中高生のSNS事情や「現役女子中高生による、女子中高生のための会社」というブランディングとマネタイズのバランス、これからのNadieの展望について聞いていく。

Text by Naruki Akiyoshi

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