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AI系テック企業Apatechが仕掛ける、バーチャルフィッティングとデジタル店舗サービス

現在、アパレル企業にとってオンライン市場の開拓は大きな課題のひとつ。バーチャル技術を活用した進化が推し進められる一方で、実店舗の可能性も未だ重視されている。オンライン市場に目を向けながらも、現代に対応できる新しい店舗販売の形も求められているのだ。

このような状況に対して総合的に取り組んでいるのが、Apatech(アパテック)だ。アパテックは、ITソリューションを用いて、オンライン/オフライン双方からブランドを総合的にサポートするIT企業。ECサイトやアプリの運営から、バーチャルフィッティングなどのIT技術の提供、無人店舗サービスの提供など多岐にわたるサービスを展開している。

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同社のサービスは日本をはじめ世界各国へ導入が進んでおり、日本でも帝人フロンティア株式会社・株式会社クリーク・アンド・リバー社のファッション部門を占める子会社、株式会社インターベルと代理店契約を締結するなど注目の存在だ。

今回はアパテック代表取締役の孫峰さんに、同社の数あるサービスの中でもとりわけファッションテックの文脈で期待されるバーチャルフィッティングプラットフォーム「Apatech Online Fitting」と、デジタル店舗システム「Apatech Digital Store」を中心にお話を伺った。

図2

画像処理システムから生まれた「Apatech Online Fitting」

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バーチャルフィッティングプラットフォーム「Apatech Online Fitting」は、写真断片化技術を用いて身体データを加工し、撮影された衣服の画像データと人工知能によって合成するシステムだ。孫さんいわく、このシステムのコンセプトは「いつでもどこでもフィッティングができ、試着の悩みから解放すること」だという。

実際のバーチャルフィッティングは、以下のような流れで行われる。まず、試着したい服を選び、身長、体重、体型などから自分の体型に一番近いモデルを選択する。すると、AIアルゴリズムによって作成された試着イメージが表示される。そこから購入したければ、ブランドサイトに移動できるという形だ。

「Apatech Online Fitting」の開発は2,3年前から行われてきた。まず、ECサイトに使用する画像処理技術システムを開発、その技術をバーチャルフィッティングに応用する形で、2、3年の開発期間を経てローンチに至ったのだという。

バーチャルフィッティングに使用される体型や衣服に関するデータの収集は、写真を撮影する形でシンプルに行われていると孫さんは語る。モデルの撮影と衣料品の撮影を行うのだが、モデルはポージングをして前後2枚撮影する。そして衣料品は、着用させたロボットにモデルと同じポージングをさせて撮影する。このように収集されたデータを断片化し合成するのが、このサービスの特徴である。モデル、衣料品の写真データをそれぞれ300万画素に断片化させてバーチャルに合成、それによって非常にリアルな質感のフィッティングを可能にするのだと孫さんは教えてくれた。

ささげ業務のコストを削減

バーチャルフィッティング自体は多種多様な企業が開発を進めているが、この「Apatech Online Fitting」の強みは、いわゆる「ささげ」業務が簡易になることだと孫さんは語る。ECサイトなどにおける撮影、採寸を行う業務はこれまで基本的に労働密集型だった。しかし「Apatech Online Fitting」では、モデルのデータを一度撮れば、ささげ業務は衣料品のみの撮影となるため、簡易的かつコロナウイルス禍で問題視された密状態なども回避することができるという。

なお「Apatech Online Fitting」は、すでに多数のブランドにPOCサービスを供給しており、クライアントが一番気にかけているのが、コスト削減だという。特にハイブランドはモデルの人件費が高く、新商品のたびにモデルを雇用するとコストが大きい。一方でファストファッションでは商品数が多く、毎週のように新商品を出すため、ささげ撮影の労力を軽減できるのは非常に魅力的なのである。

また、このサービスの導入でEC購入前の着用イメージが鮮明になるため、イメージ違いやサイズ違いが削減され、クライアントのEC部門返品率も下がっているという。孫さんは、「今後さらにECでの購入が拡大していけば、技術ももっと進歩するようになるだろう」と語ってくれた。

エンターテイメント性のある店舗「Apatech Digital Store」

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もうひとつのサービス「Apatech Digital Store」は、このバーチャルフィッティングの技術の一部を応用したデジタル店舗サービスだ。店舗ではまず、カメラで自分の身体を前後2枚撮影する。撮影された身体データはスマートフォンなど、自分の端末に保存される。その上で陳列されている衣類のQRコードを読み取ると、試着のイメージがスマートフォンなどに表示されるという仕組みだ。

デジタル店舗では、ディスプレイや自分の体を撮影するブースとカメラ、そしてサンプル用のアイテムが1カラー1アイテムずつ陳列されている。孫さんは、どちらかというとアパレルとしての店舗というよりは、エンターテイメント性を持った展示(ショールーム)だと語る。人件費や、陳列するアイテムが少なくて済み、店舗スペースの削減も可能であることも魅力的だ。

このデジタル店舗サービスは、日本でも今年の4月からブランド直営店や、百貨店、ファストファッションの店舗などと契約が進んでおり、コロナ時期を乗り越えると出店スピードを加速する店舗もあるという。EC販売を促進するための試み、ECを中心としていた企業が実物を展示するための試みとして活用されることも多いという。

ファッションの多様な体験を提供

こういったサービスは、意外にもウェディングドレスと相性がよいのだという。ウェディングドレスは着用が大変で在庫も少ない。そのため試着には、事前予約や店員さんの配置が必要になる。こういったアイテムだと特に、バーチャルフィッティングのメリットが大きいのだという。

他にも、流行りのファッションのお試しとしても機能しているのだと孫さんは語る。人気で入手しづらい服、SNSに投稿したい服、試着だけでもしてみたい服、そういった服をバーチャル上では気軽に手に取ることができるのだ。

また、異性の服を試着してみたい人も存在するという。TPOやジェンダーの問題など、好きな服の着用に踏み切れない理由を持った人たちはたくさんいる。これもバーチャルフィッティングのひとつの可能性なのかもしれない。

ファッションのきっかけを提供する機会として

このような先進的なサービスを打ち出してきたアパテック。そんな孫さんから見ると、アパレルセクターはデジタル化が遅れており、デジタルに対して巨額投資が行われていないのが現状であると印象を語ってくれた。ここには前例主義的な一面、つまり、どこかが前例を作らないとチャレンジをしないという点が根本にあるという。しかし、孫さんはこの点について前向きに捉えており、逆に先駆的に行うことで、業界全体を動かしていきたいとのことだ。

特に孫さんは、日本のファッションアイテムのクオリティを高く評価しており、中国をはじめ世界に発信していきたいとのことだった。そのうえで、バーチャルフィッティングは輸送費や関税といった障壁を乗り越える手段でもあり、海外ユーザーも試着できるのは大きな利点だ。バーチャルフィッティングの導入は、日本のメーカーにとって、長期にわたる渡航制限に勝つEC越境ビジネスチャンスを導くのではないかと孫さんは語っていた。

アパテックでは年内にアメリカとヨーロッパに子会社を設立、さらに事業を拡大していくとのことだ。最後に孫さんは、ファッション業界をめぐる現代の課題についてこのように語ってくれた。

バーチャルフィッティングなどのサービスが増えると、ビッグデータがどんどん蓄積されていきます。そうすると、どういった色、スタイルが人気なのか、徐々にわかっていきます。こういったデータをメーカー側にフィードバックさせていくと、販売予測の精度向上に大きなプラスとなり、サービスを展開する1番の目的になるでしょう。

アパテックのバーチャルフィッティングとデジタル店舗の試みは、企業にとっても、消費者にとっても、ファッションの可能性を開拓するきっかけとなりそうだ。このようなサービスが普及することによって、店舗のスタイルや消費スタイルがどのように変わっていくのか、今後の動向にも着目していきたい。

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