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女子高生による女子高生のためのレンタルサービス、Z世代「Nadie」の挑戦(後編)

現役女子中高生による、女子中高生のための会社──昨今のファッションビジネスにおいてZ世代の動向が注目されているが、そのZ世代が創業したのが株式会社Nadieだ。

Nadieは高校2年生3人が2019年9月に創業したZ世代企業で、今年2月に女子中高生向けファッションレンタルサービス「放課後マネキン」をローンチ。原宿でのポップアップ開催を経て、8月からはオンラインでサービスを開始する。

同世代向けのサービスを展開するNadieとはどんな企業なのか。Nadie代表取締役の古城栞さん、取締役の白井花さんのお2人にインタビューを実施、起業とサービス考案の経緯を伺った前編に続き、女子中高生のSNS事情やブランディングとマネタイズのバランス、これからのNadieの展望について聞いていく。Nadieのビジネスからは、現役女子高生ならではの感性を生かしたSNSの活用法と、Z世代向けサービスのありかたが見えてきた。

女子高生のトレンド発信メディアとしてのSNS運用

──NadieのInstagramはトレンド情報の発信が多く、サービス自体の紹介が少ないのが印象的です。

白井花・Nadie取締役(以下、白井):理想としては、Nadieのアカウントを女子高生のトレンド発信メディアのようにしていきたいと考えています。私たち自身がいま気になっていることや、いま女子中高生のあいだで流行っているものを発信していく場にして、フォロワーを増やしていきたいなと。

ポップアップ終了後は現在の方針で投稿を続けており、1か月ほど前から1日100人増のペースで推移しています。このアカウントきっかけにNadieに興味を持ってもらい、そこから「放課後マネキン」のユーザーになってもらえたら嬉しいですね。

古城栞・Nadie代表取締役(以下、古城):いわゆるまとめメディアのようなものはたくさんあると思いますが、投稿する内容が被ってしまうと面白くないじゃないですか。サービスへの入り口という側面はもちろんですが、私たち自身がInstagramの投稿自体を純粋に楽しんでいます。まずは私たち自身がいいなと思えるものを第一に考えて、これから流行しそうなものメンバーで見極めながら情報を発信しています。

──Instagramの投稿内容で気にしていることはありますか?

白井:色味が暗いもの、ダークなビジュアルなものは載せないようにしています。会社としても明るくて楽しそうな印象を持ってもらいたいので、色味の薄いものや白っぽいものをあげるようにしています。

トレンドはSNSから始まりSNSで終わる

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──どういった投稿が人気なのですか?

白井:ベージュや薄いグレーなどの単色くすみ色で全身を統一した“消えそうな色コーデ”が流行っていますね。あまりはっきりした色味のものよりも、ぼんやりしたスモーキーカラーのアイテム、コーディネートが人気です。

ほかにも最近は、“スモーキーカラー文具”というあわい色味の文房具の投稿が人気でした。これも見た目が可愛らしく、欲しくなるようなものなので拡散されています。Instagramでバズる投稿はビジュアルが可愛いものばかりなので、デザインや色は重要な要素だと思います。

──くすみ色のお話を聞いて、インスタメディアの「RiLi」さんを思い出しました。皆さんが発信している情報は誰がキャッチアップしてるのですか?

白井:私たちのほかにボランティアメンバーが6人いるのですが、その中にInstagramの流行に敏感なメンバーがいるので、その子に教えてもらいながら自分たちの好みを取り入れつつ投稿しています。基本的にメンバー内3人で投稿担当を回していて、今後SNS担当を増やしていく予定です。

──情報はどこから集めるのですか?

古城:情報収拾の手段は完全にSNSだと思います。トレンドもSNSから始まってSNSの中で終わるものばかりだと感じますね。テレビを見ていても、少し前にSNSで流行ったものが取り上げられているのでギャップを感じます。

同年代に共感してもらえるような発信とオフラインの価値

──ほかに企業のイメージづくりとして意識されていることはありますか?

白井:よく起業してると言うと、同年代からは驚かれたり褒められたりもするのですが、私たち自身も普通の女子高生です。Nadieの活動は特別なことではないと思ってもらいたいので、できるだけ身近に感じてもらえるような発信を意識していますね。

古城:私たちはあくまで同じ世代であることが強みだと考えています。なので、背伸びし過ぎずに、共感してもらえるように活動していけたらと思っています。

──いわゆるファッションリーダーのような牽引する存在としてではなく、一緒に楽しんでいく存在を意識しているということですね。SNSはどのように使い分けているのですか?

白井:基本的には、Instagramを中心に活用しています。Instagramだと中高生を簡単に見つけられるのですが、Facebookなどではあまりうまく繋がれません。また、ビジュアルの方が中高生には伝わりやすく、テキストベースのTwitterとの相性はあまり良くありません。なので、FacebookとTwitterは、新規メンバー募集やポップアップ開催情報など、Nadieの活動内容を発信する場にしていこうと思っています。

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──今後オンラインでサービスを展開していくわけですが、オフラインイベントなどの施策は計画していますか?

古城:8月にイベントを開催する予定です。2月のポップアップを通して、オフラインの強みをあらためて実感しました。来てくれた子たちと仲良くなれたり、Nadieきっかけでユーザー同士で仲良くなったりと、コミュニティが生まれていくのがとても嬉しかったので、その環境は残しておきたいですね。サービス自体はオンラインに移行しますが、つながりを作れる場としてオフラインイベントは定期的に開催していければと思います。

──やっぱり、オフラインの方が関係性が深まりやすいという認識なのでしょうか?

古城:それは絶対にそうだと思います。

古城:上の世代と比べると、オンラインに対する親和性は高いのかもしれませんが、中高生世代は、それぞれ切り分けて考えているというより、その両方からつながりを深めているのだと思います。

等身大の「女子中高生」という価値とマネタイズとの両立

──自分たちの手の届く範囲で等身大のサービスを維持していく方針と、事業規模を拡大してマネタイズを目指す方針の両立は難しいのかなと思います。今後はどのような方針でNadieを経営していくのですか?

古城:私たちのレンタルサービスは、収集した女子中高生の生のマーケティングデータを提供することで、企業やブランドから商品を提供していただいています。また、ユーザーが利用した服をSNSに投稿してくれるため、企業・ブランドのプロモーションを促進する機能もあわせ持っています。それらを条件に商品の無償提供やリースを受けていますが、利益を産むことの難しさにいままさに直面しているところです。今後は、サービスの独自性を生かしながらマネタイズを意識していければと考えています。

白井:女子中高生が主体となって運営してる株式会社という存在はレアなので、ビジネスモデル自体に価値があると考えています。なので、中高生だけで運営していく方針は崩さずに、このビジネスモデルで利益を産んでいけるようにしたいですね。

──拡大するにあたって、さらにメンバーを増員する予定はありますか?

古城:ボランティアに参加してくれるメンバーには、「放課後マネキン」のサービスを無料で利用できるようにしたりと、いくつかインセンティブを設定してます。これまでの経験上、ボランティアだからといって責任感が薄くなるという印象はありません。中高生は学校以外のコミュニティーがあまりないため、Nadieの活動を純粋に楽しんでくれている部分もあると思いますね。

──チーム内でスキルやノウハウはどのように共有しているのですか?

白井:5〜6月頃に新規メンバーが入ったのですが、いままでチームマネジメントなんてやったことがなかったのでとても大変でした。わからないことだらけでしたが試行錯誤の結果、最近ようやくチームとして動けるようになっています。

古城:現在は、Google MeetやSlackを活用しながら業務の進め方などを共有しています。最初は細かいところもバックアップが必要だったのですが、最近は自発的に行動してくれるようになったのでとても助かっています。

歳を取らずに女子中高生にアプローチし続ける会社に

──現実問題としてお2人は来年卒業されるかと思いますが、これからどのような立ち位置でNadieの経営に携わられるのですか?

古城:私たちはNadieを女子中高生の会社、歳を取らない会社にしたいと考えています。これから私たち自身が女子中高生の流行に疎くなっていってしまうので、今後はどんどん下の学年のメンバーを入れていける仕組みを作れたらと思います。

白井:来年までは経営の中心として続けていこうと思っています。徐々に下の学年で固めた運営体制に移行しながら、私たちはチーム管理やマネジメントの役割で関わっていこうと考えています。

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──最後に、今後の展望をお聞かせください。

白井:具体的に言えば、中学校・高校と連携した講演会やワークショップを実施していきたいですね。みんなの課外活動の場として、Nadieであれば安心して任せられると各学校に認めてもらうことが夢です。

古城:私たちは「女子中高生の枠を超える」というビジョンを掲げています。私たちでもできること、私たちだからこそできることを探しながら、中高生のいまを私たちは頑張っているので、この存在をなくしたくありません。

Nadieのメンバーが興味を持っていることは、ほかの同年代の人たちににとっても興味あることだと思います。これは大人には捉えきれないはずです。これからも等身大の目線から女子中高生向けのサービスやイベントを作って、女子中高生にアプローチし続けたい。この思いを留めながら、中高生のロールモデルのような存在になれればいいなと思っています。

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2人のインタビューから見えたのは、「女子中高生の枠を超える」というビジョンにかける想いの強さだった。自身が流行に疎くなっていくという認識からも、あくまで等身大であり続けようとする真剣さが伝わってくる。

それでいて楽しそうな様子が印象的だった。ユーザーに寄り添いながら、共にサービスを育てていくNadieのあり方は、Z世代型ビジネスの1つのモデルケースになり得るのかもしれない。

Text by Naruki Akiyoshi

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