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布スピーカーでクラファンに挑戦中、ファッションテックデザイナーOlgaの思想と戦略

ファッションテックという言葉が現在ほど注目される前から、ファッションとテクノロジーの融合を実験的に推し進めてきたデザイナーがいる。それが、10年近くファッションテックデザイナーとして活動してきたOlga氏だ。

ファッションテックの領域を牽引する彼女の最新の挑戦が、「音を着る」布状のスピーカーの普及。現在、モック作品となるパーカーを提げ、クラウドファンディングに挑戦中だ。今回は、彼女のファッションテックへの思想とともに、「布スピーカー」プロジェクトについて語ってもらった。

Olga
ファッションテックデザイナー / 株式会社 ish 代表取締役
デジタルハリウッド大学大学院 助教
メディアサイエンス研究所 杉山知之研究室 研究員
ファッションテックラボ主宰

ロンドンの大学院にてファッションとテクノロジーの関係性を独自に学び、帰国後ファッションブランドEtw.Vonneguet(エトヴァス・ボネゲ)を立ち上げる。デジタルハリウッド大学大学院メディアサイエンスラボ助教に就任、同大学院ファッションテックラボ主宰。 国内だけでなくプリンストン大や文化ファッション大学院大学の留学生に向けても教鞭をとる。様々な企業のウェアラブルデバイスデザインや研究開発などを手がける、ファッションテックとデザインエンジニアリングに特化したデザイン会社ishを設立。​

▶︎主な受賞歴
総務省 異能ベーション ジェネレーションアワード部門 企業賞受賞 
経済産業省NEDO TCP 審査員特別賞を受賞。
デジタルハリウッド大学教員表彰受賞。
DIGITAL FRONTIER GRAND PRIX 「HEATER PARKER」ベストアイデア賞、CCCプラチナスポンサー賞受賞

ファッション×テクノロジーの世界との出会い

ーーファッションテックデザイナーとしての経歴を教えてください。

私はもともと文化学園大学の出身なのですが、そこで普通の服作りに疑問を感じていました。その当時はAdobe Illustratorが授業にも導入され始めた頃でしたが、まだ手でパターンを引くというのが主流。でも、イラレで直接すぐ引くことができる。それで、テクノロジーがファッションを変えていくと感じ、もっとテクノロジーとファッションの融合を勉強したいと思いました。でも、日本だと教えてくれる学校がなく、大学院でLondon College of FashionのFashion Design and Technologyというコースに進学しました。そこからずっと、ファッションテックに関する研究をしています。

修士号を取得して日本に帰ってきたとき、3Dから2Dにパターンメーキングを生成するというソフトウェアを作っている会社と一緒に、デジタルファッションショーというものをやりました。現在、話題のCLOは2Dから3Dという考え方ですが、当時使用したLSXというソフトは3Dから2Dという展開で、頭の中に3Dのイメージを作り上げるデザイナーらしい考え方で使えるものでした。それで、クロスシミュレーションという生地の特性をCGに反映させるという表現をし、東京コレクションに出ました。

当時はファッションテックという言葉はまだなく、ファッション業界の人に見せてもポカンとさせてしまって(笑)そこでファッション業界でテック系を前面にだすのは、あまり良いアプローチではないと気がつきました。それからは服が前面に出るようにして、裏側はテックで作られているというようしていきました。

渋谷のパルコが一時休業するときに自分のお店も一旦閉め、その頃からウェアラブルデバイスのデザインを担当するようになりました。そこで、柔らかいエレクトロニクスをどうやってファッションに、服のなかに落とし込むかという仕事やり始め、脳波計測ができるヘアバンド、ハプティクスを使ったベストといったプロジェクトに関わりました。その事業を法人化したのが、今のish.incという会社です。

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ーーファッションテックという領域が注目を集め始め、求められる役割に変化を感じますか?

自分がデザイナーとしてやっていることは、ずっと変わらないんです。導電糸や導電性接着剤も、服作りをするときに今までは布や糸、ファスナーだったものが、新しい服を作るための要素が増えたというだけです。それらを取り扱うために、デザイナーとして考えておかなくてはならない、知っておかなくてはならないことを毎回、勉強して取り入れていく。面白い研究をしている人には、自分から会いにいくというスタイルです。

「音を着る」布スピーカーへの挑戦

ーー今回の布スピーカーの開発のきっかけは?

産業技術総合研究所って、めっちゃ面白いんですよ。見せ方は専門用語が多くてとっつきにくいですが、面白い研究が多い。そこの展示会で、開発者の吉田学さんと何度もお会いして、ものすごく感動しました。でも正直なところ、服の領域でこの技術を使うのはもったいないなと思っていました、オーディオ業界で開発が始まるんだろうなと。でも3年くらい進展がなく、だったらと名乗りをあげました。

ーーこの技術を広めるのには、服というのは良いきっかけだと?

布スピーカーを最も売れるようにするなら、服ではない方が良いと思っています。それこそ、オーディオ機器としてアプローチした方がいいかもしれない。でも、ファッションのずるいところは、ファッションにすると派手なんですよ。そして、アイコン化するんです。だから、まず最初に作るのは自分も一番得意な服だろうと。そして次にやるとしたら、イヤホンかな、でもそれは服に比べたら小物なので、技術はダウングレードすることはできる。だから、先に服をやってみようかなって。

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ーー技術的には、どういったものなのでしょうか?

今の構造は芯地みたいなものです。まだモック状態で、このパーカーは1週間くらいで作りました。今回はフードの形に合わせて布スピーカーを作りましたが、大きさや形は変えることができます。織ったり編んだりも技術的には可能なので、今後試そうとは思っています。この開発者はもともとセンサーの研究者で、今はスピーカーとして使っていますが、センサーとしても使用可能です。なので、クラウドファンディングでやろうとしているファッションインスタレーションでは、音が出る空間に入るのではなく、音を操作できる空間を作りたいと思っています。

スピーカーとして出してるのは、あくまでフックです。音楽とファッションってフックになりやすいし、クラファンはBtoCで展開した時のテストマーケティングです。どんな人が面白いと思ってくれるか、興味をもってくれるかを、この2ヶ月間で計測しています。

ーー制作において、難しかったところはありましたか?

服づくりとしては、特にはなかったですね。どうやったら普通の服にみせることができるかという点で技術的に補いたい部分はあって、特にエレクトロニクス自体への知識が必要だとは思いました。パーカーにするというのは、最初からありました。安易な考えだなとも思ったのですが、どこまでひねったらいいかというのが難しくて。私が今ここで、この世にまだないアイテムを作っても抵抗感があるでしょう。まずはパーカーというアイテムとして浸透している服の形状のなかにいれる必要があると思いました。

みんながすぐ着て使えるという、その距離の詰め方が大事だと思います。ZOZOさんもZOZOスーツを無料で配布していましたが、それがすごい大事なんです。新しいテクノロジーは距離を詰めるのが難しくて、研究機関のwebサイトとか見てもすごく遠いものに見えてしまうのだけど、そこをぐっとファッションの力、デザインの力で、これ着たら楽しくない?というところまで持っていくのが重要。それが、ファッションデザイナーが今までやってきたことでもあるし、テックを使ったときのインテグレーションができるということが、ファッションテックデザイナーとして必要な考えなんです。

クラウドファンディングへの挑戦

ーー今回のクラウドファンディングの目的は?

布スピーカーを使ったファッションインスタレーションを実施することです。傍観者ではなく、参加者として、インタラクティブに未来のファッションと音楽体験をしてほしいと思っています。パーカーのままでの商品化は現段階では考えておらず、もっと固く売っていく必要があると、そこはシビアに考えています。なので、リターンのなかは企業向けのものがあって、共同研究先も募集しています。パーカーはあくまでもフック、派手なパフォーマンスのひとつです。

今、達成率が48%くらいです。近日中にクローズするわたしのブランドのアイテムを福袋としてリターンに追加提供する予定です。将来的には小売のファッションブランドはどんどんなくなっていくと思っていますが、わたしの新しい挑戦として今までのお客さんと一緒に未来を創っていきたいという気持ちがあります。

ーー現時点での支持層はどんな感じなのでしょうか?

完全にテック側の人たちですね。ファッション系の人はクラファンに馴染みがないこともあって、なのでテックと音楽という打ち出し方をしています。

ーー今後、ファッションテックのプロダクトはどのように広まっていくと考えていますか?

ファッションテックという言葉がなくなったときが、本当に大切なときだと思っています。今のファッションテックという言葉は、ファッションのなかに収まりきらなかった革命がファッションの上にコブみたいに小さな領域としてできている。それは、ファッションの人たちがハンドリングできなかったから。それが、ちゃんとファッションに吸収されて、魔法みたいなことが普通の服で起こるようになったときには、ファッションテックという言葉は必要なくなる、そんな日が来るだろうって思っています。そうなった時に、プロダクトが完全に民主化する。その先では、ファッションとAIとIoTを掛け合わせて、自分にしかできない1着に挑戦したいと思っています。

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今回のクラファンをきっかけに、YouTubeチャンネル「ファッションテックラボ」を立ち上げたOlgaさん。デザインを通じて、そしてこういった教育活動を通じて、新しいテクノロジーを私たちの生活に浸透させるということに挑みつづけています。(今回のインタビュー収録も、YouTubeで撮影されました!) 私も布スピーカーを搭載されたパーカーを試着させてもらいましたが、イヤホンとも違う、布に包まれるように音に包まれる不思議な感覚を味わうことができました。ただ音を聞くという慣れしたしんだ行為であっても、布を纏うということでまた違った感覚を味わえる。柔らかいエレクトロニクスの可能性を、改めて感じる体験でした。(聞き手= Yoko Fujishima)


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ZOZO研究所では、ファッションに関する研究を行っております。
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