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合成素材に代わるバナナの繊維素材「バナナテックス®」を開発したバッグブランド

QWESTION(クエスチョン)は、2008年に設立された、スイスのチューリッヒとオーストリアに拠点を置くバッグブランドだ。現在バッグ業界を支配している合成素材に代わる素材のために、フィリピン産のバナナの木アバカの繊維を用いたBananatex®(バナナテックス®)を開発・提供を行う。

現在バナナテックス®は、クエスチョンから事業を切り分けスピンオフ企業として、H&Mをはじめとした企業への資材提供も行っている。

今回、同社の共同創業者かつ現CEOであるHannes Schoenegger(ハネス・シェネガー)氏に、素材開発の経緯と、バナナテックス®の生産方法についてインタビューを行った。

① 求め続けた天然繊維

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「東京でもロサンゼルスでもパリでも、街で見かけるバッグの約8割は、プラスチック由来です。そして、プラスチックは全体の7-8%程度のみがリサイクルされています。つまり、大半のプラスチックは、廃棄された後、埋立地や海など、私たちが望まない場所に渡ってしまっています。そこで我々はこの実情を悪化させない、良い方法を模索しました。我々にとってより良い方法とは、天然繊維をベースにしたテキスタイルを使用することでした」とシェネガー氏が話すように、クエスチョンは創業以来、機能的かつタイムレスな植物由来の素材でバッグを生産・販売している。

バナナの繊維は、強靭かつ弾力性にも優れていたことから、バッグへの使用に望ましく、さらにアジアを中心とした短いサプライチェーンの構造を実現できたことから、バナナ繊維をベースに開発パートナーと共にバナナテックス®の生産を開始した。

② 業界に布地を提供するBananatex®の設立

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2018年からはより一層業界に「インテリジェンスを提供し、ポジティブな変化」を起こす目的のもと、バナナテックス®事業を切り分けスピンオフ企業Bananatex®を設立した。

現在、Bananatex®は、クライアントとなる企業の要望に合わせて、共同開発を行う、ないしは、素材自体をそのまま提供する役割を担っている。

2021年に発表されたH&Mとのコラボレーションプロジェクトでは、Bananatex®の自社コレクションにも使用された生地を用いたスニーカーが発表・発売されている。

③ 現在の課題とこれから

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他方でこれまでに、企業から2000にも及ぶ要望や連絡を受けたものの、使用に漕ぎ着けた事例は少ないという。「興味を持っていただいた企業の半数は、バナナテックス®の価格に対応できずに、使用を見送ることとになってしまいました。現在、1ヤードを$3-4のポリエステル地あるいは、$7-8のコットン地、$12-14のオーガニックコットン地を使用している企業にとって、$20-25もするバナナテックス®は、現状の価格構造では使用が難しいからです」とシェネガー氏。

サプライチェーン内で発生する多くの手作業に対し、見合った対価を支払っているゆえに、同社の製品は市場の製品に比べて価格が高く設定されているという。

同社はこれからも現在の業界を支配している合成素材に変わる有効な素材を提供を持続していくとし、2022年の上半期には新たなコラボレーションを発表予定だという。

「私たちが行ってきたことは進化の過程であり、これはその一歩だと言えます。これからも私たちは常に改善を続け、学び続けていきたいと思っています」

バナナテックス®を用いたバッグは日本のストアでも多く取扱いがある。これを機会に、ぜひ手にとって素材を触ってみてほしい。

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