EC化が進むアパレル。なぜD2Cブランドは実店舗での販売に力を入れているのか
今、ファッションの小売システムがガラリと変わり始めている。
実店舗での販売や中間業者を通して販売することが一般的とされていたが、SNSの普及に伴い、2017年には米国で小売店舗の約7,000軒が閉鎖。代わりに、オンラインで販売するD2Cブランドが増加している。
しかし、SNSを通してオンライン上で商品を売っているD2Cブランドも、実店舗の展開や期間限定のポップアップ店舗の出店を考えるケースが増加しているという。中でも、今世界中で注目されているのが、D2Cブランドを集めたセレクトショップだ。
今回は、D2Cブランドを集めたセレクトショップについて紹介し、これからのファッションの小売販売について考えていく。
Re:store(リストア)
2019年8月、実店舗を持たないD2Cブランドだけを集めたセレクトショップ「Re:store」がサンフランシスコに登場した。
実店舗を持たないニッチなブランドを顧客に近づけるという目的のもと、全70ブランド、1000以上もの商品を取り扱っている。取り扱いジャンルは、ファッション、化粧品、アクセサリー、健康、テクノロジー、食品、ホームブランドと幅広い。
Image Credit : Re:store
出店ブランドには、ロンドンのファッションブランド「House of sunny(ハウスオブサニー)」や、H&Mから生まれたアパレルブランド「& Other Stories(アンドアザーストーリーズ)」、パリ生まれのアパレルブランド「Sezane(セザンヌ)」、発展途上国の生産者を支援するジュエリーブランド「SOKO(ソコ)」などInstagramで人気のブランドだ。
従来の卸売モデルの代わりに、毎月20%の販売手数料と出店費用350ドル(日本円で約38000円)を支払うビジネスモデルを採用。
ブランド側にとって、市場価値の高いサンフランシスコでの出店は高い家賃を払わなければいけないという難点があったが、このビジネスモデルによって気軽に出店できるようになった。また、敷地内にはコミュニティワークスペースがあり、ブランドの世界観や商品詳細を伝えたりと仕事や顧客と交流できる仕組みになっている。出店待ちのブランドは2000を超えるなど、今注目の店舗だ。
Image Credit : Re:store
246st MARKET(ニイヨンロク ストリートマーケット)
更に日本でも、大手アパレルの株式会社ワールドが、D2Cブランドを集めたポップアップ型百貨店「246st MARKET」を今年9月に期間限定で開催。
Image Credit : 246st MARKET
作り手と買い手を繋ぎ、ブランドを設立したばかりの若手デザイナーに必要なサービスを提供した。
コンセプトはサステナビリティで、環境への負担とコストを抑えた商品を販売。店内のインテリアも、再利用可能な素材を用いて制作された。また、デザイナーのトークショーやライブイベントにより、商品を販売するだけでなく若手クリエーターの想いが詰まった空間を演出した。
出店ブランドは、全13ブランド。日本の伝統技術を取り入れ、サステナブルなジュエリーを販売する「matlor®(マトラー)」や、サイズとデザインの完全オーダーメイドのハイヒールブランド「gauge(ゲージ)」、折形礼法からインスピレーションされた結婚指輪と小冊のセットを販売している「iwaigami(イワイガミ)」など。
D2Cブランドらしく顧客の細かなニーズに応え、世界観を確立しているものが多い。
ファッションの小売はどうなっていくのか
実店舗を持ち、在庫を抱えながら服を売るのが当たり前だった時代から、Instagramで簡単に服を売れるようになった現在。消費者も在庫リスクにとらわれて無難な服ばかり置いてある実店舗よりも、個性的な服が買えるD2Cブランドを自然に求めるようになった。
しかしそんな人気を博しているD2Cブランドが注目しているのは、実店舗だという。
デジタル化が進み実店舗ではなくECでの販売に力を入れてきたアパレルブランド。しかし、実店舗で消費者とフィジカルに接点を持つことがゼロになることはないのかもしれない。実店舗はオンライン上では伝えきれないデザイナーの思いや、商品の世界観を伝えるための手段の一つとして捉え、実店舗とECを区別するのではなく融合しながら、消費者が求めているものを適切な場所で提供できることが重要になっていくだろう。
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ZOZO研究所では、ファッションに関する研究を行っております。
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