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yutoriがつくりだした私たちの場所:SNSでファッションをビジネスにするには?(中編)

昨年、ZOZOグループにジョインした株式会社yutori。そのミッションは「臆病な秀才の最初のきっかけを創る」というもので、ストリートをオンラインでプロデュースしている。統括する社長は弱冠27歳の青年、片石貴展氏だ。古着に特化したInstagramメディア古着女子を皮切りに、現在までに古着男子というInstagramメディアのほか、数種のブランド等、ビジネスを拡大し続けてきた。

片石氏に話を聞くと、「SNSによるファッションの民主化」、「リッチな体験としてのオフライン」、「弱さを出せる会社」、「ロマンとそろばんの両立」など、興味深く現代を読み解く視座と経営論を語ってくれた。yutoriとは何か?片石貴展とはどんな思想の持ち主なのか?今回は彼へのインタビューを通して、その真髄に迫っていきたい。

スタイルや思想の伝道者として

ーー SNSとファッションビジネスの親和性についてどう考えてますか?

切っては切り離せないんじゃないですか。やっぱりSNSがやったことっていうのは個人の民主化っていうか、持たざる者でも何かを投稿したらそれを必要としている人に届くっていうことだと思っています。それがインスタならインスタのアルゴリズム、それはインスタの哲学とか思想に紐づいてるものだと思うんですけど、過去のSNSの思想に基づいてアルゴリズムが組まれて、それが知らない人に届く。

昔だったら大手のアパレルから独立して、バイヤーさんに買ってもらって卸して、卸しが7〜8割くらいで、その卸された店舗の中でブランドを知ってブランドのインスタをチェックして、濃いファンの人は直販で買ったりとかそのブランド自体の展示会に来たりっていう流れだったと思うんですけど、そこを全部すっ飛ばして、お客さんに直接商品を届けられる、いわゆるD2C的な思想ですけど、それはすごく大きな革命だと思ってますね。

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ーーもっと個人にダイレクトに届く、ということなんですね。

やはり前者の構造でやっているために、従来のアパレルビジネスが厳しいっていうのはあると思っています。バイヤーさんに認めてもらうためにかっこいいものを作らないといけなくて、かっこいいものを作ると原価率が上がって、でも結局卸しだから利率は低くて、かっこいいものを作ってるのに取り分はめちゃくちゃ少ないみたいな状況だったのがこれまでのブランドのあるあるですよね。

でも、別に無理にそのバイヤーさんやいわゆるファッション的なヒエラルキーの中でその位置が高い人に向けて服を作らなくても、お客さんが直接楽しんでくれるようなポップなものを作ればむしろそっちの方が広がるし、もしかしたら利益率的にもいいかもしれない。ファッションの今までのビジネス構造、特に独立する人がどうやってブランドを大きくしていくかっていうその道筋の順番とかやり方を大きく変えたのがSNS、D2Cだと思ってます。

ーーその中でSNSの投稿で消費者個人が楽しめるように意識していることはありますか?

ブランドによって結構変えています。9090sだったら役に立つ情報ってよりかはブランドの思想とかを割と直接に出していくような作品とかルックが多くて、それはストリートブランドだからそのようにやっています。Spoonは逆にストリートとはちょっと違うので、着回しやいわゆる雑誌的に役に立つようなコンテンツを混ぜながら運用してますね。なので、ターゲットと自分たちのブランドの思想的なものと、どうやったらインスタが伸びるかっていうインスタの中のアルゴリズム、この3つを結構考えながらバランスを取って投稿していますね。

ーーオリジナルアイテムの生産環境はどのように選定されたのですか?

これを作りたいから紹介してくれって1個1個泥臭く探していったって感じですかね。カットソーだったら国内と中国背景のものがあって、布帛だったら基本中国みたいな感じで、その商材ごとによって生産背景を分けてやってます。ただもっとこれは強化していきたいんで、この記事を見てる人で知っていたりやっている人がいたらコンタクトしていただきたいという感じですかね。

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ーー古着アイテムはどこから仕入れていますか?

古着は委託販売です。大阪や国内の卸し倉庫さんと委託でやらせていただいてます。

ーー SNSで来るリアクションは、製品作りや仕入れのセレクトにどういう風に反映してますか?

もちろんユーザーさんの投稿を見たり、どういった人がどういうニーズで僕たちの服を楽しんでもらっているのかは見ているんですが、逆にいうとそこだけを意識しすぎないようにしています。やっぱりブランドっていうのはお客さんに思想とか生き方、それはこういうスタイルで自己表現するといいよねっていうことを、伝えたり導いていくような役割もあると思うんですね。

ーーニーズを反映するだけでなく、提案をするというか、伝道者のような役割なんですね。

今お客さんが興味あるものだけを作っちゃうと、それって導いてはないっていうか。それは、ブランドの思想というよりかはメディアの思想に近いかもしれません。「これが役に立つから読んでください」っていうようなものに近いと思います。ブランドってどっちかというと本来的にはエゴイスティックなものじゃないですか。なのでお客さんの見ているものとか身にまとっているものも意識するんですけど、その上で一歩先の提案をしたい、知らないものを見せてあげたい、っていうのはyutoriで今展開しているどのブランドも結構意識していることではありますね。

リッチな体験としてのオフライン

ーーリアルなイベントも開催されてますが、ファッションにとってコミュニティの重要性は何だと思いますか?

エンゲージメントを強くするというか、濃いファンになってもらう、ブランドの思想とか哲学を本当に立体的に体験できるような場所がオフラインだと思っています。今までってその逆の順番だと思ってて、要は店舗に行って流入してこの服いいじゃん、このお店いいじゃん、こういうブランドなんだって、オフラインからオンラインに導線があったと思うんですけど、今ってみなさん完全に知ってるお店に行くじゃないですか。オンラインでインスタで探してていいものを見つけて、これここの店舗でやってるんだ、こういうイベントあるんだってイベントに行く。

でも、オンラインで伝えられる情報ってめちゃくちゃ少なくて、特にインスタだと正方形の、数センチメートルくらいの画面の情報量じゃないですか。それを見るのと場所に行って360度空間があって体感するのって全然違うと思っていて。やっぱりもっとブランドのファンになってもらうとか、ブランドのインスタでは表現しきれない部分を表現するための場所が今オフラインになってるかなって思います。

ーー日本や世界でのファッションにおけるOMOはどのような状況なのでしょうか?

韓国のADER ERROR(アーダーエラー)とかはお店にかなり投資していると思います。最近はオンラインで知ってからオフラインに行くと思うんで、韓国のブランドとかはそれを意識して店舗づくりをしていますが、日本はまだそれが全然できてないんじゃないかなって思ってますね。日本は今までの大量出店で、という旧来の流れを引きずった店舗の作りが多いんじゃないかな。

ーーyutoriは日本でその先駆的な取り組みをされているんだと思います。その時、リアルな場とSNSの場の使い分けはどのようにされていますか?

リッチな体験を提供していくのがオフラインかなって思っています。もっと具体的にいうと、例えば店舗やるんだったら土日だけにしようかなとか思ってて、アイテムを発売したらその会場限定カラーを例えば休日限定で出したり、要はインスタの中のオンラインのコンテンツをさらに立体化させたり最大化させていくための仕掛け装置としてオフラインがあるのかなって思っていますね。

ーーハッシュタグも場づくりの一種だと思います。「古着女子」やハッシュタグがコミュニティを拡大している要因の一つだと思いますが、これが拡大している理由は何か、そしてみんなが何を求めていると思っていますか?

難しいんですけど、下北が1個ヒントなのかなと思います。渋谷や原宿の様々な人がミックスされている感じと違って、下北は1個の集合体になっているというか、それくらい古着を着ているコミュニティっていうのは統一性があって、かつ1個の場所にまとまるっていうのがやっぱ街を見ているとわかると思っています。それが何でかはちょっとわからない、難しいですね。でも、いわゆる「街」も特色のあるコミュニティだと思っていて、「古着女子」が拡大していったヒントがそこにあるのかなって思ってます。

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後編では、ブランド作りにおける古着をディグる感覚との共通性、またyutoriのビジネス論やこれからの展望をお聞きしました。お楽しみに!

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