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あのブランドはなぜ消えた?「O2O(ECと実店舗の融合)」戦略が中国アパレル市場の勝敗を分ける

中国アパレル業界の有名ブランド「真維斯」が苦境に!

中国のアパレル業界において、驚きのニュースが発信された。中国アパレル業界の有名ブランド「真維斯(ジンウェスト)」のオーストラリア法人が破産申請手続きに入ったという。しかし、それは突然のことではなく、真維斯は2013年から、中国本土の2500店舗の約半数である1300店舗を閉店していた。

社員のリストラもすでに6500名にのぼり、そのインパクトは中国のアパレル業界に衝撃を与えている。店舗の雰囲気やデザインは、日本の「JEANS MATE(ジーンズメイト)」と類似している。皮肉にも、真維斯もジーンズメイトも、どちらとも苦戦を強いられており、オンラインに力を入れているのも共通点である。

バカ売れした有名ブランドに何が起こったのか?

真維斯は、もともとオーストラリア発信のブランドである。90年代に中国のバイヤーがこのブランドを買収し、中国市場でブランドを展開するようになった。その後、順調に発展し、特に当時の中国はジーンズブームだったこともあり、ブランドの主力商品でもあったジーンズ製品がバカ売れ。中国のアパレルブランド代表の1つまで急成長した。そして2002年には、売上は日本円で換算すると215億円(2020年4月9日現時点レート)を記録する。しかし真維斯は、その後なぜか失速していった。

リーズナブルなだけの服では若者の食指は動かない

真維斯が失墜した根本の原因は3つあると考えられている。

1つ目は「ユニクロ」「ZARA」などのファストファッションによる快進撃。2つ目はECを過小評価しすぎたこと、3つ目は実店舗におけるビジネスモデルの陳旧性である。

真維斯の急成長は、中国の経済高度成長に乗っかっている部分が大きかった。当時の中国市場は海外アパレル企業が進出する前で、いわば競争相手のいない未開拓の市場、ブルーオーシャンであった。しかしその後、ユニクロ、ZARAなどの国際ブランドが続々参戦。そのブルーオーシャンに多くの競争相手が侵入、レッドオーシャンに変化し、その時点で真維斯は、“センスが良く値段もリーズナブル”な国際ブランドと戦うような体力と実力はなかった

また真維斯の敗因の1つは、ECの成長や普及を過小評価していたことにあるとも考えられている。真維斯は当初オンラインストアを、“より多くの顧客により多くの商品を販売する”のではなく、 “売れ残った商品を在庫処理するため”のツールとして考えていた。その当時オンラインで購入できるものは、シーズン外れや売れ残りの商品が中心だったのだ。

また、各アパレルが続々とオンラインとオフラインの融合を探索している中、真維斯はそこに手を付けず、遅れをとったことも大きな要因と言われている。

オンラインと実店舗の融合はもはや当たり前

ファッション業界におけるオンラインとオフライン(実店舗)の融合とは、例えばこういうことである。

顧客は自宅のP Cでじっくりと商品を選ぶ。その後試着をするために店舗に行き、気に入ったらそのまま店舗で商品を購入することもできるし、まだ迷うようなら商品コードをスキャンしショッピングカートに入れておく。そうすれば帰宅後に家でじっくりと買い物を検討できるほか、オンラインで購入することができる。逆に店舗で受け取れば送料も不要になる。

このように、オフラインとオンラインの欠点を補完し合うことで、顧客のニーズに答えることができるのだ。

このようなオフラインとオンラインの繋がりを「O2O」と呼ぶのだが、このビジネスモデルに力を入れている中国本土ブランドにGXGがある。

GXGでは昨年の「独身デー」という11月11日に行われる、1日で5兆円を売り上げる一大ECセールイベントに合わせて、オンラインとオフラインリアルキャンペーンを実施。「独身デー」の前に消費者が中国全国にある163店舗で試着行い、お気に入りのアイテムを選び、一部前払い金を支払う。そして「独身デー」当日(この日は各ブランドがタオバオにおけるEC店舗で大々的セールイベントを行っている)、残り残額をオンラインで支払えば、店舗から直接商品を受け取ることができる、当然配達希望であれば、配達も行うというもの。

結果的に、GXGは「独身デー」だけで2.55憶元を売上げ、前年度の「独身デー」の売り上げ(1.65憶元)と比べ、55%の売り上げを伸ばしていた。

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Image Credit : Meters bonwe

また、中国の有名ブランド「Meters bonwe」では、オフラインの顧客をオンラインに誘導するために、「生活体験店&Meters bonwe App」のキャンペーンを中国本土の6店舗で実施。店内では高速WIFI、タブレット、コーヒーを顧客に提供し、くつろぎながらタブレットで店内の商品をオンラインで見ることができるようにした。

さらに試着を希望する顧客にはその場で服を用意するなど、今までオンラインショッピングに慣れていない顧客に対して、オンラインの便利さとオフラインを組み合わせたショッピングのあり方を体験させたのだ。

もちろん日本のブランドも負けてはいない

図3

Image Credit :https://travel.ulifestyle.com.hk/

日系ブランドでは例えば、中国で700店舗以上を展開するユニクロ。オフライン店舗で積極的に定期キャンペーンを実施するほかに、オンラインではいち早くPOSシステムを導入することで、オンラインとオフラインをつなぎ、顧客の利便性を上げてきた。

オンラインで注文し、オフラインの実店舗において送料無料で商品を受け取り、似合わないと思えば、その場で返品すればいい。またクラウドPOSレジを用いることで在庫管理、人員配置管理全てデータで可視化。いち早く対応策を打つことができるようにした。

O2Oがアパレル業界において必須の販売スタイルに

GXG、Meters bonwe、ユニクロなど、顧客獲得に成功しているアパレル企業を見ていると、O2Oは、中国のアパレル市場を生き残る上で欠かせないものとなっていることが分かる。

ECが急速拡大している中国では、2013年だけで、中国本土の6大アパレルブランド合計2000店舗以上が閉店に強いられている。その背後の原因はオンライン消費に慣れきった中国の消費者が多数いるからだ。となると、実店舗だけで努力しても、なかなか中国の消費者は呼び戻せない。「モノ」から「コト」へ消費を実現させるためには、O2Oのビジネスモデルが大きな役割を果たす。

ECの普及が実店舗において脅威であるというのはそりゃそうだろう。だが、実店舗がなくなってしまってはそれも困る。試着したい人もいるだろうし、質感を確かめるにはやはり実店舗で実際に触ってみたい。そこでO2Oだ。ECと実店舗、お互いの得意分野をうまく融合させ、弱点をフォローしていくとこが、今後のアパレルにとって重要になりそうだ。


文・ 叶 志強 編集・安田光絵

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