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思想をフットウェアに変身させるOAOのクラフトマンシップ、テクノロジー

コロナ禍の影響もあり、一層に需要が高まるEC販売。ただ、衣服のEC販売には課題も多い。特に問題となるのが、試着ができないことだ。この対策としてバーチャル試着やAR技術などが使用されているが、まだまだ普及しているとは言い難い。

こういった状況に対し、先端テクノロジーを活用しながら挑戦する日本のブランドがある。2020年春にローンチしたばかりのフットウェアブランド「OAO」(オーエーオー)だ。OAOはどのようなソリューションを提供しているのか、またその背景にはどんなブランドの思想があるのか。運営する株式会社EPOQ代表の板垣さんにインタビューを行った。

クラフトマンシップとテクノロジーによって魂を震わせる

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ーーまず、フットウェアブランド「OAO」について教えてください。

OAO(オーエーオー)はクリエイティブなマインドを持つ現代の人々のためのフットウェアブランドです。クリエイターたちが新しい表現を切り拓き続けるアート・建築・音楽などのカルチャーシーンからインスピレーションをうけたストーリーとデザイン・テクノロジー・クラフトマンシップの融合により、高い品質のフットウェアを制作しています。

そして「MOVE THE SOUL」をスローガンに掲げ、現代の人々の魂を震わせ、創造的な未来を実現することを使命としています。IT業界のクリエイター、アーティストとしても活動するシューズデザイナー、ファッション業界で活躍するスタイリストなどがOAOに参加しております。

ーーブランドコンセプトである「クラフトマンシップとテクノロジーの両立」について、詳しく教えてください。

OAOが掲げる「クラフトマンシップとテクノロジーの両立」は、OAOを構成するメンバーの経験と保有するスキルセットに基づいています。OAOには、靴作りの経験が豊富な人材が関わっております。縫製・加工のクオリティを担保する知見や、国内・国外の職人とのネットワークを保有しております。ユーザー様が求めるそれぞれのユースケースにあった機能性や快適性にこだわりを持ち、より高い品質を求めて製品の開発を進めて参ります。

一方で、インターネット業界・ゲーム業界で行われるようなデータドリブンに行うサービス開発の経験や、スマホAR・3Dソフトなどの先端技術活用のスキルを持つクリエイターとのコネクションも弊社の強みの1つとして位置付けております。そういった背景から、「クラフトマンシップとテクノロジーの両立」というコンセプトを掲げており、顧客体験の向上とファッション業界のアップデートに貢献したいと考えております。

現実の質感を表現するARショッピングと試着サービスの導入

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ーー今回リリースされた、ARショッピングについて教えてください

AR技術の活用はひとつのアイデアとして、ブランドの構想段階からございました。また以前より、地方を中心にオンラインでご購入いただくお客様から様々な製品に関するお問い合わせをいただいており、より良い購買体験をオンラインでご提供するための施策をAR技術に限らず、幅広く検討して参りました。

「AR Shopping」については具体的なスケジュールは決まっておりませんでしたが、コロナウィルスの影響の長期化を見越し、自宅でご試着いただける返品交換無料サービス「Fitting at home」と合わせてスケジュールを前倒し、先月スタートいたしました。

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ーーでは、このAR機能はどのように開発されたのでしょうか?また今回は、ディティールまで精巧に作られた3Dモデルが印象的ですが、こちらもどのように制作されたのでしょうか?

AR機能のECサイトの実装自体は、弊社が利用するECプラットフォームのShopifyが1年前にパッケージとして公開しており、そちらに沿って実装しました。時間の多くは3Dモデルの制作に要しまして、弊社のゲーム業界出身の担当者経由で、映画やコンシューマーゲーム等に登場するような非常に精緻なモデル制作ができるモデラーをアサインしてシューズのモデル制作を行いました。

3Dモデルの制作にあたっての技術選定として、スニーカーのモデリングにはZbrushを使用しています。Zbrushは実際に映画等の3DCGにも使用されているもので粘土のようにポリゴンを変形させてスカルプトするソフトです。

Zbrushでスニーカーの大まかな形状を作成し、Zbrush内のZmodelerというツールでポリゴンの流れを整えていきます。重要な色と質感を出していく際には、Substance Painterというツールを使用します。Substance Painterは現実と同じ光の環境を反映させながらペイントができるので実物のスニーカーの質感をクオリティ高く再現することに成功しました。

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ーーARを活用した試着サービスも先行事例はありますが、御社の提供するサービスの特徴、こだわりはどこにあるのでしょうか?

先行事例を研究する中で、現時点ではまだ実験的な取り組みが多く、実際の製品との質感の乖離があるなどモデリングの品質に課題があると感じました。今回は特別な技術は使っておりませんが、ビジュアル面でのリアリティを追求し、単純なパフォーマンスで終わらないようなクオリティを追求しました。

一方でAR技術自体は弊社だけの独占的な強みになるものではなく、画像・動画などと同じように業界に標準化されていくものだと考えています。お客様が求める形で、高い品質を実現し、楽しんでいただけるものをつくることに集中して取り組むべきものだと位置づけております。

ーー実際にリリースされて、反響はどうでしょうか?

品質を褒めてくださる方々が多く安心しました。メディア業界・ファッション業界の企業様や、そこで働く方々は情報感度も高く認知率が高まったと感じます。

一方でARという新しい技術の利用ハードルの高さや、iOSのみで利用可能というプラットフォームによる制約に起因する課題も発見できました。

新たな課題を乗り越え、テクノロジーを広範なレイヤーへ

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ーー今後は、このARショッピングをどのように展開されていく予定でしょうか?

さらなる品質の高さを追求しつつ、画像認識などにより、さらに簡単な試着体験を追求していきたいと考えています。

また実店舗やイベントでもAR技術は活用が可能であり、試着以外にもブランドの世界観を理解していただくコンテンツとしての体験も創出できます。そういった意味で、オフラインでの活用も積極的に進めていきたいです。

新しい技術の活用により進化を求めるようなファッション業界全体の要請を日々肌で感じております。時代のスタンダードとなるような体験を顧客目線で磨いて参ります。

ーーユーザーに広く普及していくには、どういったことが必要だとお考えでしょうか?

ひとつは「実装ハードルの高さ」です。あらゆるブランドやメーカーがARショッピングを実装しようとすると、3Dモデリングの技術に精通し、クオリティ高く生産できるクリエイターの存在が不可欠であることがハードルを高めています。あるいはクリエイターに頼らず、安価に3Dデータを制作できるソフトウェアも登場していますが、そうしたソフトウェアの進化と普及により、誰でも簡単にハイクオリティな3Dデータを生成できるようになると普及は早まるのではないかと思います。

もうひとつは、「UX」と「ユーザーの慣れ」です。Instagramやtik tokなどのSNSやカメラアプリには、フィルターという形でAR技術がすでに活用され、広く普及しています。ARフィルターは「SNS内で使える手軽さ」と「フィルターが盛れる・面白いなどの付加価値」により流行っています。ARショッピングにおいても、既存の購買体験がより楽しくなるようなコンテンツなども考えたUXの発明が必要だと感じます。グラスデバイスなどの進化とあわせてより最適な「使いやすさ」も発明されていくと考えています。

また、新しい技術が広く浸透するには、一定の利用頻度によるユーザーの「慣れ」も必要だと感じています。そういった意味で、顧客基盤の大きい大手ブランドやECプラットフォームなどのサイト・アプリがAR技術を導入する、などの形でユーザーの目に多く触れる機会の創出も必要だと感じます。

ーー今後も、こういった最先端テクノロジーを活用したサービスを開発に挑戦していくのでしょうか?ぜひ、お考えをお聞かせください。

ソフトウェアの各産業への浸透は不可逆の流れだと考えておりますので、積極的に活用していきたいと考えております。

現時点で公表できることはございませんが、企画・デザイン・サンプル制作・量産・マーケティング・販売など、ファッションビジネスを構成するそれぞれのレイヤーに技術を入れ込むことが可能であり、それにより質・時間・コストパフォーマンスなどの様々な観点で解決される課題が多いと思っています。

盲目的に先端技術のみを探求するのは危険ですが、お客様の声や行動を注視しながら、最適な体験を技術活用により、追求していきたいです。

OAOは様々な分野から生まれた思想を形にする、クラフトマンシップとテクノロジーが特徴のフットウェアブランド。それゆえ商品へのこだわりはもちろんだが、今回のAR機能や試着サービスといいた販売方法、ユーザー体験までにもブランドの思想が反映されている。

またバーチャル試着をブランドが独自に開発することで、受け取るユーザーが感じる質感や色合いなどのリアリティが追求されていることも印象的だ。今後もさらにUXを進歩させ、実店舗やSNSなどの広い分野に導入が進むことで、よりユーザーに普及する、親しみやすいARサービスが生まれる未来が見えてきた。

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現在はTHE CURVE 1のみの販売となっているが、今年の秋ごろに新作の発表も予定。現在好評を受け、適切な数の生産や丁寧な商品製造のために販売期間を月の最終土日のみに制限している。次回販売は7月25日0:00から7月26日23:59。

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