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消費者とコスメ市場の理想的なマッチングを目指す「NOIN」のデータマーケティング

コロナウイルスの影響もあり、一気にEC化が加速するファッション・コスメ業界全体。特にコスメの販売に関しては「ECでは色味の確認が難しい」「返品に手間がかかる」といった課題がありつつも、AR技術を使ったタッチアップツールやソーシャルコマースなどの導入が推し進められている。

このような状況下で、いち早く市場のEC化を推進してきたのが「NOIN」を運営するノイン株式会社だ。日本最大級のコスメEC「NOIN」を軸に、コスメ・スキンケア専門の動画チャンネル「NOIN.TV」の運営や自社ヘアケアブランド「Tioo」の立ち上げなど、化粧品×インターネットの分野で幅広く事業を展開している。また、このようなプラットフォームの運営に加え、同社が強みとしてきたのがデータマーケティングだ。化粧品メーカーと消費者のマッチングを深めるために、消費動向の調査や分析を続け、多くの化粧品メーカーのEC化を支援してきた。

コスメのEC販売の可能性、またその課題はどこにあるのだろうか?ノイン株式会社取締役COO千葉久義さんに話を伺った。

EC展開に挑戦するメーカーと消費者をマッチング

経済産業省が行った調査では、化粧品業界全体のEC化率はいまだ6%に止まっており、オフラインでの購入が主流になっている。コスメ販売は特に、店頭でのタッチアップや美容部員による接客が重視されるのがその理由だろう。

しかしながら、「インターネットやSNSの普及、さらに新型コロナウイルスの影響もあり、顧客ニーズはオンライン購入へと大きく移行しつつあります」と千葉さんは語る。実際に大手メーカーもデジタル・Eコマース事業の成長を掲げ、EC化への注力がより一層求められる状況にあるのだ。

そのなかでノインでは、各メーカーEC化支援はもちろん、さらにデータ活用を支援し、顧客開拓へと寄与している。「化粧品はどのような組み合わせで購入されているのか、どのようなプロセスで購買行動に至っているのかなどデータ化されてこなかった行動・パターンをプラットフォーマーとして見出すことで、メーカー様の強みと化粧品を求める人をマッチさせお互いのメリットを向上させられると考えています」。(千葉さん)

東京大学との共同研究でさらに高度な研究結果へ

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左からノイン株式会社 取締役COO 千葉久義、東京大学大学院情報学環 田中秀幸研究室 澁谷遊野 特任助教

こういったデータ活用促進の一環としてノインが取り組んでいるのが、東京大学との共同研究だ。モバイルコンテンツ産業の研究に精通する東京大学大学院情報学環学際情報学府の田中研究室とパートナーシップを結び、消費者の年代・居住地域といったセグメント(ごとの購買傾向、先に買われる商品は何かといった購買順、広告による需要の変化、そして関心からコンバージョンに至るまでの消費者行動フローなど消費者の行動を分析し、マーケティングや商品開発への活用を目指している。

特に化粧品のデータ分析は、「ブランドごとで販売場所(百貨店、バラエティストア、ドラッグストア、化粧品専門店等)が決まっているのが特徴で、実店舗のデータ量が少ないことに加え、各店舗の統合が非常に困難です。結果としてデータ分析を行うこと自体のハードルが非常に高くなっています。特に『人物属性(年代・居住地域)ごとの購買性向』や、『どの商品が同時に認知され、比較されているのか』といったメカニズムに関しては、実店舗では店舗にカメラを設置するなどのコストを投入しない限り、見える化は難しいです」と、その課題を教えてくれた。

一方でモバイルでは「データが自然に集約されるため、学問的な知見と現場のリアルな情報を社会の流れに照らし合わせ、分析することにより高度な研究結果が望める」と考え、東京大学とのパートナーシップに至ったという。

SNSのようなオープンデータをもとにした研究に比べ、モバイルコンテンツ産業の研究においては、購買データを保有する企業が研究チームと連携し、データ提供する必要がある。今回の共同研究においてノインは、データの提供を中心に、ユーザーの購買や行動に関するデータの収集および一次解析、データ結果の施策実行を担当する。2年間を超えて収集したNOIN上のデータは約30万件にもおよぶ。共同研究は、「データを解析していく上でプラットフォームを運営する我々以外の様々な視点を取り入れられている」のだという。

研究成果を活用したデータマーケティング支援

共同研究で得た知見は今後、NOINアプリでのCVRをさらに高めるためのUI/UXの改善に用いられるほか、メーカーのマーケティング活動支援において、研究結果を活用できるかたちにカスタマイズし、提供価値の幅を増やしていく。すでに、2020年3月にはメーカー向けのデータマーケティング支援プラン、2020年4月にはオンライン販売支援プランの提供開始を発表した。

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データの提供について一番の課題は「メーカー側のデータリテラシーだと感じています」と、千葉さんは語る。「データ活用をしようという動きは出始めていますが、やはりECがほとんど普及していないということもあり、そもそも購買データ自体が他の商材と比較して存在しないのが実情です。メーカー側がデータの取り扱いや活用についての知見がなかなかない状況なので、データを単に渡すだけではメーカーでマーケティングや商品開発等に活用することは難しいです。そのためにメーカー様への単なる調査やデータ提供に留まらず、自社商品が購入される原点の要因調査をはじめ、パッケージやメッセージのABテスト等の支援も実施しています。直近では海外メーカーの日本進出のためのサポートとして市場調査や広告出稿プランニング等をご一緒する機会が増えてきています」。

「誰もが自分に合った化粧品に、当たり前に会えること」

ユーザー調査についても、「SNSや既に露出している情報から情報を得るだけでは不十分」だという考えだ。実際にノインが行った調査では、ユーザーの73%がSNSの使用用途が「閲覧がメイン」だと回答しており、「発信も閲覧も同程度行う」のは23%にすぎないことから、見える化しているデータは消費者の一部の意見にすぎないことがわかる。

このように見える化できていない消費者行動データをいかに活用できる形に変えていくかに対して、ノインではユーザー単位のカスタマージャーニーを分析し、どのコンテンツが起因となって商品購入までの意思決定がなされるか等の分析も行っている。

この結果「例えば、若者であれば購入までのリードタイムが長く、口コミや類似商品群での横断比較で購入意思が大きく変わることが判明」するようなことも紐解いてきた。こうした背景から、千葉さんは「今や『インフルエンサーが勧めていたから』のような単純な理由だけで、購買まで持っていくのは難しいのが実情」だと話す。

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今後のコスメEC事業に関して、千葉さんは以下のように語ってくれた。「ニーズが多様化する昨今、化粧品のオンライン販売においても購入体験の個別化は欠かせません。ノインは今後も、豊富なデータとマーケティング力を武器にメーカー・ブランド様の課題解決を支援し、『誰もが自分に合った化粧品にあたり前に会える』世界の実現を目指します」。

ノイン株式会社の取り組みによって、コスメ業界のEC化をめぐる現状や可能性が見えてきた。各社のデータを集約し、学問的知見と合わせながら分析したデータが活用されていけば、ファッションも含めた他の業界にも応用可能な知見が積み重ねられていくことだろう。今後の研究結果も要注目だ。

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