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【潜入レポ】中国のファストファッションブランド「URBAN REVIVO」の実験店舗を紹介


中国版「ZARA」と呼び声が高い「URBAN REVIVO」。中国国内の重要商業圏を幅広くカバーしており、昨年には世界最大旗艦店をロンドンの「Westfieldモール」でオープン。ヨーロッパ最大級のデパートに進出した初めての中国ブランドです。

その中でも今回は、2018年8月にできた上海の世博源五区B层にある「URBAN REVIVO」の実験店舗にZOZOテクノロジーズで新規事業を推進する中村が実際に足を運び、体験したことをレポートします。

この店舗では、中国ファッションテック企業「FASHION FOX」が開発を担っています。「FASHION FOX」のwebサイトでは、8種類のバーチャルモデルがおり、自分の体型に近いモデルを選択すると試着したイメージを閲覧できる機能を提供しています

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Image Credit :FASHION FOX

バーチャル試着のために3Dアバターの作成

店内の試着室に、試着アバターが作れる筐体が置かれています。
アバターを作成するとバーチャル試着ができるようになるということで、実際に試してみました!

アバター作成のステップ
1.筐体の中のディスプレイで身長と体重を入力
2.体型の前後左右をレンズとセンサーで撮影・全身をスキャン
3.WeChatのミニプログラムで会員登録・アカウントを紐づける
4.10分ほど待つと、自分の試着アバターが生成される

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撮影の際にはタンクトップとショートパンツ、ハイヒールを着用します。
約10分後、WeChatのミニプログラム上で自分の体型データとスキャンデータをスマホから確認することができます。

身長や体重・腹囲や胸囲などもセンサーで計測されているらしく、自分の体型について表記されていましたが、自分が認識しているサイズと測定されたサイズの誤差が平均±5cmほどあり、あまり精度が正確なものだとは思えなかったです。

撮影・3Dモデル生成を待つ時間の体験も、もう少し工夫できたのではないかと思います。理由としては、①試着アバターの筐体が店内の試着室奥に設置されており、ほとんどのお客様が気づかない、②どのように表示・活用されるのかが、撮影前には直感的にわかりにくい、③撮影後、筐体にWeChatのアカウントを入力しただけなので、いつまで待てばいいのか表示がなく、結局、10分程狭い店内に滞在しなければならないといった点が挙げられます。このように、実際に体験してみないとわからないことが多々ありました。

バーチャルフィッティングを試してみる

撮影から10分ほど待つとアバターが作成され、ようやくフィッティングです。店舗では、Mサイズで統一された服が約100点ほど陳列されています。

バーチャルフィッティングのステップ
1.気になったアイテムを手に取る
2.ハンガーに内蔵されたセンサーが反応・ディスプレイに商品の詳細情報が表示される
3.表示された二次元バーコードをWeChatで読み取る
4.スマホにバーチャルフィッティングされた自分の姿が表示される

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商品のタグを探さなくても値段・製品に関する情報に気軽かつ簡単にアクセスできることは、大変便利だと感じました。

また、試着をしなくてもアイテムの着用イメージを手軽に確認できるため、
無意識に選択肢から外している「これは似合わなさそう...」というアイテムにも目が行きます。「このアイテム、似合わないと思っていたけど、実際に着用したらどうなるんだろう?」と普段は選ばないアイテムをバーチャル試着で数回試すこともできるため、購入するアイテムの選択肢が広がり、購買意欲がより掻き立てられました。

レジはRFIDを採用

近年中国では、スマートフォンのアプリを用いたモバイル決済の利用が急速に拡大しています。公益財団法人環日本海経済研究所(ERINA)がまとめた中国インターネット発展状況統計によると、モバイルインターネット利用者数は 8.17 億人で、人口約13.9億人(外務省による調べ)の半数以上まで増加しています。具体的には、シェアサイクルや、病院の予約・支払い・お年玉の受け渡しまで電子決済になっています。 

この店舗のレジは、電子決済とRFIDタグ(Radio Frequency Identification:電波を用いてタグのID情報を非接触で読み取るシステム)を活用したレジになっていました。複数商品を一括で読み取ることができ、この白いボックスに商品をいれるだけで商品点数と合計金額が瞬時に表示されます。

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RFIDレジでの決済のステップ
1.商品を白いボックスに入れる
2.WeChatかAlipayどちらかの決済方法を選ぶ
3.表示された二次元バーコードを決済アプリでスキャンする

決済手段がAlipay・WeChat payのみのため、支払い方法のインターフェイスがボタン2つとシンプルなのが印象的でした。

サイネージ扉にも自分の姿が!

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店舗入り口に設置されたサイネージの扉にも、面白い工夫が。普段は「URBAN REVIVO」のコンセプト動画が流れていますが、「FASHION FOX」のアカウントでログイン・接続すると、仮想試着した自分がたくさん表示されるオリジナルムービーが再生されます。ムービーが終了すると、扉が開くといった仕組みです。

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これまでもバーチャルフィッティングができるサービスや実験店舗は見たことがありました。しかしバーチャルフィッティングモデルを活用、エンターテイメントの要素に振り切った仕掛けは初めて見たため、大変驚きました。

技術的に新しいチャレンジをしていても、お客様にとって「面白い!」「やってみたい!」と思えるかどうかは異なるため、きちんとやってみたくなる仕組みまで設計できているという点で大変面白いと感じました。

実験店舗の検証方法やスピード感

今回、実験店舗に足を運んでみて、筐体を置く場所、アバター生成するできること、生成の待ち時間など課題も感じ、もっとわかりやすくコミュニケーション設計ができると、より深くこの店舗の世界観を楽しめそうです。

中国は「URBAN REVIVO」の他にも、1坪弱の無人カラオケや簡易美容サロン・VRゲームなど、商業施設や駅のマイクロスペースの活用が多く見られます。狭いスペースのため、商業施設や駅などでの導入コストが低いうえ、最も少ないリスクでサービスの価値を検証できる方法だと感じました。こういった実験店舗の導入がサービスを横に展開しやすいといったメリットや、スピード感を生み出すのだと思います。

一方で、サービス品質の標準ラインが日本とは大きく異なり、日本では感じられない”大雑把さ”のようなものを感じることも度々ありました。

サービス開発でも独自のカルチャー発展をしている中国に、今後も注目していきたいです。


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ZOZO研究所では、ファッションに関する研究を行っております。
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